トヨタ自動車「ヤリス」の究極進化バージョンともいえる超高性能モデル「GRヤリス by TOM'S×KINTO」に「KINTO」で乗れるようになった。レンタルなら8時間3.5万円からトライすることが可能だ。ヤリスといえば街でよく見る身近なクルマの代表格だが、究極進化でどう変わったのか。試乗してみた。
GRヤリスがさらにパワーアップ!
トヨタのコンパクトカー「ヤリス」は、安価で扱いやすいことなどからレンタカーや営業車でもおなじみの人気モデルだ。かつては「ヴィッツ」という車名で、2020年からは日本でもヤリスとして販売されている。
そんなヤリスにトヨタがモータースポーツの知見を注ぎ込んだモデルがコンパクトハッチバック・スポーツカーの「GRヤリス」だ。今回の試乗モデルは、GRヤリスをTOM'S(トムス)が別物のコンプリートカーに仕上げた「GRヤリス by TOM'S×KINTO」である。KINTOの「MOTORSPORT by KINTO」(MOSKIN)というサービスで、このクルマがサブスクあるいはレンタルで乗れるようになった。
GRヤリス by TOM'S×KINTOと通常のGRヤリスは何が違うのか。比較してみよう。
GRヤリスが搭載するエンジンは排気量1.6L、最高出力304PS、最大トルク400Nm。ボディサイズは全長3,995mm、全幅1,805mm、全高1,455mm、車両重量は1,280kg(6MT、RZ)だ。
対するGRヤリス by TOM'S×KINTOのエンジンは排気量こそ変わりないが、最高出力は340PS、最大トルクは470.7Nmまでアップしている。ボディにはトムスオリジナルのエアロパーツを多数装着しており、ボディサイズは全長4,060mm、全幅1,800mm、全高1,450mmに拡大。車両重量は1,320kgに増加している。
通常のヤリスとの最大の違いは最高出力340PSというパフォーマンスの高さだろう。専用のECU(自動車を制御する小型コンピューター)をセッティングし、タービンをハイフロー化(風量や吸気効率の向上)している。さらに、ラジエーターやインタークーラーを大容量化することで高出力・高トルクを実現しているという。
GRヤリスよりも36PS、通常のヤリス(ガソリン車1.5L、6MT、120PS)に比べると実に220PSのハイパワー化を達成しているのが大きな特徴だ。
デザインに関しても違いが多い。フロントのディフューザーやリアルーフウイングなど、レーシングカーさながらのシルエットが迫力満点だ。
特に、ワールドラリーカー(WRカー)と同様のオーバル型エキゾーストシステム「トムス・バレル」は、見た目に華を添えるだけでなく、低速から高速まで吹け上がるトルクフルな走りに貢献している。
ポテンザの高性能タイヤ「POTENZA RE-71RS」には、トムスオリジナル鍛造ホイール「TWF01」を組み合わせ、足回りを引き締めている。このあたりからも、GRヤリス by TOM'S×KINTOが通常のGRヤリスとは異なることがうかがえる。
ここまでカスタムされていると「改造車」とみなされてしまうのではないかと心配になったが、そこは問題ないらしい。正規のトヨタディーラーで整備やメンテナンス、車検などを受け付けてくれるので、もし所有するとしても、安心して長く乗り続けられるだろう。
レーシーなのにマイルド?
いざ乗り込むと、セミバケットシート「BRIDE STRADIAIII REIMS」がカラダを優しく包みこんでくれる。このシート、ほどよい硬さで快適な座り心地だ。トップにオリジナルカラーが入ったスエード調の専用ステアリングの握り心地もよく、しっかりと握り込める太さと相まって、ドライブフィールを高めてくれる。
パッとみたところ、シートやステアリング以外の内装は通常のGRヤリスと大きく変わらない。ただ、ひとたびエンジンを始動すると、けたたましいサウンドが響き渡る。耳障りな嫌な音ではなく、ずっと聞いていたくなるエンジンサウンドだ。
ギアを1速に入れて走り出し、アクセルを踏み込むと一気に前進していく。すぐに2速に入れたくなるがしばらく我慢していると、野太いエンジンサウンドが徐々に甲高くなっていき、気持ちがたかぶる。段階的にギアを上げていくと、ボディのコンパクトさも手伝ってか、かなり速い。これが340PSの加速力なのかと実感した。
驚いたのが乗り心地だ。このクルマ、これだけレーシーに仕立てられているにも関わらず、非常にマイルドなのだ。道路上のわずかな段差を乗り超えるときの路面からの突き上げ感が、とても少ない。
トムスの担当者によると、足回りをガチガチにすることもできたそうだが、あえて控えめな乗り味にしているという。レーシングカーなみの加速力を持ちながら、あえて乗り心地を柔らかくすることで、乗員の快適さを確保している。
トムスが掲げる「クルマのポテンシャルを最大限に高めつつ、クルマとしての使いやすさも追求している」という姿勢が、そのままGRヤリス by TOM‘S×KINTOの特長になっているといえそうだ。
TOM‘Sはアルピナみたいな存在?
レーシーなクルマは得てして視界が良くなかったり、思いっきりアクセルを踏み込んだら滑ってしまうのではと不安になったり、駐車場に入るときにボディ下部をこすらないか気を付けたりと、いろいろと余計な心配をしながら運転するものだ。だが、GRヤリス by TOM'S×KINTOにはそういった心配がまったくなかった。街でよく見かけるヤリスがベースであるという安心感も働いたのだろう。
いずれにしても、非常にレーシーで峠を攻めるのにもってこいなクルマなのは間違いないが、ちょっとした街乗りも、宿泊をともなう長距離ドライブも、なんでもこなせるオールマイティな1台だということがわかった。
チューニングパーツメーカーという印象が強いトムスだが、今回の「MOSKIN」ではGRヤリス、GRスープラ、GR86をベースに作り上げた「コンプリートカー」を提供している。
この立ち位置、BMWの車両を独自にカスタムして販売する「アルピナ」に似ている。トムスがトヨタ/レクサス/GRにとってのアルピナのような存在になれるかどうかにも注目していきたいところだ。



































