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V12エンジンを存分に楽しむ! アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」に試乗

DEC. 03, 2025 11:30
Text : 室井大和
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アストンマーティンの「ヴァンキッシュ」は、今や希少な存在となった「V12エンジン」を存分に楽しめる超高級スポーツカーだ。今回は「ヴァンキッシュ クーペ」に試乗し、どんな乗り味なのかをじっくりと味わってきた。このクルマ、次の「ボンドカー」に心から推薦できる1台だ。

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    アストンマーティンの「ヴァンキッシュ」は年間1,000台以下の限定生産。V12を搭載する希少なスポーツカーだ

絶滅危惧種のV12をわざわざ新設計

1913年に2人の青年によって創業されたイギリスの高級スポーツカーメーカー「アストンマーティン」。フラッグシップモデルの「ヴァンキッシュ」は同社の技術が凝縮されたV12エンジンを搭載する。

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    ボディカラーは「アルミナイトシルバー」。通常のシルバーと違い、煌めきがありつつも、光の当たり方で濃くも薄くも見えるグラデーションが美しい

アストンマーティンのV12エンジン搭載フラッグシップモデルの座には、「ヴァンキッシュ」と「DBS」が交互に君臨してきた歴史がある。やや複雑だが簡単に整理しておこう。

ヴァンキッシュの初代モデル「V12ヴァンキッシュ」が登場したのが2001年のこと。2007年には後継モデルの「DBS V12」、2012年には「ヴァンキッシュ」(2代目)、2018年には「DBS スーパーレッジェーラ」が登場し、V12搭載フラッグシップのポジションについた。今回試乗した「ヴァンキッシュ」(3代目)のデビューは2024年だ。

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    ヴァンキッシュ クーペが搭載するエンジンは新設計の5.2L V型12気筒ツインターボエンジン。レイアウトはフロントミッドシップだ

そもそもV12エンジンは、パワフルでありがなら静音性に優れ、振動が少ないことから他のメーカーも高級サルーンやスーパーカーなどに採用してきた。しかし、よりコンパクトで生産コストを抑えられるV8エンジンやV6エンジンでも十分にパワフルであり、しかも燃費も抑えられる。

さらにハイブリッド車や電気自動車の普及・拡大もあって、近年はスーパーカーであってもV12エンジンを採用しないモデルが増えている。

そんな状況の中、アストンマーティンは3代目となるヴァンキッシュに、新たに設計したV12エンジンを搭載したのだ。

ライバルは12チリンドリ?

執筆時点でV12エンジンを搭載している現行の市販車を調べてみたところ、フェラーリ「12チリンドリ」「プロサングエ」、ランボルギーニ「レヴエルト」が6.5L V12エンジンを、メルセデス・マイバッハ「Sクラス」が6L V12エンジンを、ロールスロイス「カリナン」「ゴースト」「ファントム」が6.75L V12エンジンをそれぞれ搭載している。

いずれもブランドの頂点に君臨する超高級車ばかりだが、V12エンジン搭載車はヴァンキッシュを除いて7車種だけとかなり少ないこともわかった。

  • フェラーリ「12チリンドリ」

    フェラーリのV12エンジン搭載モデル「12(ドーディチ)チリンドリ」

  • メルセデス・マイバッハのSクラス

    メルセデス・マイバッハのSクラスはV12エンジンを搭載する

  • ロールスロイス「ファントム」

    ロールスロイスも「ファントム」や「カリナン」でV12エンジンを搭載している

中でも、ヴァンキッシュ クーペ最大のライバルになるのは12チリンドリだろう。両モデルともフロントミッドシップにV12エンジンを搭載するスポーツカーだからだ。

ヴァンキッシュが搭載する5.2L ツインターボV12エンジンの最高出力は835PS、最大トルクは1,000Nm。アストンマーティンの量産モデルで史上最速となる最高速度345km/hを達成している。

一方、12チリンドリが搭載するのは6.5Lの自然吸気V12エンジンで最高出力は830PS、最大トルクは678Nm。最高速度は340km/hとなる。

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    ヴァンキッシュのリアは迫力満点で存在感抜群

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    7つのライトで点灯するテールライトはかなり特徴的だ。ウインカーは上4つが点灯する

ボディサイズはヴァンキッシュ クーペが4,850mm、全幅1,980mm、全高1,290mm。前後の重量配分が51:49、価格は5,290万円(オープン仕様のヴォランテは5,720万円)だ。

12チリンドリのボディサイズは全長4,733mm、全幅2,176mm、全高1,292mm。前後の重量配分が48.4:51.6、価格は5,674万円となっている。

まったく別の車種ではあるが、エンジンの搭載位置やサイズなどが非常に近く、V12エンジンを搭載する5,000万円台のスポーツカーという点も同じだ。ヴァンキッシュ最大のライバルといえるだろう。

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    ラゲッジスペースはかなり小さいが、荷物を載せられるだけマシともいえる

優雅なクルージングにこそ最適?

