2025年7月の参議院選挙や自民党の総裁選で、ガソリンの暫定税率が話題となりました。もし暫定税率が廃止になると、家計にどのくらいのプラスの影響が出るのでしょうか。この記事ではガソリン暫定税率の意味、廃止になった場合のシミュレーション結果を解説します。
ガソリンの暫定税率とは?
まずは、そもそもガソリンの暫定税率とは何なのかを解説します。
ガソリン税とは
ガソリン税には2つあり、揮発油税(1キロリットルあたり2万4,300円)、地方揮発油税(1キロリットルあたり4,400円)で構成されています。
これらのガソリン税は、道路整備の財源に使用される目的で設定されました。
暫定税率とは、本来の税率に上乗せされている分のこと
ガソリン税には本則税率がありますが、さらに上乗せされた臨時の税金があります。それがガソリンの暫定税率であり、1974年に道路財源の不足を理由に設けられました。
本則税率は1リットルあたり28.7円、暫定税率は25.1円で、現在のガソリン税は1リットルあたり合計53.8円です。あくまで一時的な税率であったはずですが、暫定税率は50年を経過しても依然として徴収され続けています。
暫定税率の廃止が求められている理由
暫定税率廃止の機運が高まっているのは、主に3つの要因からです。
1つ目はガソリン価格の高騰で、世界的な原油価格の上昇や円安が続いたことから、ガソリン代が高止まりしています。
高い税金も加わり、家計や物流への負担がさらに大きくなります。特に地方は車社会であり、影響は深刻です。
2つ目の理由は、「暫定」といわれながら、実質的に恒久化してしまっていることです。50年以上も延長されているため、いつまで続くのか不満を感じる人が多くいます。
3つ目の理由は、二重課税のような構造になっていること。ガソリン税には消費税がさらにかかるため、「税金に税金がかかる」構造であり、二重課税で不公平という批判があります。
暫定税率が廃止された場合のシミュレーション
暫定税率がもし廃止になったら、どの程度の節約になるのかを計算してみました。都市部に住んでいる方の場合と、地方に住んでいる方の場合に分けています。
都市部在住の場合
都市部で車をときどき使うケースを想定し、以下の条件でシミュレーションをしてみました。
月間走行距離:250km
平均燃費:23.9km/L
基準ガソリン小売価格:167円/L
廃止対象税額:25.1円/L
この場合、1カ月あたり約263円がお得になり、年間で見ると約3,156円の節約効果となります。都市部で車を時々使う程度の方には、暫定税率廃止のインパクトはそれほど大きくないといえます。
地方在住の場合
車社会である地方で、毎日車を使う場合を想定し、以下の条件でシミュレーションをしました。
月間走行距離:1,000km
平均燃費:23.9km/L
基準ガソリン小売価格:167円/L
廃止対象税額:25.1円/L
こちらのケースでは、1カ月あたり約1,046円、年間では約1万2,552円の節約効果が生まれます。地方で毎日車を利用する方にとっては、年間1万円を超える節約となり、都市部利用者の約4倍の恩恵を受ける計算です。
地方では、燃料費は家計支出で少なくない割合を占めるため、この節約は実質的な所得増加として機能し、家計の維持に貢献します。この減税措置は、ガソリン価格高騰に悩む地方に対する明確な経済的支援策となり、地方の消費マインド改善、さらには地域経済への刺激策として機能する可能性もあります。
さらに、仮に燃費が15km/Lの低効率の車両を想定した場合、月間節約額は約1,673円に上昇します。低燃費車への買い替えが進んでいない地方の低所得層ほど、この税率廃止の恩恵を大きく受ける可能性があり、地域間の経済格差是正に寄与する側面もあるといえます。
今後の注目ポイント
ガソリン暫定税率廃止が実現するかどうか今後が注目されますが、まずは、年末に発表される税制改正大綱(年末)がひとつの鍵になります。これは、翌年以降の国の税制の方針をまとめたものであり、暫定税率をどう扱うかに関しても、この資料により方向性が明らかになるためです。
また、世論やメディアの反応も引き続き重要です。国民がどれだけこの議論に関心を持ち続け、声を上げるかも、政策実現の後押しになるでしょう。


