中東情勢の影響で原油の調達が難しくなり、改めて脚光を浴びつつある電気自動車(EV)。日本メーカーはEVに消極的といわれがちだったが、ここへきて各社のラインアップ拡充が進みつつある。日本製EVの現状と今後を考えてみた。
日産の施設に日本車6ブランドが集結!
日産自動車は先日、追浜工場に隣接するテストコース「グランドライブ」で国内6ブランド合同の取材会を開催した。集まったのはEVとプラグインハイブリッド車(PHEV)。日本の電動車を横並びで比較取材できる貴重な機会となった。
思えば、グランドライブに日産以外のクルマ(と各社のスタッフ)が集結する試乗会など、これまで考えてもみなかったことだ。会場に到着すると、メインホールの前には各社のEVとPHEVがずらりと並んでいて、入り口付近には日産、レクサス、三菱自動車工業、マツダ、ホンダ、スズキの“のぼり旗”がはためき、いつもお世話になっている各社の広報さんや技術者さんが顔をそろえているではないか。これはもう、尋常ではない事態だと思ったのは筆者だけではないだろう。
合同取材会開催の背景を日産はこのように説明する。
「皆さんから、合同取材会開催の経緯についてたくさんの質問をいただいております。まず背景としては、国内ブランドの電動車両のラインアップ拡充が進んでいる一方で、日本市場におけるEV普及率はグローバルに比べてまだまだ、という状況があります」
取材会の目的は、日本市場での電動車ラインアップの充実ぶりについての認知度向上だ。さらには、メディア側からも各車の電動車を一度に取材したいとの要望が多かったことから、今回の開催に至ったという。
確かに、日本におけるEVの普及率(新車販売に占めるEVのシェア)は2%を超えたあたりだし、PHEVを含めても約3%程度で、世界平均と比べれば約10の1という数字だ。今後の新型車投入やバッテリーの開発、インフラ整備が普及率アップの鍵を握ることになる。
日本車各社の動向は?
ここからは、日本車各社のEVに対する向き合い方を確認していこう。
まずスズキは、2030年から2035年に向けてを目標に、カーボンニュートラル燃料を使った内燃機関やハイブリッドの技術を開発中。EVについてはeAxleとバッテリーを第1世代から第2世代へと進化させるとともに、将来のモビリティ社会に適合するバッテリーなど、ちょうどいい電動化技術を育てていくとする。その出発点が、今回の取材会に持ち込んだ新型「eビターラ」だと紹介した。
スズキ「eビターラ」の写真ギャラリーこちら
ホンダは2050年に向けて、全製品のカーボンニュートラル化と交通事故死亡者ゼロを目標に掲げる。商品としてはまず、地球にやさしい“働くEV”として「N-VAN e:」が登場。続いて、既存の「Nシリーズ」の資産をいかし、手の届く「デイリーパートナー」をグランドコンセプトに開発した「N-ONE e:」を発売した。
ホンダ「N-ONE e:」の写真ギャラリーこちら
マツダはマルチソリューション戦略に基づき、顧客ニーズや市場特性に応じた多様な電動化手段を提供する方針。今回の取材会に持ち込んだ「MX-30 ロータリーEV」や「CX-60 PHEV」が、まさにそうした商品だ。2027年には独自のEVを導入する予定。2030年までにすべての車種を電動化するとした。
三菱自動車はPHEVをコア技術と位置付け、それを基盤に各国事情やユーザーニーズに応じた電動化システムを展開する方針だとする。取材会に持ち込んだ「アウトランダーPHEV」は、現行型へのモデルチェンジでバッテリー容量と出力を引き上げ、EV航続距離と加速性能をアップさせた。四輪制御技術に強みを置き、7つのドライブモードを設定したことで、路面状況や走行シーンごとに最適な走りを実現している。
レクサスはトヨタのマルチパスウェイ戦略の中で、電動化技術を牽引しながら新しいラグジュアリー体験とドライビング価値を創出する役割を担うという。取材会に登場した「RZ」は、ステアバイワイヤーやインタラクティブマニュアルドライブを搭載。EVに新しい運転の楽しさを加えることができたという説明だ。
レクサス「RZ」の写真ギャラリーこちら
日産は1947年の「たま電気自動車」以来、2010年の初代「リーフ」、2017年の2代目、2025年の3代目、2020年の「アリア」「サクラ」など、継続的に商品を市場投入してきたEVのパイオニアだ。特に3代目「リーフ」は、これまでの知見を結集させて開発した最新のEVであり、誰もが気持ちよく、安心してドライブできるクルマに仕上がったとする。
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海外メーカーの動向は?
今回のように、日本の自動車メーカーが合同でEVの試乗会を行うのは、超レアケースといえるだろう。その背景には、米国のテスラや中国のBYD、韓国のヒョンデなど、手強いライバルたちが日本のEV市場に進出していることへの危機感があるのかもしれない。
特に2025年の「ジャパンモビリティショー」(JMS)でお披露目されたBYDの軽EV「ラッコ」は、スーパーハイトワゴンのボディにスライドドアを備えた軽自動車の王道スタイル。これが低価格で販売されるとなると、日本の軽EV市場における競争が本格化するだけでなく、軽自動車市場全体の勢力図が書き換えられる可能性もあるのだ。
日本のEV市場については、クルマの性能や価格面だけでは語ることができず、インフラや住環境、中古車市場の未成熟など複雑な要因が絡み合っている。「呉越同舟」とはいえ、今回のような合同試乗会などを行う試みが、さまざまな課題や問題点を共有しつつ、次のステップにつながるキッカケになることを願ってやまないのだ。
















