東京大学在学中に友人とスタートアップを立ち上げ、現在はGMO Flatt Securityで執行役員CCO(チーフクリエイティブオフィサー)を務める豊田恵二郎さんは古いクルマの愛好家だ。プライベートでは3台の旧車を所有。「現代のクルマにはない造形美が好き」と話す豊田さんに旧車の魅力を聞いた。
初めての愛車はマツダのRX-7 - 24歳で購入
豊田さんが初めてクルマを購入したのは、大学を卒業する直前。コロナ禍の影響で、一人暮らしをしていた都内から神奈川県横浜市の実家に戻ったことがきっかけだった。家賃の支払いが減ったため、「自分のクルマを持ちたい」と考えるようになったという。
「もともと運転は好きだったのでレンタカーでドライブは頻繁にしていましたが、古いクルマが特別に好きというわけではありませんでした。しかし、外出制限もあり、時間の余裕があったので、カーセンサーを眺めたり、漫画『頭文字D』を読み返したりしているうちに、旧車の魅力に気づいたんです。安全基準をはじめとして昔のクルマは制約が少なく、デザインに伸びやかさがある。そこに作り手の意志を感じました」
緊急事態宣言が明けると、すぐに中古車店を回り、24歳のときに1988年式のマツダ「サバンナRX-7」を250万円で購入した。
「購入したのは2020年、大学を卒業したばかりのころです。ローンは組みましたが、スネかじりで家賃が少ない状態だったので、負担は感じませんでした(笑)。しかし結果的に、このクルマの相場は購入から5年で50万円~100万円ほど値上がりしていると感じてます。あくまで投資じゃなくて趣味ですが、いつかは手放すかもしれないのでリセールバリューがあるのはありがたいですね」
旧車を通じて豊田さんは、「リスクを理解し、制御しながら楽しむ」感覚を身につけたという。
「古いクルマは高性能な電子制御もなく、タイヤも薄くて安定感に欠ける。でも、シンプルな作りな分、特性を理解しやすいし、愛着もわきます」
愛車を韓国に送ってドライブ!
マツダ「サバンナRX-7」との思い出のひとつが、釜山からソウルへと韓国を縦断したドライブだ。
「SNSで、愛車を船便で海外に送って現地で走らせている人を見たんです。自分も挑戦してみたいと思い、愛車で韓国に行くことを決めました」
思い立ってから出発までには、煩雑な手続きが待っていた。陸運局に必要書類を提出するのだが、海外へクルマを持ち出すケースはほとんどない。
「僕の場合は練馬の陸運局で申請しましたが、担当者も『こんな申請は初めて』という反応でした(笑)。奥からマニュアルを取り出して確認しながら進めていて、何度か不備を指摘されて往復しました。窓口は平日しか開いていないので、仕事の合間に行くのが大変でしたね」
それでも書類を整え、ようやく出発。日本から韓国・釜山へ渡って国を縦断し、ソウルの街にクルマをとめたとき、豊田さんを迎えたのは予想以上の反応だった。
「本当にたくさんの人が集まってきて、写真を撮られたり、動画を撮ってもらったりしました。韓国人の友人いわく、韓国は戦前からクルマづくりをしていたメーカーがなく歴史が浅い。街を走るクルマはセダンが多く、SUVブームは訪れていない一方で、旧車を見かけることもほとんどありませんでした。 その分、サバンナRX-7を見ると現地の人がすごく興奮してくれました。SNSで拡散されて、そこから知り合ったクルマ好きの友人とは今でも連絡を取っています」
念願のアルピーヌV6ターボを昨年購入 - 日本限定50台
2023年には2台目として1996年式のビュイック「リーガルワゴン」を購入した。RX-7よりも実用性を考慮し、最大8人が乗れて荷室も広いクルマを選んだ。海がよく似合うアメリカンなデザインと1980~90年代の雰囲気が気に入っているという。
2025年には、3台目となる1991年式のルノー「アルピーヌ V6ターボ Le Mans」を購入。「Le Mans」仕様は日本では50台限定で販売された貴重な個体だ
「購入の1年前にカーセンサーで見つけたのですが、金額が高くためらっているうちに売れてしまいました。そのことがずっと心に残っていて……。そしたら1年後、カーセンサーで別の個体を見つけたんです。同じ後悔はしたくなかったので、見つけた次の週末に販売店のある福岡県まで行き、その場で購入を即決しました」
納車されたクルマは美しいが、扱いは難しい。いわゆる重ステを力いっぱい操作する必要がある。真夏はエンジンが熱を持ちすぎて昼間は乗れず、夜しか走れない。
「日本の気候では冷却が追いつかないんです。クーラーも付いていません。でも、不便さを含めて愛おしいと思えます」
現在、豊田さんは3台のクルマをすべて手元に置いている。手間も費用もかかるが、それをいとわない理由がある。
「物の扱い方には人の姿勢が出ます。すぐに乗り換えるより、ひとつひとつのクルマを長く大事に使いたい。簡単に手放さないことが仕事のスタンスにもつながっていると思います」








