チューニングパーツの開発や販売を手がけるトムス(TOM'S)がトヨタ自動車のコンパクトクーペ「カローラレビン」(AE86)を現代の技術で蘇らせた。「東京オートサロン2026」の会場で実物を見ながら、トムスがレストアした個体の特徴を聞いてみた。
ほかの写真はこちら
当時よりも「いいクルマ」に?
「カローラレビン」はトヨタを代表するコンパクトクーペで、今でも根強い人気を誇る1台だ。初代モデルの登場は1972年で、2000年の生産終了までに通算7世代目まで歴史が続いたロングセラーモデルでもある。
トムスが展示したのは4代目(カローラシリーズでは5代目に当たる)のAE86レビン。「ハチロク」の愛称で親しまれているレビンで、歴代で最も人気のあるモデルといっていい。
そんな86レビンを蘇らせたのが、トムスのレストア事業「トムス ヘリテージ」だ。単に古いクルマを現代に蘇らせるのではなく、「オリジナルを敬い、現代に通じる走りへ」をコンセプトに、長年のレースシーンで培った技術をもとにクルマを再構成する事業で、レストアと同時にアップデートも行う点がトムス ヘリテージ最大の特長となる。
AE86レビンでいえば、ベース車両の車体の軽さやハンドルを握ったときの人馬一体感を損なうことなく、ボディやエンジン、空力やインテリアなど、クルマのさまざまな箇所を再構成している。
具体的には、腐食したボディフレームを修復してMIG溶接による補強を実施し、現代のクルマに迫るボディ剛性を確保。加えて、オリジナルの造形を忠実に再現しながらトムスの空力設計思想をアンダーパネルに投入し、車体全体のエアロバランスの最適化に成功している。そのほか、グランドエフェクト(地面効果、ダウンフォースを生み出す現象やその総称)をいかすことで、安定感の高い正確な操縦性を実現したという。
インテリアにおいてもこだわりがみられる。例えばシートの表皮は、新車時の風合いに合わせた織物素材で新調した。そのシートに合わせてドアの内張りも張り替えるなど、経年劣化を払拭することにもこだわったという。
さらにエンジンは、NA1600レース用エンジンを再チューニングし、一部に新規パーツを採用するなどして、耐久性と信頼性を大幅に向上している。
-

再チューニングしたエンジン。排気量は1,578ccから1,626ccに、最高出力は160PSから195PSに、最大トルクは16.5kg・m/5,200rpmから19.5kg/6,490rpmに上がっている。使用燃料はレギュラーからハイオクに変更
当時を知るメカニックもアドバイザーとして参加
ではなぜ、トムス ヘリテージはAE86レビンを復活させることができたのか。その秘訣を担当者に聞いた。
「秘訣というほどではありませんが、AE86レビンが新車で売られていたとき(1983年以降)から、レース仕様にチューニングしていたという技術の蓄積があります。さらに、現役メカニックだけでなく、すでに引退しているメカニックにもアドバイザーとして助言してもらっています。当時のエンジンの特性を知り尽くしているメカニックの意見は、トムス ヘリテージにはなくてはならないものといってもいいかもしれません」
展示車のAE86レビンについても解説してくれた。
「一見すると当時のままのように見えるかもしれませんが、エンジンが少し違います。難しい説明は避けますが、特に補器類(発電機やウォーターポンプなどの付属機器)を変えて燃費を改善しています。そのほか、細かい部分をたくさん変更していて、乗り心地よく、車内の雰囲気も古臭くなく、清潔感にあふれる仕上げにこだわっています」
決してオーバーな言い方ではなく、新車のような輝きを放っていたAE86レビンだが、トムス ヘリテージにレストアをお願いすると、価格は車両代込みで1,650万円からとなる。オーナーが自分でクルマを持ち込む場合は、エクステリア/インテリアのレストアとアップデート代で1,320万円からだ。
金額は決して安くないと感じるが、自分の気に入ったクルマを単にレストアするだけでなく、現代の技術で、現代のクルマに匹敵するレベルの堅牢性や走行性が手に入るとなれば、どうだろうか。
旧車ファンは世界中にいる。旧車を長く安心して楽しむためには、技術をもったレストア事業者の存在が不可欠だ。


























