以前は「割安だが値動きがなく、つまらない株」と言われていた地銀株だが、近年は株価が上昇する銘柄が増えている。
一方で、地方銀行は人口減少による預金流出で預金集めに苦戦するなど、経営環境は決して楽観できない。それでも再編期待や株主還元への期待を背景に、投資家の注目は高まりつつある。
地銀株が買われる理由と、長期投資先としての魅力を解説する。
金利の復活は銀行経営に追い風
6月に日銀は利上げを行い、日本でも金利のある世界が本格的に戻っている。デフレの低成長下で、約30年間も金利のない世界に親しんだ日本人には、発想の転換が求められる時代になったと言えるだろう。
金利のある世界になると、銀行経営にはプラスに働く。教科書的には、銀行は預金者から預かったお金を企業などに貸し出して利ざやを得るビジネスモデルだ。基本的には預金の利息よりも貸し出し金利のほうが高いため、金利が上がれば利ざやも拡大する。そうした背景から、銀行にとっては追い風となる。このため金利のある世界では、貸し出しの原資となる預金量がものを言う。デフレ下でほとんど見られなかった銀行による預金集めが、金利とともに復活している。
少子高齢化の影響で地方銀行の経営が苦しくなりつつある
日本は少子高齢化が加速している。人口のボリュームゾーンである、いわゆる団塊の世代(1947~1949年生まれ)が既に後期高齢者入りを果たしており、出生者<死亡者、という状態が続き、今後も人口減少が予想される。
その環境下、地方銀行(地銀)の経営が苦しくなりつつあるようだ。金利のある世界が戻り、銀行は以前のように預金集めを開始している。しかし地方では高齢者が死亡した後、相続人が都市部に住んでいるケースが多く、地方から預金が流出しているという。
進学や就職で地方から都市部に出た後、現地で結婚して住宅を購入していれば、子供世代の拠点は都市部とならざるを得ない。親が亡くなった後、相続した現金は旧地元の地銀に預ける必要はなく、日頃利用しているメガバンクなどに移すのは当然だろう。
デフレ期であれば、銀行は預金を積極的に集める動機はなかった。しかし金利が復活した現在、喉から手が出るほど欲しい預金が、地銀では逆に流出している。銀行が単独で解決できる問題ではないのが悩ましい所だろう。
再編期待から地銀株が上昇中
金利のある世界が戻る一方、少子高齢化による預金流出で地方銀行の経営は変化を余儀なくされている。その中では規模拡大が選択肢となる。これまで再編が進まなかった地方銀行も、経営環境の変化に背中を押される形で更に再編が進む可能性がある。
以下は近年再編が行われた地方銀行だ(予定も含む)。
2021年には第四銀行と北越銀行が合併して第四北越銀行が発足したほか、三重銀行と第三銀行が統合し三十三銀行が誕生した。また、福井銀行は福邦銀行を子会社化し、2026年5月の合併を予定している。
2022年には、青森銀行とみちのく銀行が共同持株会社「プロクレアホールディングス」を設立し、愛知銀行と中京銀行も「あいちフィナンシャルグループ」を設立した。さらに、ふくおかフィナンシャルグループは福岡中央銀行を完全子会社化している。
2023年には八十二銀行が長野銀行を完全子会社化し、2026年1月には両行が合併して「八十二長野銀行」が発足した。また、青森銀行とみちのく銀行も2025年1月に合併し、「青森みちのく銀行」が誕生している。
今後も再編の動きは続く見通しだ。2027年1月には荘内銀行と北都銀行が合併し、フィデアホールディングス傘下の「フィデア銀行」が発足する予定となっている。また、第四北越フィナンシャルグループと群馬銀行は2027年4月の経営統合を予定しており、2025年4月に基本合意、2026年3月に最終合意に至った。さらに、2026年7月24日には、いよぎんホールディングスと愛媛銀行が2027年4月を目標に経営統合することを正式発表しており、持株会社の下に両行を置く形での統合が計画されている。
地銀再編は株式市場で注目を集めるテーマの1つであり、上記地銀の株価はほとんどが上昇傾向にある。長く株価対策などが後手に回っていた地銀株だが、株価対策やファンド株主の出現もあり、今後も地銀株への注目は続くと予想される。
地方銀行の再編が進むと予想されるが持っておきたい視点
日本地図を見ながら地銀再編を考えると、歴史シミュレーションゲームのような面白さもある。ただし、地銀の再編は歴史的経緯や地理的条件を踏まえなければ机上の空論だ。
A銀行とB銀行は隣県の銀行だがライバル意識が強すぎる、地理的には近いが交通の便が悪くお互いの本店のある都市に行くのが簡単ではないなど、地銀再編には見えない制約がある。前者・後者ともその地域の住民なら肌感覚で分かるが、地図を見るだけでは分からない。
逆に地理的に「なぜこの地銀が経営統合?」というケースも複数発生しているが、歴史的経緯や地理的要因を知ると、ある程度の納得感がある再編もある。地銀の再編は個別の事情はありながらも、時間をかけて進んでいくと考えられる。
割安株及び再編期待株投資として地銀株への注目は続きそう
地銀株といえば、以前は低いPBRで値動きがなく面白くない株として知られていた。しかし東証の改革により低PBR改善及び株主重視の経営を余儀なくされる中で、地銀特化型の投資ファンドが現れるなど注目を集めるようになっている。
少子高齢化で預金が減り経営体力を奪われる中、今後も地銀の再編は進むと考えられる。再編が見込まれ割安感のある地銀株への長期投資は、配当を期待できる銘柄も多く、腰を据えた投資で報われる可能性があるのではないだろうか。



