トヨタがティザー広告でその存在を予告していたGR/レクサスの新型プロトタイプスポーツカー3台が、ついに姿を現した。ワールドプレミアの会場となったのは富士山の麓、裾野市にある「トヨタ ウーブンシティ」だ。日本のみならず、海外からも多くの報道陣が詰めかける中、初めて姿を現したトヨタ製スーパーカー「GR GT」を間近でチェックしてきた。
「式年遷宮」と「悔しさ」と
「GR GT」「GR GT3」「レクサスLFAコンセプト」の3台を作ることは、トヨタにとっての「式年遷宮」であるというのが同社の説明だ。
式年遷宮は日本の神社で行われる伝統行事で、一定の年数ごとに社殿を建て替えて、建物の維持や技術の継承を行なっていくというもの。20年に1度の伊勢神宮の式年遷宮が有名だ。
今回の3台は「トヨタ2000GT」「レクサスLFA」に続くフラッグシップスポーツカーとして、クルマづくりの基本となる技を守り、新技術を取り入れることで次世代に受け継いでいくという「トヨタの式年遷宮」を体現したものだという。
3台を作った背景には「悔しさ」もあると語るのは、トヨタの豊田章男会長だ。
発表会に登壇した豊田会長は、「20年前、トヨタがニュルブルクリンク北コースを走った時は、当時のマスタードライバーだった成瀬宏氏と私の2人だけでした。トヨタには最新のスポーツカーがなかったので、乗ったのは中古の80スープラでした」と振り返った上で、「走行中にカムフラージュした他社開発のプロトタイプにどんどん抜かれ、『トヨタさん、あなたたちにこんなクルマ作れるわけないでしょ』と言われているようで、とても悔しかった」と述懐。先代LFAができた時に成瀬氏は、見たこともないような笑顔を浮かべながら、「ニュルで前だけ見て走れたのは初めてだ」と声をかけてくれたという。
ニュルで他社の後塵を拝した悔しい思い出が、新型スポーツカーの開発につながっているのだ。
エクステリアデザインの秘密
V8ツインターボの快音と共に会場入りした「GR GT」は、低く、長く、平らな超ロングノーズ、ショートデッキのボディ形状が特徴的だった
なぜ、こんなカタチになったのか。担当者に聞いてみた。
「通常のクルマのエクステリアデザインは、デザイナーがインスピレーションで白い紙にスケッチを描くところからカッコよく仕上がっていくものなのですが、今回のGR GTはその逆。全高とドライバーの着座位置を限界まで下げた、低重心で空力性能の高い理想の姿を定めてから、デザインを検討しました」
具体的には「箱車」といわれるレーシングカー、例えばルマンカーだったり、アメリカのナスカーだったりといった、フラットサイドの四角い箱形状のクルマが空力的には理想なのだという。
サーキットでも一般道でも、本当に安心して運転できるダウンフォースを得るため、徹底的にこだわったのが今回のGR GTだ。フロント、サイド、ドア後方、リアタイヤ前には、空力や冷却を追求した大胆な開口部を設けるとともに、リア後端はボディ幅いっぱいまで広がるダックテールとし、テールエンドは豪快な4本出しマフラーで締めくくっている。
ちなみに、ボディの骨格はオールアルミ製。9つの低圧鋳造キャストパーツを強度を保った中空形状で製造し、直線形状のアルミ押し出し材と溶接でつないだトヨタ初の挑戦だ。ボディパネルはカーボンや樹脂などさまざまな素材を適材適所で使用している。
エンジンはV8ツインターボ! 目指すは圧倒的な性能
低いボディのフロントに搭載するのは、新開発の4.0L V型8気筒ツインターボエンジンだ。
エンジンの高さを抑えるため、オイルパンの薄いドライサンプ方式を採用。サーキットなどでの強烈なGに耐えるためにスカベンジングポンプを使用した潤滑を行う。ボア×ストロークは87.5mm×83.1mmのショートストロークタイプ。フラットな燃焼室もよく見えた。
ツインターボは90度のVバンク内に配置したホットV形式を採っている。燃料はガソリンとe-フューエルのどちらにも対応可能。「マルチパスウェイ」を掲げるトヨタらしい仕上がりだ。
駆動方式は限界領域までの扱いやすさを考えたFR(後輪駆動)。出力を後輪に伝えるプロペラシャフトは見るからに太い炭素繊維強化プラスチック製だ。
シャフトの延長線上にあるリアアクスルには、エンジンの低回転域を補いつつシフトタイミングを高速化する役割を持つ1モーターや、新開発の8段ATが搭載されているのがわかる。
足回りはアルミの前後ダブルウィッシュボーンタイプ、装着するタイヤは専用開発のミシュラン製「パイロットスポーツカップ2」だ。ブレーキはブレンボ社のカーボンディスクを採用。総じて、「こんなに見せていいの?」と思うほどの展示がなされていた。
パワートレインの開発目標値はシステム最高出力650PS以上、システム最大トルク850Nm以上。圧倒的な数値だ。「音」にもこだわり、「クルマと対話できるサウンド」「熱量変化を感じさせるサウンド」という2つの柱を軸に開発したという。実際に聞いたGR GTの咆哮は、会場内の空気をビリビリと震わせていた。
真紅のインテリアが鮮烈、スピードメーターは220マイル!
GR GTのインテリアは印象的な真紅が基調。低い位置に取り付けられた2座の真っ赤なレカロ製スポーツシートが目を引く。その間にコンパクトなカップホルダーがあるのは市販車らしいところだ。
中に太いトルクチューブが突き抜けるセンターコンソールに肘をのせると、ちょうど操作しやすい位置にコンパクトなシフトスイッチが配置されている。その周りにカメラビューやボディリフターのボタンが置かれていた。
眼前のステアリングは底面がフラットになった形状。、センターパッド右にスポーツブースト付きの赤いドライブモードダイヤル、左にエクスパート用のゴールドのトラクションコントロール調整ダイヤルが取り付けられている。表示されていたタコメーターは7,300rpmあたりからレッドゾーンで、スピードメーターは時速220マイル(約350km/h)まで刻まれていた。ペダルはもちろん2ペダルで、大きなフットレストにはブルーのビニールがついたままだった。
GR GTは2027年ごろの発売を目指して開発中。ひょっとすると、その頃にはライバルの日産自動車「GT-R」にも何らかの動きが出始めているかもしれない。「TN対決、再び!」などと夢を見ながら待つのも楽しそうだ。












































