ホンダがコンパクトSUV「ヴェゼル」に新グレードの「e:HEV RS」を追加して発売する。ヴェゼルRSの特徴は一言でいうと、立体駐車場に入れられること。標準モデルで1,590mmの全高を1,545mmまで低くしてある。ただ、全高低下による恩恵はそれだけではない。
ヴェゼルの選択肢がさらに充実
ヴェゼルはホンダが2013年12月に発売したコンパクトな都市型SUV。現行型は2021年4月にフルモデルチェンジして登場し、2024年4月にマイナーチェンジを経た2世代目だ。
ガソリンとハイブリッド(e:HEV)、2輪駆動(FF)と4輪駆動(4WD)、アーバンな雰囲気を強めた「PLaYパッケージ」、アクティブ系の「HuNTパッケージ」など、さまざまなバリエーションをそろえる間口の広さがヴェゼルの魅力。今回のRS追加で選択肢はさらに充実した。
先代モデルのRSには設定のなかった4輪駆動も、今回は選べるようになっている。新型ヴェゼルRSの価格はFFが374.88万円、4WDが396.88万円だ。
全高45mm低減! どうやった?
クルマの取材をしていると、よく目にするのが「1,550」という数字だ。世の中の立体駐車場は多くが「1,550mm」の高さ制限を設けているため、クルマを作る側としては、(もちろんクルマの種類によるが)全高1,550mmを意識している、との話をよく聞く。
ヴェゼルの販売比率で約7割を占めるという「e:HEV Z」というグレードは全高が1,590mm。RSは1,545mmで、まさに1,550mm切りを達成している。どうやって低くしたのだろうか。
ホンダが取った手法は2つある。まず、「シャークフィンアンテナ」を取り外した。
ラジオを受信するアンテナはサメの背びれのような形をした「シャークフィンアンテナ」が一般的だが、ヴェゼルRSではリアガラスにラジオのアンテナを「印刷」する「ガラスプリントアンテナ」という手法を採用。この手法、シャークフィンアンテナを屋根に乗っけるよりもコストはかさむそうだが、「30mm」の全高低下に寄与している。
ちなみに、ガラスプリントアンテナはホンダの新型「プレリュード」も使っている手法で、聞くとかなり先進的な感じがするのだが、意外にも昔からある技術なのだという。
残りの「15mm」はサスペンションで低くした。ヴェゼルRSは専用の「ローダウンサスペンション」を採用。スプリングの高さを15mm低くし、ダンパーの特性を調整したサスペンションを使っている。
ところで、実際のところ、クルマを選ぶうえで「立体駐車場に入るかどうか(全高が1,550mm以下であるかどうか)」を重視する人は、そんなにいるものなのだろうか?
ヴェゼル開発責任者の磯貝尚弘さんに聞くと、「潜在的には昔から(需要が)あるんですけど、データを取ってみると、それほど多くないんです」とのこと。立体駐車場に入るサイズのSUVを購入した人に「立体駐車場に入ること」が購入の決め手だったかを聞いた調査に対して、「そうだった」と答えた人は全国的に見ると1割くらいで、都市部(東名阪)でも多少は割合が上るくらいだったそうだ。
とはいえ、都市部で駐車場を探す際には全高1,550mm以下だと助かる場合があるし、マンションに付属する機械式駐車場にも高さ制限があると聞くので、ヴェゼルRSの全高が嬉しいという人は少なからず存在するはず。「全高1,550mm以下」がクルマ選びの絶対的な条件になることは少なくても、「そうだったら、けっこう嬉しい」という条件になっていることは間違いなさそうだ。
全高低下で意外な恩恵も?
全高低下の恩恵は「駐車場問題の解決」だけではない。クルマとしては、低さを追求することで「走る愉しさ」を実現できたそうだ。
具体的には、全高を低くすることで「安定感が増している」(磯貝さん)という。RSでは電動パワーステアリングの設定を変えていることもあり、より意のままに操れる走りが実現できた、とのことだった。
全高低下により空力が改善し、走行中の風の抵抗を受けにくくなったことで、「e:HEV Z」に比べると、RSは燃費が少し(0.1km/L)向上している。これもRSならではの恩恵だ。
ちなみに、ホンダの「RS」は「ロード・セーリング」の頭文字で、「レーシング」とか「スポーツ」などの略ではない。なのでヴェゼルRSも、スポーツカーのように「ガチガチ」な乗り味にはなっておらず、「日常の中で扱いやすいスポーティーさ」を狙ったと磯貝さんは話していた。
そして何より、低く構えたクルマは概してカッコいい、というところがある。クルマの理想的なスタイルを表す言葉に「ワイド&ロー」というのがあるくらいだから、全高低下は外観の面でもプラスの効果があるはずだ。










































