軽自動車の電気自動車(軽EV)はいくつかあるが、乗用車タイプは日産自動車「サクラ」、三菱自動車工業「eKクロスEV」、ホンダ「N-ONE e:」の3車種に絞られる。サクラとeKクロスEVは兄弟車なので、構図としては日産/三菱VSホンダということになる。両陣営の軽EVはどう違うのか。サクラのユーザーがN-ONE e:に乗って比べてみた。
運転姿勢への配慮に感心
ホンダ「N‐ONE e:」の運転席に座って、ほっと心が和んだ。
理由は、運転操作のしやすい正しい運転姿勢を自然にとることができたからだ。これひとつで、N-ONE e:を選ぶ意味はあると思った。
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「N-ONE e:」は「e: G」(269.94万円)と「e: L」(319.88万円)の2グレード展開。「e:G」(写真)はオプションなしだとセンターディスプレイレスで急速充電口も付いていないシンプルなタイプだ。ほとんど知っている道を走るからナビは不要という人や、クルマで遠出はしないという人なら、このグレードでほぼ問題ないはず
私が乗っている日産「サクラ」は、ハンドルの前後位置を調整するテレスコピック機能が付いていない。座席の調整(前後のスライド)だけでは、ハンドルを持ちやすい位置にするとペダルが近すぎ、ペダル操作をしやすい位置にするとハンドルが遠くなってしまう。
このため、運転席の調整では、上記の後者を選んでペダル操作を優先し、ハンドル位置は遠めで使っている。
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日産「サクラ」は「X」(259.93万円)と「G」(308.22万円)の2グレード展開。N-ONE e:も同じなのだが、購入時には国からの補助金57.4万円が使えるし、住んでいる自治体によってはさらなる補助を受けられる可能性がある
私は70歳だ。運転だけでなく、日常生活においても自分が思っている以上に体の動きが鈍りがちである。高齢者のペダル踏み間違い事故が報道されるように、万一のペダル踏み間違えが不安なので、ペダル操作を優先している。
その結果、ハンドルは8時20分のあたりを持つことになる。本来は9時15分か10時10分のあたりを握るべきだが、手が届かないからやむを得ない。
この不具合は、エンジン車を含め軽自動車全般の課題だ。サクラだけの問題ではない。唯一、ホンダ「N-WGN」は、軽自動車でもテレスコピック機能を備える。
ではN-ONE e:はというと、テレスコピック機能は持たないが、エンジン車のN-ONEに比べ、ハンドル位置がわずかに運転者よりに(手前に)移動している。ハンドルが遠くなりすぎないようホンダが修正したのだ。この効果が、実に大きいのである。
アクセルペダルを離すと停車まで可能なN-ONE e:
もうひとつ、N-ONE e:のよい点は、アクセルのワンペダル操作で停止までできることだ。サクラも、日産が「e-Pedal Step」と名付ける回生をいかしたワンペダル的な操作を選ぶことができる。だが、停止するときはブレーキペダルを踏まなければならない。ここで、ペダルの踏み替え操作が生じる。
N-ONE e:も、緊急停止が必要な場面(意図的に強く減速したい場面)ではブレーキペダルを踏むことになる。とはいえ、普段の交通の流れでは、赤信号で止まる場合でも、アクセルペダルを徐々に戻し、回生で減速しながら、最終的にはアクセルペダルを完全に戻せばクルマを止められる。
日産はe-Pedalを導入したとき、ワンペダル的な運転操作により、ペダル踏み替えを7割ほど減らせると説明した。さらに熟練すれば、9割も減らせる可能性があるとした。
N-ONE e:はアクセルのワンペダル操作で停止まででき、ペダル踏み替えの機会をさらに減らし、かつ、運転を楽にさせる。高齢者だけでなく、運転を苦手に思う人にも優しいEVだ。
以上の2つが、N-ONE e:とサクラの大きな違いである。
N-ONE e:はクルマとして、そしてEVとして、とても優れた1台といえる。
背の高さの違いで走りに影響は?
ところで、N-ONE e:は、軽自動車の枠組みのなかでも基本となる乗用車のグループになる。エンジン車のN-ONEを基にしたEVであり、競合はスズキ「アルト」、ダイハツ工業「ミライース」など(これらはエンジン車)だ。
これに対し、サクラは「ハイトワゴン」に分類される。日産「デイズ」がベースの、車高がやや高い軽自動車である。競合はホンダ「N-WGN」、スズキ「ワゴンR」、ダイハツ「ムーヴ」(これらはエンジン車)などとなる。
屋根の高さの違いにより、N-ONE e:はサクラに比べ、運転席に座ったときの目線がやや低い。それによって、落ち着きが感じられる。また走行感覚においても、より軽快で、街中で機敏に動ける印象がある。
一方のサクラも、登録車のミニバンやSUVほど目線が高いわけではない。ただ、屋根が高いせいだろうか、より安定性を重視した走行感覚で、どっしりした印象がある。重厚だといえばそうかもしれない。軽自動車っぽくないともいえるだろう。
EVは床下に駆動用のリチウムイオンバッテリーを搭載する。このため、車種を問わず低重心になり、エンジン車より安定し、重厚さも高まる傾向にある。それでも、N-ONE e:に軽快さを覚えるのは、屋根の低さによるのではないだろうか。しかもN-ONE e:は、サクラより容量の大きいバッテリーを車載しているはずだ。
航続距離の違いをどう考えるか
その大容量バッテリーによって、N-ONE e:の一充電走行距離はWLTCモードで295kmと、サクラの180kmを1.6倍以上も上回る。長距離移動の多い人には安心材料だろう。長距離移動に際しては、冒頭の快適な運転姿勢がいっそう重要だ。
とはいえ、私はサクラの一充電走行距離に満足している。もし長距離移動するなら、途中で充電すればいいだけのことだ。しかも、バッテリー容量が小さければ短い時間で充電を終えられる。
N-ONE e:のもうひとつのよさは、運転席からフロントフード先端を目で確認できること。サクラは、直接目で見ることはできない。狭い路地を走る機会の多い人にとって、各種センサーやカメラ映像だけでなく、自分の目でクルマの先端を確かめられる安心は大きいはずだ。
ほかの特徴として、N-ONE e:の後席は前後にスライドさせられないが、座面を跳ね上げて高さのある荷物を後席側に積み込める。「フィット」と同様の「チップアップ機能」だが、これがあるのもホンダ車らしい個性だ。一方のサクラは、後席を大きく前後に移動させることができる。
N-ONE e:の試乗を終え、あえて軽のEVを選んで使おうという人の期待や思いを十分に受け止めた出来であることを実感した。オススメできる軽EVだ。































































