日産自動車の上級ミニバンである「エルグランド」が2026年7月にフルモデルチェンジして4世代目となった。競合車はズバリ、トヨタ自動車の「アルファード」だ。

そもそも、上級ミニバンの世界を開拓したのはエルグランドだった。その市場は今や、アルファードに席巻されている。捲土重来を狙い、日産は新型エルグランドを開発した。

今回はエルグランドの最上級車種である「G e-4ORCE」に試乗し、アルファードとの違いも含め、仕上がりを確かめてきた。

  • 日産の新型エルグランド

    日産の新型「エルグランド」に試乗! ボディカラーは「FUJI DAWN/至極 -シゴク-」のプレミアム2トーン

新型「エルグランド」の写真を一気に見る

価格は競争力あり?

新型エルグランドのパワートレインは、すべて「e-POWER」である。

e-POWERとは日産独自のハイブリッドシステムの名称で、ガソリンエンジンは発電専用とし、駆動はモーターのみで行う。なおかつ、新型エルグランドは全車が4輪駆動(4WD)だ。前後輪ともモーター駆動により4輪を緻密に制御するシステムで、日産は「e-4ORCE」と呼んでいる。

競合のアルファードにはハイブリッド車もあるが、ほかに、ガソリンエンジン車とプラグインハイブリッド車(PHEV)の選択肢を持つ。最も安価なガソリンエンジンの2輪駆動(FF)は559.9万円から購入できる。ただし、4WDは579.7万円だ。ちなみに、PHEVは764.94万円(4WD)となる。

  • トヨタ「アルファード」のPHEV

    トヨタ「アルファード」のPHEV

新型エルグランドと同様にハイブリッドで4WDのアルファードは、7人乗りのキャプテンシート仕様で661.98万円になる。新型エルグランドのグレード構成は「X e-4ORCE」と「G e-4ORCE」の2種類で、価格はXが689.7万円、Gが757.9万円から。アルファードに対して、十分に競争力を持つ価格設定だ。

そのうえで、新型エルグランドが売りとするのは、外観の造形/乗員の快適性/運転する楽しさの3点である。どのような違いでアルファードと勝負しようとしているのか、試乗して手ごたえを探った。

運転して楽しいミニバン?

外観はアルファードと印象が全く違う。アルファードがラジエターグリルをあえて大きく見せ、威圧的な印象であるのに対し、新型エルグランドは電動化の時代を象徴するかのようにグリルレス的でありながら、ギラギラしたメッキを用いず、独創性と存在感を放つ顔つきだ。遠目でも、ほかとは違うミニバンがやってくると見分けのつくデザインだ。

  • 日産の新型エルグランド

    新型「エルグランド」のフロントはグリルレスな雰囲気

車体寸法はアルファードより若干大きい。全長は4,995mmとまったく同じだが、車幅はアルファードより45mm広い1,895mm、全高は20mm高い1,945mmだ。最小回転半径はアルファードより小さい5.8mとし、車体がより大きいのに小回りがきくことにこだわった。

  • 日産の新型エルグランド

    新型「エルグランド」はアルファードよりも若干大きい

この車体寸法が、室内空間のゆとりにつながっている。外観からは窓が小さく見えるが、車内からは外の景色をよく見通せる。現実の寸法差はわずかでも、三次元(立体的な)空間では、効果的に広さを伝えてくる。

内装の基本は、日産のほかのe-POWER車種や電気自動車(EV)に通じる、先進的かつ簡素な造形を基本としながら、上質さを感じさせる設えだ。直線的で伸びやかな造形が室内を広く見せる。

  • 日産の新型エルグランド

    新型「エルグランド」のインテリア。内装色は「紫檀」

前方視界については、家族のミニバンとして定評のある「セレナ」より着座した際の目線が高く、見通しがよい。それでいて、背が高いことによる走行中の不安定さがないのが新型エルグランドの魅力だ。

背が高くても走りには低重心な感触があり、目線は高くても、運転感覚は一般的な乗用車を操作しているように落ち着いている。山間の屈曲路でも乗ってみたが、不安なくハンドルを切り込めた。そして、狙い通りに旋回していく。カーブで車体が傾き過ぎず、安心感があり、さらにハンドルを切り足しても、それに車体がついてくる嬉しさがある。

  • 日産の新型エルグランド

    日産の狙い通り、運転を楽しめる上級ミニバンに仕上がっている

低重心で安定した走りと的確な操縦性は、運転者だけでなく、ほかの乗員にも快適さをもたらす。また停止の際には、ブレーキによって前のめりになる姿勢を和らげる機能が備わっているので、停車したときに首が前後にゆすられるのを軽減する。

こうした効用は3列目の座席に座っていても感じられる。運転していて気持ちがよいのに、乗員の居心地もよいところは、新型エルグランドで際立つ点だろう。

  • 日産の新型エルグランド

    運転席と3列目でも普通に会話ができた

それらは、モーターのみの駆動と、そのモーターを活用した4輪駆動、そして電子制御ダンパーを使ったサスペンションの成果であり、技術の日産らしい商品性が現れている。

では、快適性はどうか。

ガソリンエンジンは発電が必要な時だけ稼働するが、回り始めたことを気づかせない対策が施されていて、可能な限り車内の静粛性を保つ。新型エルグランドは新開発のターボエンジンを搭載しており、急加速でも回転を上げ過ぎないようにするだけでなく、発電の最適時期を選んで稼働させる制御を行う。さらに新型エルグランドでは、騒音を相殺する機能(ノイズキャンセラー)を用いるなど、静粛性に気を使っている。これにより、前席と3列目でも普通に会話ができる。

最後に、日産独自の運転支援機能である「プロパイロット2.0」(GとVIPのメーカーオプション)は、ハンドルから手を離して走行できる機能を持つ。実に信頼感が高く、一度使ったら病みつきになるほど楽な移動をもたらす。この機能は、アルファードとの差別化にも大きな役割を果たしている。