2025年10月5日、大阪・関西万博 EXPOホール シャインハットで、若手料理人の登竜門「RED U-35 2025」の最終ステージと授賞式が開催された。料理界のオリンピックと称される熱気の中、食の未来がここから発信されるという強いメッセージが込められていた。
2013年に始まったRED U-35、2025年には511名の応募があった。今年のテーマは「日本から世界へ~ EARTH FOODS 25」で、麹やわさびなど日本発の食材を使ったメニューが提案された。この大会は調理技術だけでなく、社会課題への向き合い方や食を通じた発信力も問われる。
一次から三次審査を経て「シルバーエッグplus」9名が選出され、10月4日の最終審査(試食審査)で「ゴールドエッグ」5名が選ばれ、この日の最終ステージに臨んだ。
最終ステージでは、「食べるって何?」をテーマに、各自7分間のプレゼンテーションを披露し、会場を盛り上げた。
5名のファイナリストが語る「食べる」とは
最年少でありながらトップバッターを堂々と務めた佐藤氏は、観客を巻き込む授業形式でプレゼンテーションを行った。「作る人、食べる人、そして食べてもらう人、みんなが幸せになる。料理人という仕事を通じて、様々な幸せを提供したい」と、語った。
また、食べる喜びだけでなく、いつか誰かに食べてもらう喜びも知ってほしいと、子供たちへの願いを語りかけた。「今日食べ終わった時に、ごちそうさまに加えてありがとう!」と、伝えて欲しいと宿題を投げかけ、食への感謝で締めた。
太鼓がセットされたステージに登場した須藤氏は、「食べるって何?」をピラミッドで表現。食が持つ意味を、生存本能から始まり、感覚的な満足、社会性、記憶、そして歴史・文化・伝統へと繋がり、「誇り・祈り」に至る深遠なものとして提示した。
新潟県佐渡島出身で、現地でレストランを経営する須藤氏は、伝統食文化の継承が危機に瀕している現状にも言及。長期の塩蔵と発酵が必要なフグの卵巣の粕漬けを作る職人がごく少数であると語り、自身がゴールドエッグに選ばれた際には、その賞金を佐渡に滞在し、伝統食、歴史、そして自然を学ぶ「島留学」に充てたいと述べた。プレゼンテーションの締めくくりは、太鼓演舞による臨場感あふれるもので、聴衆に強い印象を残した。
フリーランスのフードクリエイターである丸山氏は、伝統や地域食材に新たな価値を見出し、商品開発を行っている。これまでに抹茶ラーメンや、なまり節をベーコンに見立てたトマトソースパスタなど、食材の新たな可能性を提案してきた。
大学生時代に生産者を訪ね歩いた経験から、「料理が作れるようになれば、食材の魅力をより強く伝えられる」と、料理人の道を志す。作り手の想いや食材の背景を大切にする姿勢は、フードクリエイターならではの視点と言えるのではないだろうか。フードクリエイターが最終審査に進出するのは今回が初めてという点も特筆すべきだ。
中国料理の焼物師である向田氏は、トマトを携えて会場に登場。動画を流しながら、人間だけが記憶と体験を楽しめるのだと語りかけた。
審査員の小林寛司氏に慣行栽培と無農薬栽培のトマトを食べ比べてもらい、感想を求めた。見た目には同じトマトでも、産地や生産者が同じであっても栽培方法が味に明確な影響を与えることを提示。向田氏は、値段や見た目だけでなく、生産背景や作り手に焦点を当てることの重要性を強調した。12年間中国料理に情熱を注いできた向田氏の「料理が好きだから」という純粋な想いは、聴衆の心に深く響いたのではないだろうか。
大会史上初めて海外出身の出場者としてファイナリストに残ったイ・ジョンジュン氏。軽妙なショートコントのような語り口でプレゼンテーションを始め、AIとの対話を通して「食べる」という行為を多角的に考察した。その結果、「食べることは文化の中でも最も生活に近く、最前線にあるもの」と結論付けた。
真面目な要旨にユーモアを巧みに織り交ぜることで、観客は楽しみながら彼の話に耳を傾けていた。「今日食事をするときに、食べるとは何かを考えてみてほしい」という問いかけで締めくくられた。
審査員からの鋭い質問にも堂々と応じるファイナリスト
5人のプレゼンテーション後、審査員からの質疑応答の時間があり、その内容から印象に残った部分を抜粋して紹介する。
「AIがレシピを設計し、ロボットが調理する未来において人間の料理人が不可欠か」という問いに対し、佐藤氏は「AIが作る料理は数字だけの料理。その日の気温や体調によって味覚が変わる。AIが逐一確認するのは不可能では?人間の舌ができる料理だと思う」と、強調した。
「気候変動や食糧危機といった深刻な課題に対し、限られた資源で最高を引き出すべきか、代替素材で未来を感じさせるべきか」という問いには、イ・ジョンジュン氏と丸山氏がそれぞれの視点から、食材の代用とおいしさの追求の両面から取り組むことの重要性を語った。
料理人にとって最も大切なものという問いには、須藤氏が「心、感謝」、佐藤氏が「愛」、丸山氏が「美味しさを判断軸にする」、向田氏が「楽しさ」、イ・ジョンジュン氏が「美味しいもの、美味しく食べるもの」と、各々の哲学が凝縮された言葉で答えた。
第12回 RED U-35の栄えあるレッドエッグに輝いたのは須藤良隆氏
RED U-35 2025グランプリ(レッドレッグ)は須藤良隆氏が受賞し、賞金500万円の一部を佐渡ヶ島に寄付し、島留学に活用する意向を示した。準グランプリは丸山千里氏。
特別賞も各方面から贈られた。滝久雄賞は清野佳太氏、岸朝子賞は丸山千里氏、ドリームキッチン賞は福島紗弥氏に授与された。
そして、JALグループがREDとコラボレーションし、機内食監修やNYでのコラボイベントの機会を提供する「グローバルエクスペリエンス賞」には、佐藤歩氏が選ばれた。
「RED U-35」は、単なる料理の技術を競う場ではなく、食を通して社会と向き合い、未来を創造する料理人たちの情熱が凝縮された舞台であった。佐渡島のLa Plageを訪れ、レッドエッグに輝いた須藤氏の一皿を味わってみたいものだ。












