「シビック タイプR」(CIVIC TYPE R)といえば、2023年にドイツのニュルブルクリンク北コースでFFモデル最速ラップタイプをたたき出したホンダのスポーツカー。ただでさえ速い同モデルの「究極のカスタムカー」作成に挑んだのが、オートバックスセブンのレーシングスポーツブランド「ARTA」だ。どんなカスタムなのか、実物を見てきた。
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「ARTA」(AUTOBACS RACING TEAM AGURI)は「SUPER GT」をはじめとする国内トップカテゴリーで活躍するレーシングチームであり、アパレルやカー用品などを展開するレーシングスポーツブランドでもある。今回のカスタムカー開発は、「ARTAのレースマシンを公道へ」がテーマ。レースファンが憧れる究極のカスタムカーを目指した。
ベース車両には「SUPER GT」の「GT500クラス」参戦車両と同じくシビック タイプRを採用。開発は鈴木亜久里氏と土屋圭市氏が主体となり、デザインとパフォーマンスパーツを厳選し、さらには現役ドライバーの野尻智紀選手がサーキットで試作車をセットアップして、SUPER GTで培ったノウハウを惜しみなく投入した。「見た目」と「走り」の両方で、妥協のない仕上がりを実現したという。
マシンのデザインと性能の特徴は以下の通り。
大開口フロントマスクによるダウンフォースと冷却効率の向上
オーバーフェンダーに組み込まれたエアアウトレット付きダクト
タービンやサスペンションもトータルでチューンアップ
迫力あるリアディフューザーとスワンネックGTウイング
公道はもちろん、サーキットでの限界性能を引き出す仕様
こちらのカスタムカーは20台限定で発売。「ARTA GT FL5 コンプリートキット」という形で、価格は1,350万円(ベース車両を含まず)だ。東京オートサロン2026の会場で担当者に聞いた話だと、「すでに7台のオーダーが入っています」(2026年1月9日時点の情報)とのことだったが、1月29日にホームページをチェックしてみると、そこには「ご好評につき、新規の商談受付は終了いたしました」との記載があった。
そもそも、シビック タイプRはホンダが丹精を込めたクルマで、「素の状態」でも十分に高性能だ。そんなタイプRをベースにカスタムカーを作るうえで、何に気を付けたのか。タイプRに「伸びしろ」はあったのか。担当者は以下のように語る。
「ここから性能を上げようと思うと、トータルで上げなければいけない、と考えました。ワイドボディにしたのも限界値を上げるためですし、タイヤも265を295に変えて、グリップ力をかなり上げています。出力も向上させました。もともと素性のいいクルマを、そのバランスを崩すことなく、ワンランク上に上げたというイメージです」
あっという間に売り切れたらしいカスタムカーだが、なぜ20台限定なのか。担当者によれば、このクルマは「どこでも作れるものではなく、1カ月に1~2台のペースでしか作れないため、限定としました」とのこと。ほぼほぼ手作業で仕上げるクルマなので、20台を作るのにも2~3年はかかるという。
同氏は20台限定とした理由を語る中で、「次のプロジェクトを動かすためにも」という言葉を使った。あまり多くの台数を受注してしまうと、次のプロジェクトが動かせない、という側面もあったようだ。
では、次のプロジェクトとは何なのか。新たなカスタムカー開発の計画があるのだろうか。そのあたりについては、「今回のカスタムカーが足掛かりになって、ARTAはしっかりとクルマを作れる、という認識が広がればいいなと思っています。次の車種とかは、何も考えていませんけどね」とお茶を濁されてしまった。ただ、ARTAの市販カスタムカーがもう出ないとは、どうしても思えない雰囲気ではあった。

















