ホンダがスペシャリティカー「プレリュード」を24年ぶりに復活させ、9月5日に発売した。ホンダがプレリュードを復活させて国内市場に投入する狙いは、どこにあるのか。

  • ホンダ「プレリュード」

    「プレリュード」はかつて、ホンダファンの心を捉えたスポーツクーペが名乗った車名だ。新型プレリュードは伝統の2ドアクーペスタイルを継承しながら、先端技術を詰め込んだハイブリッド車(HV)として蘇った

軽自動車に依存? ホンダの国内販売

四輪事業の立て直しを進めるホンダは、トランプ関税で揺れる北米市場への対応が迫られている一方で、日本国内での生産・販売強化による“日本空洞化”対策も課題となっている。つまり、米国事業の現地化が進むほど、日本国内での生産を維持するためには、国内販売のベースを固める必要があるからだ。

近年、ホンダの日本国内販売は、「N-BOX」に代表される軽自動車販売のウェートが高くなっている。2024年度の日本販売のうち、軽自動車の比率は43%だった。

  • ホンダ「N-BOX」

    ホンダの日本販売は軽自動車「Nシリーズ」の比率が高い(写真は軽スーパーハイトワゴンの「N-BOX」)

N-BOXが登録車を含めた日本自動車市場のベストセラーカーであり続ける一方で、ホンダの登録車販売はパッとしない状況が続いている。「ホンダは、日本の販売だけを見ると軽自動車メーカーだ」とホンダの国内軽自動車依存を揶揄する声も多い。

三部敏宏氏は社長に就任して今年で5年目。二輪事業の高収益が四輪事業の低収益性をカバーする体質の転換は、三部体制の経営課題だ。トランプ関税で世界戦略の再考が迫られる中、一方の主力になっていた中国販売の低迷もあり、日本での販売の立て直しが急務となっている。

かつては国内100万台を目指したホンダ

ホンダは2000年代初頭に「日本販売100万台体制」を目標に掲げたことがある。1980年代半ばからは3販売チャネル(プリモ、クリオ、ベルノ)を展開していた。

プリモは軽自動車主体、クリオは高級車主体、ベルノはスポーティーカー主体の販売チャネルとして、取り扱い車種をわけることで従来のホンダ業販店網を個性化させ、ディーラー網の形成を図った。

メーカー主導の国内販売強化策を打ち出したホンダだったが、1990年のバブル崩壊で日本での販売は低迷。これを救ったのが1994年に登場したミニバン「オデッセイ」で、2001年にはホンダの国内販売は90万2,658台まで伸びてトヨタ自動車に次ぐ第2位となり、「国内100万台体制」という目標が浮上したのだ。

ホンダ国内3チャネルのうち先行したのは「ベルノ店」で、まさに初代プレリュードの発売に合わせて1978年11月に誕生している。当時、この「ベルノ」ディーラーは、販売店の責任において販売活動を行う「販売責任地域」(プライマリー・マーケット・エリア=PMA)の考え方を初めて導入し、それまでの商慣習であった販売店周辺をテリトリーとする訪問販売をやめ、店頭販売をメインに据えた。

  • ホンダ初代「プレリュード」

    初代「プレリュード」

その後は、国内市場の成熟化により、ホンダも2006年に3チャネルを一本化(ホンダカーズ)した。販売台数は軽自動車が伸びる一方で登録車が低迷し、2022年度には約56万台にまで落ち込んだ。

ホンダは世界戦略の主力として、米国に続き中国での現地生産・販売強化を進めてきたが、鈴鹿工場と寄居工場(狭山工場閉鎖による移行)による母国日本での生産・販売については、従来の「国内生産100万台体制維持」が厳しい状況となっている。

プレリュードはホンダブランドのけん引役

今回の新型プレリュードは、ホンダ独自のハイブリッドシステム「e:HEV」を搭載する2ドアスペシャリティクーペだ。プレリュードとしては通算6世代目(5代目は2001年に生産終了)のモデルとなる。ホンダで四輪事業本部長を務める井上勝史執行役専務は、「新型プレリュードの投入はホンダブランドをけん引していく狙いがある」と言明した。

  • ホンダ2代目「プレリュード」

    2代目「プレリュード」

  • ホンダ3代目「プレリュード」

    3代目「プレリュード」

  • ホンダ4代目「プレリュード」

    4代目「プレリュード」

  • ホンダ5代目「プレリュード」

    5代目「プレリュード」

  • ホンダ「プレリュード」

    新型「プレリュード」(6代目)は国内のホンダブランドのけん引役になれるか

英語の「プレリュード」(PRELUDE)は「前奏曲」を意味する言葉だ。初代から5代目までのプレリュードは、ホンダの「とんがったイメージ」を象徴するスペシャルティカーだった。

新型は2年前の2023年秋に「ジャパンモビリティーショー」(JMS)でコンセプトカーがお披露目されてから、発売時期が注目されていた。ハイブリッドモデルで617万9,800円、販売計画は月間300台だという。復活する「往年のデートカー」が国内販売強化のムードメーカーとなるか、関心が高まる。

ホンダとしては、日本の国内販売でホンダブランドを再生させて、軽自動車依存から脱却して登録車とのバランスを取りつつ、年間70万台販売を安定化させたいという狙いがある。新型プレリュードはその名の通り、国内販売強化の“前奏曲”として期待が高まっているのだ。