クルマの足回りは、乗り心地の良し悪しを左右する大事な要素だ。乗っているクルマの足回りのセッティングを、車内で流す音楽を変えるようにスマホで自由に調整できるとしたら……。クルマ好きが夢見るこんな技術を開発したのがカヤバだ。
どんなシステム?
自動車部品や油圧システムのグローバルサプライヤーであるカヤバ(KYB)は1月29日、スマートフォンを使ってクルマのショックアブソーバーの減衰をコントロールできる革新的な電子制御サスペンションシステム「ActRide」(アクトライド)の発表会を開催した。スマホで音楽を選ぶようにクルマの乗り心地を変えられるという同システムは、どんな仕組みなのか。
クルマの足回りは従来、サスペンションを希望の硬さのものに交換したり、高級車であれば車載の可変システムでコントロールしたりして調整するのが一般的だった。
カヤバがアフターマーケット向けとして発表したアクトライドの最大の特徴は、手持ちのスマホを使って、直感的に乗り心地を調整できるところだ。
システムの構成としては、車種専用のソレノイドバルブ式ショックアブソーバー、コントローラー(Bluetooth通信、IMUセンサー内蔵)、接続用ハーネス、スマートフォンアプリ(iPhone/Android対応)の4つ。初回販売の対応車種は2004年8月にトヨタ自動車が発売した現行型(200系)「ハイエース/レジアスエース」の全グレード(2WD/4WD)で、価格は26.95万円となる。取り付け工賃を含めると30万円前後になるのでは(店舗によって異なるため)とのことだ。
具体的な使い方は?
使い方としては、まず、アクトライドを愛車に取り付けてから、スマホに専用アプリ「アクトライド」をダウンロードしてセットアップを行う。あとはデフォルト設定のComfort/Normal/Sportの3つからモードを選ぶだけだ。オリジナル設定を6つまで登録しておくこともできる。非常に簡単だ。
制御で使用するパラメータには、フロントとリアの減衰力を0~100の間で設定する「ベース減衰」と、ベース減衰を基準としてシステムが自動的に最適な操縦性と操作性を調節する「オートモードON」がある、さらにその状態から、より細かい調整が可能な乗り心地制御の「Ride」、操縦性制御の「Handling」、車速連携の「Speed Adpt.」をいじることができる。
スマホでモニター画面を表示すれば、4輪の減衰指令値や前後G、ロール・ピッチの角速度など、コントローラーのセンサーで検出した車両の変化をリアルタイムで可視化できるので、これもまた面白い。
具体的な使い方を想像してみよう。例えば「家族で長距離ドライブに出かける日」なのであれば、家族みんなの乗り心地を最優先する「Normal」を選択し、「Ride」を変えて好みの乗り心地にする。「高速道路を走る」なら、「Ride」を上げてフラットかつしっかりした乗り心地にして、「Speed Adpt.」を上げて高速時の安定感と横風に強いセッティングを選ぶ。「走りを楽しむ!」と気合いを入れた日には、「Ride」を上げるとともに「Handling」を上げて、軽快でキビキビしたハンドリングにすればいい。「たくさんの人や荷物を乗せてより安全に走りたい」のなら、リアのベース減衰を上げ、荷物で変化したバランスを調整すれば快適に走行できるはずだ。
特に乗り心地制御に関しては、車体と空中の間に仮装のダンパーを設定し、まるで空中から吊り下げられているようなフラットな乗り心地を実現する「スカイフック制御」を使用することで、低周波の「フワフワ」と中・高周波域の「ひょこひょこ」という、乗員が揺さぶられるような動きを両方とも抑えることができているそうだ。
バッテリー上がりは心配なし?
アクトライドが使用するシステムは、リアルタイムでの減衰力調整で乗り心地と操縦性を両立する、KYB初の電子制御式セミアクティブサスペンションだ。ソレノイド式を採用したことで、従来の機械式ステッピングモーター式より滑らかで8倍速い応答性があり、モーターによる駆動音もないという。
故障時(電源失墜時)に懸念される安全性に関しては、フェイルセーフの観点から、機械的にミディアム減衰程度に固定する設定を入れているため、各輪がバラバラに作動するようなことはないとのこと。
車両の状態(3軸加速度と3軸角速度)をセンシングするIMUセンサーは長さ122mm、幅82mm、高さ33mmと小さいので、車内の取り付けスペースで問題になるようなことはない。振動や熱(マイナス40度から60度、保存温度は85度まで可能)などに対しても、OEM車載要求の信頼性試験に合格している。無線認証については、日本はもちろん、海外のグローバル認証にも対応済み。待機電流が小さい設計なので、バッテリー上がりの心配は不要だという。
発表会場では、このセンサーを取り付けたRCカーによるデモ走行を見ることができた。凸凹の路面を通過する際には、Bluetoothでつながったスマホの画面上に減衰力の変化が表示される様子がよくわかった。
スポーツカーにも付けたい! 今後の展開は?
今回、アクトライド搭載の第1弾としてトヨタ「ハイエース」を選んだのは、販売台数が多く、運転時の積載量が大きく、かつ、仕事や趣味での使われ方が幅広いため、同技術のメリットを十分にいかせると判断したからだという。
とはいえ、商品の特性として、スポーツカーやミニバン、SUVなどの多様な車種に訴求できるはずで、具体的な車名はまだ明かせないとのことだが、今後はそうした商品展開になる見込みだそうだ。さらには、グローバルでの展開も見据えているとのことだった。


















