米国の「トランプ関税」が日本の自動車産業の業績を圧迫している。乗用車メーカー(OEM)の2025年度業績に与える影響は2.7兆円との試算も出るほどだ。2026年3月期(2025年度)第1四半期(4~6月)の連結決算では、日産自動車とマツダが赤字となった。
日本車OEMの営業利益を35%も押し下げる?
日産は前期2024年度で大幅赤字に転落し、再建計画を始動したばかり。2025年度第1四半期の赤字も、米・中での販売不振もあって想定の範囲内だった。
注目すべきはマツダだ。赤字転落はコロナ禍の2020年以来5年ぶりで、米国の関税引き上げが早くも大打撃となった。
日米両政府は2025年7月、トランプ政権が2025年4月に27.5%に引き上げた自動車関税を15%に修正することで合意した。それでも、日本車各社にとって米国は“ドル箱市場”であり、従来の2.5%から15%に税率が上がった高関税は、依然として業績圧迫の主な要因となっている。
乗用車OEM7社が開示した2025年度通期見通しの合計のうち、米国の関税による影響額は合わせて2兆7,000億円に達する。営業利益の合計(業績予想を未定とする日産を除く)を単純比較すると、前期比で36%の押し下げ要因となる。
中でも米国での販売比率が高いマツダとスバルの業績は、トランプ政権の動向を色濃く反映する。
マツダとスバルは共に、米国市場で独自のブランド力があり、それだけに米国への依存度が高い。
マツダは広島県を中心とする中国地方、スバルは群馬県に生産拠点を構え、両社とも地域経済を支える重要な中堅自動車メーカーであるだけに、今後の浮沈についての関心度は高い。そのうち、2025年度第1四半期で赤字に転落したマツダの動向を分析してみた。
マツダはトランプ関税を切り抜けられる?
マツダの2025年度4~6月期連結決算は最終損益が421億円の赤字(前年同期は498億円の黒字)となった。米国の関税影響は、営業損益ベースで697億円の押し下げ要因になっている。
マツダの米国販売は世界販売130万台の3分の1を占めるが、輸入(アメリカ国外からの輸出)に依存する割合が日本車メーカーの中で特に大きい。日本からの輸出は米国販売の5割に達する。
今期2025年度の通期業績予想については、期初段階では「未定」としていたが、今回の決算発表で「純利益82%減の200億円」との見通しを示した。通期では2,333億円の関税影響を見込むものの、毛籠勝弘社長は「聖域なき構造改革へ経営と現場が一体となって、難局を必ず乗り越える。ひるまず恐れず、やるべきことをやり抜く」とコメント。高関税の常態化も懸念される中で、対応への覚悟を強調した。
地元である広島・山口地域への目配りとしては、「サプライチェーンを守ることを優先し、世界販売台数を維持して国内70万台生産を守り切る」と発言。地域の経済・雇用を守るべく、日本をはじめ、米国の関税がかからない地域での販売強化や採算性の高い車種の生産拡大などに取り組む。コスト削減とともに、こうした施策によって最大2,333億円と見積もる減益影響のうち881億円を打ち返す計画だ。
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米国以外での販売拡大もマツダの課題。写真は同社が2025年4月の「第21回上海国際モーターショー」で公開した「EZ-60」。電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の2機種を設定する
マツダと共に世界販売に占める米国販売比率が高いスバル(7割が米国販売)は、2025年度4~6月第1四半期連結決算の純利益が前年同期比35%減の548億円に。2025年度通期業績予想は純利益で前期比53%減の1,600億円を見込む。
スバルも大幅減益だが、赤字転落は避けられそうだ。比較すると、やはりマツダの状況が厳しい。日本から米国への輸出が5割に達することに加え、メキシコ工場からの輸出があることも影響している。両社とも米国に工場を持っているが、スバルが自社工場である一方、マツダはトヨタとの合弁工場であることも米国事業における両社の違いだ。
マツダは1970年代から数度に渡る経営危機を経験してきたが、本拠地である広島を中心とする「バイ・マツダ」や独自の開発・生産効率化などで生き延びてきた。米国の自動車メーカー・フォードとの長きにわたる資本提携関係を解消してからは、「ブランド価値経営」で「走る歓び」を前面に打ち出し、ブランド哲学の普及・浸透を図ってきた。
米国マツダのトップとしてマツダ車のブランド価値を高め、2023年6月にマツダ社長に就任した毛籠社長だけに、彼の地での難局打開にも期待したいところだ。

