マツダと日本通運がバイオディーゼル燃料を使った完成車輸送トレーラーの実証走行を開始した。両社が組んで新たな燃料を実地で試す理由とは?

  • マツダと日本通運によるバイオディーゼル燃料の実証走行

    マツダと日本通運がバイオディーゼル燃料の実証走行を開始

どんな取り組み?

マツダとNIPPON EXPRESSホールディングス傘下の日本通運は2026年6月2日、廃食油や植物油を原料とする再生可能ディーゼル燃料「HVO」(Hydrotreated Vegetable Oil)を用いた完成車輸送トレーラーの実証走行を2026年5月に開始したと発表した。

この取り組みは、2050年までにサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル(CN)実現を目指すマツダと、CN社会の実現を経営課題に掲げる日本通運が連携し、物流分野の脱炭素化と新燃料の社会実装を進めることを目的としている。同日に開催されたオンライン説明会では、両社の担当者が実証の背景や今後の展望を説明した。

実証走行は、山口県防府市のマツダ防府西浦工場と中関完成車プール場を結ぶ往復約12kmのルートで行われている。期間は2026年度末までを予定し、シャトル運行する複数車両のうち2台のトレーラーを実証に使用。1日あたり約20往復し、データを蓄積する。期間中には約40トンのCO2排出削減が見込まれている。

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    「BIOFUEL」のデカール

使用する燃料は、NX商事が調達したHVOを従来の軽油に約51%混合したもの。製造はユーグレナが担い、『サステオ』という商品名で市販されている。HVOは100%でも使用可能な性能を持つが、現行の法規により混合が必要なため、この比率となっている。車両はいすゞ自動車製のトレーラーで、改造は行わず、従来仕様のまま運用・点検できる体制とした。

需要がなければ普及は困難

マツダ 経営戦略本部 カーボンニュートラル・資源循環戦略部の深川健氏は、「すべての物流車両をEV(電気自動車)や燃料電池車に置き換えるのは事業者にとって負担が大きい。既存の運用を変えず、燃料を切り替えるだけで対応できるバイオ燃料は現実的な選択肢だ」と意義を語る。

日本通運 執行役員 モビリティセールス部担当の佐々木治氏も、「既存車両をそのまま使える点が最大のメリット。特別な設備を必要とせず、即効性のある温室効果ガス削減につながる」と評価し、検証を進める方針を示した。

マツダは電動化だけに依存せず、内燃機関の活用も含めたマルチソリューション戦略を掲げている。長期ビジョン「Vision for 2035」では、CN燃料の活用によるカーボンニュートラルに加え、将来的には車載型CO2回収装置の活用によるカーボンネガティブの実現も視野に入れる。

深川氏は、「微細藻類由来燃料の開発が進んでも、社会に需要がなければ意味がない。今できる取り組みから始め、市場を育てていく必要がある」と説明。今回の実証では、燃費やドライバーの感覚、燃料取り扱いなどの課題を可視化し、社会実装に向けた基盤づくりを狙う。

現在主流の原料である廃食油には供給量の制約があり、将来的な不足を見据えて微細藻類などの代替原料の研究も進められている。ただし、これらはまだ実用化前の段階にあるため、まずは既存の燃料を活用し、実データを積み上げる方針だ。コスト面については、需要拡大による市場の成長で改善を図るとしている。

今回の実証では、燃料価格差をマツダが負担し、給油設備の整備や運用面は日本通運が担う形で役割を分担している。CO2削減効果は、HVOの混合比率が約51%であることから、従来の軽油と比べて約50%程度と見込まれる。

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    バイオディーゼル燃料の給油設備

将来の展開は?

両社は2026年度末までの検証後、運行ルートや車両台数の拡大を検討している。さらに完成車輸送にとどまらず、サプライヤーと工場を結ぶ部品物流への展開も視野に入れる。

今後は防府地区での取り組みを起点に、他の物流事業者や燃料供給企業、地域企業との連携を広げていく方針だ。バイオ燃料が普及すれば、トラックだけでなく観光バスなどへの展開も期待される。

深川氏は「内燃機関の技術をいかした現実的な脱炭素手段として、物流・自動車業界への定着を目指す」と述べ、実証で得た知見を共有しながら地域発の循環型社会の形成に貢献する考えを示した。

筆者はHVOを約51%混合したサステオを使用した「CX-60」に試乗した経験があるが、通常のディーゼル車と違いは感じられなかった。燃料の多くは石油由来だが、植物由来であればカーボンニュートラルに寄与する。一方で、植物の栽培には土地や水が必要であり課題も残る。エネルギー問題はひとつの手法で解決できるものではなく、それぞれの特性を踏まえて組み合わせていくことが重要だと感じる。