ゴッホの絵画が数百億円で落札された……。こんなニュースをときどき目にして、あまりの金額に度肝を抜かれることがある。アート作品は値上がり幅が大きい印象だが、一般人が投資の対象としてアートに向き合うことは可能なのか。アート投資を手掛けるアマルガムアートギャラリーの担当者に話を聞いた
アート作品は減価償却できる?
海外には、アート作品を投資対象として見ている経営者などの富裕層がたくさんいる。超富裕層ともなると、資産の5%くらいを美術品などのアート作品として保有している人もいるそうだ。
一方の日本では、経営者などが自宅やオフィスに飾るためのアート作品を購入する需要の方が多いという。
ただ最近は、日本でもアート投資が注目を集めるようになった。そこにはいくつかの理由があるとアマルガムアートギャラリーの担当者は話す。
「アート作品は減価償却ができます。それをお伝えすると、経営者の方に驚かれたり、喜ばれたりします。年間300万円を上限に、資産取得したその年に全額を償却できるんです。現物資産として数年間楽しめるのなら買いたい、ただし、売るときにはできるだけ損をしたくないというお客様が増えてきました」
経費で落とすことができて、実物資産として保有しながら鑑賞して楽しむことができれば一石二鳥だ。さらに、売却時に買ったときよりも高く売れるとなれば、投資対象として十分に魅力的といわざるを得ない。
アート投資は8~9%の値上がり率
アート投資をする上で重要なのは、人気作家の作品を選ぶことだという。
例えば、日本でも有名な芸術家・草間彌生氏の版画作品「かぼちゃ」は、ここ20年で大幅に価値が上がった例として注目すべきケースだ。2006年には50万円だった価格が、2024年には1,640万円まで上がっている。流通量が多いとされる版画作品であるにも関わらず、実に33倍もの上昇だ。その要因は、流通量が限定された希少性とブランド力にほかならない。
さらにアートの価格を形成するアルゴリズムにも注目すべきだと担当者は話す。
「世に出ている枚数を上回る需要があるか(需要度)や、美術界における作家の知名度がどれくらいなのかが重要です。さらに、どこの美術館が所蔵しているか(していたか)、オークションでの落札価格はいくらだったか、アートヒストリーと文脈に適しているか、権威付けされた伝統的な美の基準にあっているか(アカデミズム)などが総合的に判断され、価格が形成されます」
アート投資は、年間平均8~9%の値上がり率があるとされている。ただ、株や債券と違って、投資は二の次という考えで買う人のほうが多いそうだ。「楽しむために購入し、売却時に結果として利益が出ればラッキーというくらいに考えていたほうが、アート投資はより楽しめます」と担当者は話していた。
本気で利益を確保したいのなら、アートの価格形成アルゴリズムを徹底的に追求するか、株や債券など他の投資商品を選んだほうがいいのかもしれない。
円安になるとアート市場は活性化?
アマルガムアートギャラリーでは、アート作品を業者から直接仕入れて百貨店や画商への卸売をしており、市場価格よりも安い卸価格でユーザーに販売できるという。
取り扱う商品は、オークション出品実績のある資産価値の高いセカンダリー作品(一次市場で販売された後、中古品として再販される作品)が中心。つまり、出処がはっきりしている作品しか扱わないということだ。
今後、資産価値が上がりそうな作品を具体的に聞いた。
「アメリカの画家、ジャン・ミシェル・バスキアの作品は、実業家の前澤友作氏がオークションで6億円で落札し、6年後に手放した際には12億円になったことで有名になりました。そのほか、フランスの画家、ベルナール・ビュッフェやイギリスのアーティストであるバンクシー、現代美術家の村上隆、日本生まれでフランスに住んだ画家・彫刻家の藤田嗣治などの作品は資産性があるとみています」
今後もアート市場は拡大し、価値や相場が上昇していくのだろうか。
「金融市場に左右されるため、確実に上がるとは断言できません。円の価値が弱くなる(円安)と現物資産を保有したがる人が増えるので、市場は活性化します。コロナ禍以降は市場が縮小したときもありましたが、今現在は、じわじわと上昇傾向にあります。買うなら今は絶好のタイミングかもしれません」
絵画は、蛍光灯の光を浴び続けると色味や紙質が変色する可能性があるため、アート投資で本気で利益を狙うなら、保管方法なども含めて細心の注意を払ったほうが賢明だろう。高い買い物になることは確かだし、売却時に少しでも価値が残っていてくれたほうが嬉しいのは間違いない。
鑑賞してこそ価値があると思っていた芸術作品も、投資対象として眺めてみると、また違った見え方になってくる。アートの本質とはなんなのか、その答えはしばらく出てきそうにない。





