ハイブリッド車といえば燃費のよさが魅力……なのだが、それだけではない。エンジンと電気を組み合わせた走りは、作り手によるのかもしれないが、かなり爽快で楽しいのだ。ルノーの改良版「ルーテシア」に乗って、そんな当たり前なことを再認識した。このクルマ、「ハイブリッドのホットハッチ」といった感じのキャラである。
デザイン変更でどうなった?
ルノーは小型車「ルーテシア」のマイナーチェンジモデルを10月9日に日本で発売した。グレードは「エスプリ アルピーヌ フルハイブリッド E-TECH」の1種類のみで価格は399万円。マイチェン前にはターボエンジン搭載モデルもラインアップしていたが、これを機に(フル)ハイブリッド1本に絞った格好だ。
念のために付け加えておくと、ルノーはルーテシア(本国フランスでの車名はクリオ)の新型(フルモデルチェンジした6世代目)を発表済みだが、今回の改良版は従来から売られていた5世代目のマイナーチェンジモデルだ。
マイナーチェンジで大きく変わったのはデザインだ。写真で比べると違いがよくわかる。
フロントのデザイン変更によりシャープかつ先進的な雰囲気が増している。
内装ではセンターディスプレイが大型化。ルノー・ジャポンに聞くと、新しくなったシートの完成度にも自信ありげな様子だ。実際に座ってみるとパリッとしていて、必要以上には体が沈み込まず、長く座っても疲れが少なそうな感触だった。
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こちらはマイナーチェンジ後のインパネ。中央のディスプレイはスマートフォン用ミラーリング機能が付いた9.3インチマルチメディア EASY LINK 縦型タッチスクリーンを新たに採用。ナビが付いていないので、試乗の際は「Android Auto」を使った
小さくて速くて面白い
パワートレインはルノーがF1で培ったノウハウを活用して独自に開発したハイブリッドシステム「E-TECH」だ。1.6Lの4気筒自然吸気エンジンに、メインモーターの「E-モーター」と「HSG」(ハイボルテージスターター&ジェネレーター)の2つのモーターを組み合わせる。これらをつなぐトランスミッションは電子制御ドッグクラッチマルチモードATだ。
走り方としては、発進時はエンジンを使用せず、モーターのみで駆動するため出足がいい。中速域ではモーターとエンジンを最適に組み合わせ、素早いレスポンスと息の長い加速を実現。高速域の巡行時には効率の高いエンジンを積極的に使い、追越しなど強く加速する際にはモーターがアシストする。
このシステム、どんな速度域で運転していても動きが俊敏だ。一般道の車線変更は思った通りに決まるし、高速道路で少し踏み込んでみたら、カッコいいエンジン音と共に力強い加速を見せてくれる。ハイブリッド車にしては軽い車両重量1,300kgにシステム最高出力143PS(改良前に比べ3PS増)のパワートレインを搭載していることが、小さくて速くて面白い小型ハッチバック車というキャラを生み出しているらしい。
燃費はWLTCモードで25.4km/Lとのこと。今回、ルノー・ジャポンのある横浜から矢那川ダム(千葉県木更津市)までの約50kmを走ってみた結果、メーターにはこんな数値が表示されていた。
フランス車の特徴なのか、燃費は「100kmを走るのにガソリンを何リッター消費するか」という表示になっているが、その数値が4となっている。4リッターで100kmを走れるとすれば25km/L。看板に偽りなし、という感じだ。ほぼ高速道路を走った結果ではあるものの、燃費がいいのは間違いなさそうである。
本場フランスで買うより割安?
ルーテシアは単一グレードで399万円。国産の小型ハイブリッド車は「よりどりみどり」な日本にあって、ルーテシアの価格はちょっと高いと感じてしまうかもしない。それでも、欧州での売価に比べれば安く感じてもらえるはず、というのがルノー・ジャポンの言い分だ。こちらのスライドをご覧いただきたい。
欧州で売っているクリオに為替のかけ算をして、そこに船賃を乗っければ、もっと高くなってもおかしくない、という説明だ。実際、399万円というのは、けっこう利益を削っているのかも? 意志を持って付けた戦略的な価格設定であることが伝わってくる。
ルノーのフルハイブリッド車には小型SUVの「キャプチャー」があり、それより大きなSUVの「アルカナ」もあるので、ファミリー層やたくさん荷物を積みたい人にとって、ルーテシアは最適な選択肢ではないかもしれない。ただ、小さくてよく走る「ホットハッチ」的なクルマが好きで、輸入車の上質さを感じたくて、人とはあまりかぶらない1台を探している人にとってみれば、ルーテシアはバッチリはまる可能性があると思う。




























