クルマの世界がSUVに席巻されて久しいが、私はやっぱりステーションワゴンが好きだ。だんだん選択肢が少なくなりつつある中で、アウディ「A6」のアバントはステーションワゴンファンの心を満たしてくれる。最新型に試乗してきた。
アウディ「A6アバント」の写真を一気に見る
EVとは別物!
アウディの新型ステーションワゴン「A6アバントTFSIクワトロ200kW」に試乗した。
アウディの「A6」といえばEV(電気自動車)の「A6 e-tron」があるけれども、あちらはポルシェと共同開発したEV専用プラットフォーム「PPE」(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)を使用する全くの別物。今回のA6はガソリン/ディーゼルなどの「ICE」(内燃機関=エンジン)搭載車だ。プラットフォームはエンジン車専用基盤の「MLB evo」を採用。いわば、オーソドックスなモデルということができる。
アルファベット(AやQなど)に続く数字は、アウディのモデルラインアップを示している。2023年に「偶数=EV」、「奇数=エンジン車」というルールが決まったことで、「A4」が「A5」へ、「A6」が「A7」へと移行したりしたものの、わずか1年半後の2025年にアウディは同ルールを撤回。新ルールでは、数字はパワートレインとは関係なく純粋な車格を表すようになった。パワートレインは末尾の「TFSI」「TDI」「e-tron」などのコードで識別するシンプルな形だ。
A6はアバントの方が売れている?
そんな前置きに従うと、今回試乗した「A6アバントTFSIクワトロ200kW」は、「6」の「プレミアムアッパーミディアムセグメント」に属する「アバント」(=ステーションワゴン)で、「TFSIクワトロ200kW」は200kW(272PS)を発生する2.0リッター直列4気筒ガソリンターボエンジンを搭載した「クワトロ」(=4WDモデル)であることを意味する。
ちなみに、A6の起源となるのは1968年の「アウディ100」で、その4代目の途中で車名がA6に変更となった。今回の新型はA6としては6代目、100から数えると9代目に当たる。8世代目までの世界累計販売台数は1,000万台を超え、アウディの中心を担うモデルということができる。
タイプ別の販売構成を見るとセダンはヨーロッパで約40%、アジア・アフリカ・中南米で約40%、北米で約20%が売れている。1982年の3代目から登場したアバントはその80%がヨーロッパ内で、しかもその50%以上がドイツ単体で販売されているそうだ。日本ではセダン45%、アバント55%でアバントがやや優勢、といったところだ。
低く長い、優美なプロポーションが魅力
A6アバントのボディは全長5,000mm、全幅1,875mm、全高1,485mm、ホイールベース2,925mm。ロングノーズ、ロングホイールベースの伸びやかでエレガントなプロポーションが魅力だ。
フロントには低くワイドに構えた大型のシングルフレームグリルと薄型ヘッドライト、両端のエアカーテン、サイドは美しい10スポークの20インチアルミ、リアは鋭く傾斜したシューティングブレイクのようなデザインに上下を分割したリアライトを配し、真っ平らなアンダーフロアカバーを組み合わせたCd値0.25のエアロボディとなっている。
インテリアは11.9インチのバーチャルコックピットと14.5インチのMMIタッチディスプレイ、10.9インチの助手席用MMIパッセンジャーディスプレイをソフトラップデザインで包んだ上質な仕立て。試乗車はアンビエントライティングプロやBang&Olufsen 3Dプレミアムサウンドシステム(フロントヘッドレストスピーカー付き)、透明度や遮光のパターンが変えられるスマートパノラマガラスサンルーフなど、ほぼフル装備の状態だった。もう、いうことなしだ。
ステーションワゴン好きに刺さる
搭載するパワートレインは最高出力200kW(272PS)/5,000~6,500rpm、最大トルク400Nm/1,600~4,500rpmを発生する2.0L直4インタークーラー付ターボエンジン。7速Sトランスミッションのアウトプットシャフトに18kW(24PS)/230Nmを発生するパワートレインジェネレーター(駆動モーター)を組み込んだMHEV(マイルドハイブリッド)プラスシステムだ。クワトロシステムで4輪を駆動する。
ちなみにTDIモデルは150kW(204PS)/400Nmを発生する2.0L直4ディーセルターボ&MHEVプラスを搭載。先代にはあった6気筒エンジンはラインアップから落ちている。
早速ワインディング路に乗り入れてみると、2トン超えの大型ボディに4気筒エンジンという不安はすぐに消え、低くワイドなボディが気持ちよくコーナーをクリアしていく。
新型ではトーションバーやステアリングギア、コントロールアームブッシュなどの構成部品を先代より硬めに設定してあるとのことだったが、試乗車はオプションのアダプティブエアサス装着車だったせいもあって、速く走ってものんびりクルーズしても、その乗り心地に不満は一切なし。
エアサス付きだとドライブセレクトに「アシスタント」モードが追加されていて、ドライバーの運転スタイルを学習して自動でモードを切り替えてくれるというのも面白いところ。「ダイナミック」一辺倒でなくても、いろんな走りが綺麗に“決まる”のだ。
さらに、オプションのオールホイールステアリングを装着すれば、60km/h以下で後輪が5度の逆位相、60km/h以上で2度まで同位相になり、回転半径の6mが5.4mまで短縮される。
運転支援システムも大幅に進化していて、高速道路での車線変更をアシストする「アダプティブクルーズシストプラス」や、最大50mまで自動で戻れる「リバースアシスト」、駐車操作を最大200mまで記憶して以降は自動駐車できる「メモリー機能」、縁石などが接近したときに警告を出してホイールの損傷を防ぐ「カーブストーンアシスト」などを総合した「パークアシストプロ」など、短時間の試乗では体験できないほどの新機能がてんこ盛りだ。
オプションをフル装備、総額は?
思えば筆者は、メルセデスの「S124」をはじめ、BMWの「525i」(E34)、「318i」(E46)、「320i」(F31)の各ツーリングなどステーションワゴンをたくさん乗り継いできており(アウディのステーションワゴンはまだ所有したことがない……)、低く長くスマートで、走りも良くて荷物もたくさん積めるというボディ形状が大好きなのだ。昨今、こうした役割は多くのSUVに取って代わられているが、やっぱりいいものはいい。
今回のA6アバントTFSIクワトロ200kWは927万円。アスカリブルーM塗装15万円、エクステリアやシートなどのSラインパッケージブラック51万円、デジタルLEDライトをはじめとするテクノロジーパッケージプロ67万円、B&OサウンドシステムをはじめとするMMIエクスペリエンスプロパッケージ50万円、10スポーク20インチツイストデザインアルミホイール21万円、スマートパノラマガラスサンルーフ44万円、アダプティブエアサス/アウディドライブセレクトアシスタンス35万円の装備オプション合計が357万円で、総額は1,284万円也となっていた。
手に入れる価値に見合うクルマなのはマチガイないけれど、個人的には数年後に中古車が出てくるのを待つしかなさそうだ。




















































