早い段階で「クルマの電動化」を打ち出しつつも、世界的な情勢の変化もあり、電気自動車(BEV)の戦略については紆余曲折のあるホンダ。先ごろ発売した軽BEV「N-ONE e:」には、どんな思いを込めたのだろうか。開発陣に聞いた。
ナビ不要派は意外に多い?
N-ONE e:の開発コンセプトやターゲットユーザーについて教えてくれたのは、四輪開発本部 完成車開発統括部 開発責任者の高橋浩二さんだ。
このクルマの開発では、何気ない毎日をイキイキと活発にしてくれる「e:デイリーパートナー」というグランドコンセプトを掲げた。ベースとなった軽自動車(内燃機関搭載車=ICE)の「N-ONE」と、その原点となった過去の名車「N360」が持っていた、個性的で愛着が湧くデザインと室内空間の広さをいかしながらEV化することで、身軽に気軽に出かけられる軽BEVに仕上げた、とのことだ。
ターゲットユーザーは、日々の買い物や通勤といった短距離移動が中心で、最適な機能でシンプルな使い勝手を求め、コストパフォーマンスも重視する40代~50代の女性(+20代の女性)だという。
エクステリアでは、ホンダの軽自動車「Nシリーズ」のヘリテージとEVのクリーンさを表現。「いつも同じ道を通るので、“墓石”のような大きくて四角いナビはいらない」というユーザーの声を反映し、ディスプレイレスのシンプルなインテリアを持つ「e: G」グレードも用意した。「ナビ(ディスプレイ)はなくても、スマホをつなげて音楽は聴きたい」という声には、bluetoothオーディオを内蔵することで対応。音楽を聴きながら家を出て、クルマに乗ったら自動でスマホとクルマがつながって音楽がシームレスで流れ出し、クルマから降りてワイヤレスイヤホンを装着すると、そのままスマホで再生が続けられる、という機能を採用したという。
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ディスプレイレスのシンプルさが自慢のe: Gグレードのインテリア。再生可能な植物由来原料を使用したダッシュボード、無染色表皮のシート、ホンダの作業着を再利用したカーペットを使用するなど環境への配慮も欠かしていない
誰にでも操作しやすいシングルペダルコントロールとは
N-ONE e:の走行性能については、四輪開発本部の渡邊伸一郎チーフエンジニアが答えてくれた。
ターゲットに定めた40代~50代の女性(+20代の女性)が運転することを考えて、加速感は不安にならないレベルに調整。交差点で曲がる際にハンドルの持ち替えが少なくなるよう、ステアリングはクイックな設定とした。静粛性に関しては、路面が変わることで変動する音の量や質をなるべく少なくすることで、EVらしい静かさを実現したそうだ。
これまでに発表したBEVはなかなか台数が伸びず、「BEVの後発組」と言われることもあるホンダだが、技術はしっかりと磨き続けてきたという。技術開発の成果が最もよく現れているのが、「シングルペダルコントロール」の部分だ。女性にシングルペダルで乗ってもらうと、アクセルとブレーキのペダル踏み替えで見られるギクシャクした感じがなくなり、運転が上手くなったように感じる、という声が多かったという。
シングルペダルのチューニングは「かなり突き詰めた」という。具体例のひとつとしては、加速と減速の間にある“ゼロまたぎ”と呼ぶポイントをペダルのかなり奥に設定したそうだ。シートの前に座ることが多くて足首が柔らかい女性や、逆に足首が硬くなった高齢者でも上手にスピードをコントロールできるよう、減速時の動作量を増やした。
ライバルのN社の軽BEVは、アクセルペダルを完全に戻しても最後はクリープになるので、停止させるにはブレーキペダルを踏む必要がある。これを試した結果として、「やっぱり、アクセルペダルだけで止まれる方がシンプルでいいよね」という結論になり、完全停止までできる「シングルペダルコントロール」を採用することにしたそうだ。
BEV購入のネックは充電環境、ホンダの対応は?
BEVの充電環境について話を聞いたのは、ホンダセールスオペレーションジャパン 充電ネットワーク課の中西正明チーフだ。
今回は給電用のAC外部給電器や、一般家庭で使用可能な200V普通充電器「Honda EV Charger」(22.22万円、工事費別途)を純正品として発売したほか、店舗用の充電ネットワークサービス「Honda Charge」(出力50kW)の設置・提供を9月12日から始めたという。スマホに「Honda Charge」アプリを入れてユーザー登録しておけば、店舗検索や予約取り置き(60分間まで)が行える。N-ONE e:の試乗を兼ねて、チャージャーが設置してある「Honda Cars横浜 都筑中央店」に向かってみた。
充電スペースの中央には入庫をコントロールする黄色いスマートバリアがあり、それが倒れていることを確認してケーブルをつなぐのだが、高速SAのようにそのスペース面が緑色に塗られるなどの識別がなされておらず、充電器も真っ黒に塗られているのでちょっとわかりにくいな、というのが素直な印象だ。
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スマホに「Honda Charge」アプリを入れてユーザー登録しておけば、店舗検索や予約取り置き(60分間)が行える。ホンダセールスオペレーションジャパン充電ネットワーク課の中西正明チーフ(写真)とともに、チャージャーが設置してある「Honda Cars横浜 都筑中央店」で充電を試した
一方で、プラグを差し込むだけで自動でユーザー認証、充電が始まり、決済まで完了する「プラグアンドチャージ」システムなので、カードやスマホでの認証操作が不要なのは便利だ。こちらはディーラーだけでなく、全国の商業施設などを中心に2030年までに数千口規模に拡大する計画だという。ただし、現時点での対応車種はN-ONE e:のみ。中西氏によると、費用対効果という意味でも、日産のようにディーラーに行けばどこでも急速充電できるというところまで到達するには、かなり時間がかかりそう、とのことだった。





































