2026年夏の発売が待ち遠しいのが、日産自動車の新型「エルグランド」だ。久々のフルモデルチェンジとなる高級ミニバンで、日産が目指したものとは。ライバルとして意識したのは、やっぱりあのクルマ? 実際、勝てるのか! 開発陣に話を聞いた。
日産・新型エルグランドの写真を一気に見る
責任者が語るエルグランド開発の3本柱
開発責任者の一野健人氏によると、新型エルグランドで目指した姿は「大切な人たちとの遠出を楽しめる、プレミアムグランドツーリングミニバン」。これを実現するため、「乗る人みんながくつろげる極上の快適空間」と「どこまでも走りたくなる運転の楽しさ」の2点にこだわって開発したという。
「第3世代e-POWER」(発電特化エンジン+大容量モーター)、進化した「e-4ORCE」(前後モーター駆動力とブレーキ制御)、「インテリジェント・ダイナミック・サスペンション」(スポーツセダンの代名詞である「スカイライン」から採用している電子制御サスペンション)が開発の3本柱だ。これら3つを統合制御することで、極上の快適性や運転の楽しさを提供することができたとしている。
新型に試乗した後は、日産車両計画部の音振性能計画グループやグローバルデザイン本部のデザインマネージャーら開発陣に話を聞いた。
圧倒的な静粛性が実現できた理由は?
――新型エルグランドの製品概要やポジショニングについて教えてください。
16年という長いブランク(という表現が正しいかどうかは別として)を経て投入する新型なので、失敗のできない最重要案件であり、そのために最新技術とデザインを全方位で投入しています。競合車(特にトヨタ自動車の「アルファード」)を明確なベンチマークと決めて、各性能パラメーターで優位を狙うことを開発方針としました。走りのよさと上質な静粛性の両立という「唯一無二」のコンセプトを強化したモデルです。
――走った印象として、特に静粛性が印象に残っています。エルグランドに投入したNVH(騒音、振動、突き上げ感)対策と音響工学について教えてください。
基礎対策としては、車体の隙間や穴を徹底的に封止し、静かなプライベート空間を提供しています。例えば、排気系ダクトなどは耳までの経路を長く複雑にし、さらに吸音材を配置して音の到達を大幅に低減しています。
また、BOSE(ボーズ)、パナソニックと共同開発した技術を採用した「アクティブ・ノイズ・キャンセリング」制御により、路面騒音とエンジン音を高精度に打ち消すことができ、基礎静粛(封止)が効くことでキャンセル効果が最大化しています。
e-POWERのエンジン作動に関しても、荒れた路面で作動させるなどの巧みなマスキングを行うことで、意識して聞かないと気が付かないレベルに達しています。
――乗り心地だけでなく、ハンドリングや駆動系のよさも感じられました。一方で、2列目では、前席では感じなかった微細振動が少し気になりました。
高い重心の大型ボディでも、コーナー侵入から一発でラインが決まる安定感と回頭性が出せるよう、e-4ORCEによる四輪トルクベクタリングを精緻に行っています。これは一般路面だけでなく、雪道や凍結路でもスリップ検知に基づく最適トラクション配分ができ、高い登坂・走破性能が発揮できます。
ドライブモードごとの乗り味を差別化していて、特に「コンフォート」モードでは、路面の継ぎ目や凹凸を上品にいなすことができる設定にしてあります。
2列目の件に関しては、現構造ではソフトマウントの採用が難しく、可能な範囲で振動低減策を最適化しています。サスペンション側でのチューニングも実施し、全体のレベルとしては大幅改善ができています。
ギラギラ感も今や昔? デザインを聞く
――エクステリアデザインの方向性について教えてください。
これまでのギラギラとしたプレミアム感とは表現の仕方が異なる、「シンプルでクリーンな、先進感のあるデザイン」という方向性がクリアだったので、比較的、やりやすいプロジェクトだったと思っています。新たなフラッグシップにふさわしい、堂々とした強さも感じてもらえると思います。
全高や全幅が現行モデルに比べてよりアップした大きな車体となっていますが、実はアルファードより最小回転半径が小さいので取り回しがよかったり、目線の位置が高いので視界がすぐれるなど、優位性を発揮した特徴を持っています。
※新型エルグランドのボディサイズは全長4,995mm(現行型に比べ+30mm)、全幅1,895mm(同+45mm)、全高1,975mm(+160mm)
――インテリアは独特のカラーリングとなっているようですが。
青と紫の2トーンで仕上げた“紫檀”のカラーリングです。日本の伝統的な、高貴な色を引用しつつ、奇抜さを避け、広い受容性を確保した色としました。従来の定番色であるタンやホワイトを避け、先進と品格を両立した新しい色調を提案しています。
――出力などのスペックは現時点で非公開ですね。
今のところは公表していませんが、体感・目標感として、V8エンジン以上のトルク感にあふれた走りとなっているはずです。第3世代のe-POWERは静かで速いので、「あれ、いつの間にかこんなスピードになっている」という車速の乗り方が新型の特徴になっています。
プレミアムミニバンの市場は今、事実上、アルファード一択という状態。すでに顧客は刈り取られてしまっているように思える。日産は新型エルグランドでどう戦っていくのか。
そのあたりが興味深いところだったのだが、開発を担当したスタッフたちの顔つきや話ぶりは「こっちはこっちで、ちゃんとやりますよ」という自信満々な雰囲気で、見ていて頼もしかった。



