試乗車の車内には、コーポレートカラーでもあるグリーンのレザーがふんだんに使われていて、ラグジュアリーな雰囲気が漂っていた。エンジンを始動すると、新設計のV12エンジンが勇ましく吹け上がる。

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    濃いグリーンのレザーがラグジュアリー感を一層引き立てている

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    着座位置は低いが居住空間は思っていた以上に広い

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    メーターは見やすいものの、ドライブモードを変えても色味やレイアウトなどは変化しない

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    物理ボタンで直感的に操作できるのはありがたい

シフトを「D」にしてブレーキペダルから足を離しただけで、かなりの勢いで前に進むことには驚いた。もちろん、アクセルを踏み込めばとてつもない加速力を体験できるのは言うまでもない。

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    運転席からの視界は悪くない。左ハンドル仕様だが右側方も見やすかった

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    パノラミック・ガラスルーフのおかげで車内の開放感は抜群。ただ、開閉はできない

路面のつなぎ目やマンホールなどの段差を乗り越えても、路面からの突き上げ感は思ったほどではなかった。もちろん、乗り心地としてはかなり硬い方だが、前に試乗した「ヴァンテージ」の方がむしろ“ガチガチ”だった。

  • アストンマーティン「ヴァンテージ」

    レースシーンを想起させる硬めのブレーキやクイックなハンドリングが印象に残っている「ヴァンテージ」

ヴァンキッシュ クーペは、どちらかというと「DB12」に近い乗り心地で、ゆったりとした気分で運転できる。シートがほどよくカラダをホールドしてくれるため、高速旋回でも急カーブでも安定していた。

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    乗り降りの際にドアが上方向へ開く「スワンウイング」はアストンマーティンではおなじみ。非常に長く重たいドアでも軽々と開閉できる

2シーターだが全長が長く、座席の空間が広く取られている。長時間乗車していても疲労感が少ないはずだ。尖った走りばかりが強調されるモデルかもしれないが、優雅なクルージングにも適している。そんな印象を受けた。

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    内装のカラーはグリーンのほかレッド、ライトブルー、ブラウン、オレンジ、パープルなども選べる

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    シート後方に座席はないが、トートバッグやジャケットなどを置いておくにはちょうどいい

V12復権の前兆か?

トヨタ自動車のフラッグシップサルーン「センチュリー」もかつてはV12エンジンを搭載していたが、現行モデルになってV8エンジンに変わった。

  • トヨタ「センチュリー」

    かつて、日本車唯一のV12エンジン搭載車だったトヨタ「センチュリー」。現行モデルはハイブリッド専用の5.0L V8エンジンとなる

センチュリーの例にならって、V12エンジン搭載モデルは徐々に姿を消していくのかと思っていたところに、フェラーリが「12気筒」をモデル名にした「12チリンドリ」(チリンドリはシリンダーのこと)を発表し、そのすぐあとにアストンマーティンがV12エンジンを新設計したヴァンキッシュを発表した。この流れ、自動車業界におけるV12エンジン復活の前兆か? と話題になったのも確かだ。

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    試乗車はアルミナイトシルバーをまとっていたが、シルバー系だけでも14色から選べる。そのほかブラック系やブルー系、グリーン系、レッド系など豊富なボディカラーが用意されている

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    あえてブロンズカラーのホイールを合わせることで特別感を演出。サイドに「ASTON MARTIN V12」の文字が映える

  • アストンマーティン「ヴァンキッシュ クーペ」

    ブランドのバラ文字が入るシールドはマットなカーボン素材「四つ綾織りサテンカーボンファイバー」を採用していたが、好みに応じてボディカラーと同色にしたり、艶のあるグロスブラックにしたりすることも可能だ

かつてのフラッグシップクーペ「DBS V12」は映画『007 カジノ・ロワイヤル』の「ボンドカー」(ジェームズ・ボンドが乗るクルマ)としてお披露目されたと同時に、映画公開後の市販が発表された。今回のヴァンキッシュ クーペ(あるいはヴォランテ)も、まだ決定していない次期ボンド俳優の愛車になるかもしれない。そこも含めて、V12エンジンの動向に注目していきたい。

【フォトギャラリー】ヴァンキッシュクーペ


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。