トランプ関税、米中対立、円安・インフレ、株・商品市場……混乱する世界をどう読み、何に投資するべきか?
世界的投資家のジム・ロジャーズ氏にロングインタビューを敢行し、最新予測をまとめた『世界大激変 混乱する世界をどう読むか』(ジム・ロジャーズ著/花輪 陽子監修/アレックス・南レッドヘッド監修/東洋経済新報社)から一部を抜粋してご紹介します。
今回のテーマは『キャリア形成は従来の常識が通用しなくなる』。
キャリア形成は従来の常識が通用しなくなる
少子化対策以外にも、日本の場合、高度な人材を育成するための予算を増やすべきだろう。例えば、海外留学の全額支援を行う日本人学生の数をもっと増やしてもよいだろう。
私がアメリカにいた80年代には、日本からの留学生は本当に多かった。その当時、アジアからの留学生と言えば、圧倒的に日本からの留学生だった。そのことは、確実に日本という国の競争力の源泉となった。
これからは、AIなどテクノロジーの進化によって、社会は大きく変わっていく。それによって、社会に必要とされる人材にも変化が出てくるだろう。いま、アメリカでは、エンジニアを目指すより、医師や弁護士、ビジネスの世界では投資銀行家を目指す若者が多くなっている。日本も同じような傾向だと聞いている。
先に、中国は毎年、アメリカの10倍もの数のエンジニアを輩出しているという話をしたが、本当の意味で国家の盛衰を左右するのは、エンジニアの力によるところが大きい。ところが、エンジニアよりも医師や弁護士になったほうが目先の収入が多いので、優秀なエンジニアになれる才能があっても、医師や弁護士の道へと進んでしまう。
以前から指摘していることだが、これからの時代は、農業でも工業でも、物をつくれる人材が魅力となる。世界中で借金が増えており、競争が激化するにつれ、金融などは以前ほど魅力ある産業とはならなくなる。弁護士という仕事もAIが進化すれば、以前ほどの存在価値はなくなるだろう。今後は、再び物をつくれる産業が伸びていく。もし金融や法律の仕事に情熱があれば、それを仕事にすべきだが、農業や製造業の方が長い目で見れば、よいキャリアになると思う。
私は日本の農業に魅力を感じていて、大きな期待を寄せている。野菜でも果物でも、加工食品でも日本のものはとても美味しく、世界的に見ても高い競争力をもっている。事実、日本のリンゴやぶどうがアジアやヨーロッパの高級食料品店で、高価な値段で売られている。それでも売れるということは他にはない魅力があるということにほかならない。
日本の農家には、他の国の人たちにはできない高付加価値な農産物をつくる技術がある。日本では当たり前で、その価値に気づいていないのかもしれないが、世界は気がつき始めている。先に、海外からお金が入ってくることで、日本の不動産価格が高騰している話をしたが、同じことが農業の世界で起こっても不思議ではない。日本の農業がグローバルな競争に巻き込まれることになれば、日本の農産物や食品は高騰していくことだろう。
もちろん、すべての農産物や食品がそうなるわけではないが、いま日本の人たちが魅力的だと感じているものは、ほとんどが値上がりしてしまう。日本の人が高すぎて買える値段でないと思っても、それが安いと感じる海外の人たちがマーケットに参入してくるからだ。
いま日本では、主食であるお米の価格が高騰していて、大きな社会問題になっていると聞く。日本のみなさんは国内問題だと軽く考えているかもしれないが、食品や農産物の高騰は世界的な潮流となっていることを認識すべきだ。その波が日本に及んでも不思議なことではない。
『世界大激変 混乱する世界をどう読むか』(ジム・ロジャーズ著/花輪 陽子監修/アレックス・南レッドヘッド監修/東洋経済新報社)
トランプ関税、米中対立、円安・インフレ、株・商品市場……混乱する世界をどう読み、何に投資するべきか。世界的投資家にロングインタビュー、緊急出版!【本書の主な内容】トランプ関税が今後の国際社会に与える影響/空前のバブル相場の終わりはハードランディングしなない/「コモディティ・スーパーサイクル」の時代が到来する/金や銀を買うタイミングに遅すぎるということはない/アメリカが覇権の座を降りたとき、世界はどう変わるのか/中国はロシアと組んで強固なエネルギー安全保障を実現/投資先として注目するのは、ウズベキスタンとサウジアラビア/キャリア形成は従来の常識が通用しなくなる /移民政策を進めるには厳格な審査基準を設けるべき/投資で成功するために毎日続けるべきシンプルな習慣


