「ストロングハイブリッド」(S:HEV)を搭載したコンパクトSUVのスバル「クロストレック」で東京~大阪を往復するチャンスを得た。これまで、「燃費」はスバルの弱点だったわけだが、ハイブリッド車の登場で状況は変わるのか。ロングドライブでスバル製ハイブリッド車の真の実力を試した。
S:HEV搭載モデル自体には2025年の1月、青森県八甲田山付近で開催された雪道の試乗会で乗っているのだが、その時は青森市内から酸ヶ湯に向かう登り坂を40kmほど走っただけで、じっくりとクルマを吟味するほどでもなかった。しかも、その時に乗ったのは「アプライドB型」と呼ばれた一部改良モデル。今回は安全面でさらなるアップデートが施された「C型」に乗ることができた。
試乗したのは夏休みの喧騒が去った9月初旬。ルートや立ち寄り場所はお任せ、最低でも1,000kmを走ることができるということなので、普段使いに近い形のさまざまなシチュエーションでストロングハイブリッドの走りや燃費を試すことにした。
「アプライドC型」とは?
試乗レポートに入る前に、クロストレックの「アプライドC型」について押さえておこう。
試乗したアプライドC型は「ドライバー異常時対応システム」と「ドライバーモニタリングシステム」の連携が強化された最新のクロストレックだ。ワキ見運転や居眠りなど、ドライバーに異常があると検知した時には早めにドライバーや周囲に注意を促したり、安全に減速したりするシステムが作動するようになっている。また、ボディカラーの見直しが行われていて、先代の「XV」で好評だったデザートカーキに似た「サンドデューン・パール」などが新色として追加されている。
全長4,480mm、全幅1,800mm、全高1,580mm、ホイールベース2,670mmのボディサイズには変更なし。最高出力160PS(118kW)/最大トルク209Nmを発生する2.5L水平対向4気筒エンジンに119.6PS(88kW)/270Nmの駆動用と発電用の2モーターを組み合わせたトヨタTHS由来のハイブリッドシステムも従来通りだ。
奥琵琶湖を経由して大阪へ
試乗したのはストロングハイブリッドの「クロストレック プレミアム S:HEV EX」グレード。ボディカラーは「マグネタイトグレー・メタリック」だ。
午前8時前に東京・恵比寿のスバル本社を出発。燃費運転に徹して大阪までストレートに行く、ということも考えたが、せっかくなので、往路は奥琵琶湖を周るルートを選択した。17時ごろまでには大阪に到着を、という指示があったので、東名や新東名のほぼ全線で「アイサイトX」のACCを制限速度の上限に設定し、どんどんと突き進んでいった。
米原からは琵琶湖東岸に沿って北上。最初に目指したのは、筆者の自宅近くの「cometen国立米店」(お米とそれにまつわる全国の商品を扱っている)のご主人から教わった、長浜市木之本町にある「冨田酒造」さんだ。
当時の面影が残る「うだつ」の上がる町並みが続く北国街道沿いの酒蔵で製造されるのは、北大路魯山人も愛飲したという銘酒「七本槍」で、対応してくれた女将の冨田愛喜さんにおすすめのものを選んでもらった。そして、ここに来た理由を説明していると、「私もスバルに乗っているんです」とおっしゃるではないか。
聞けば、女将の愛車はスバル「XV」で、乗ってきたクロストレックの先代モデル。それまでフランス車に乗っていたのだが、色々あって「ランクル70」乗りのご主人から「そろそろ安全なクルマに乗ったら?」と言われ、選んだのがスバルだったという。「アイサイトはとってもいいですよね」とXVはお気に入りの様子。新型(クロストレック)が優れたシート(仙骨を支える)を採用している点には、大いに注目されていた様子だった。
水平対向エンジンを搭載していることはご存知なかったようで、あのポルシェと同じ重心が低いエンジン形式であり、他の日本車にはない唯一のものであることをお教えすると、スバルへの愛がさらに増加したようだった。それにしても、なんという偶然。だからクルマ旅は楽しい。
北国街道に別れを告げて、次に目指したのはマキノ高原へのアプローチ道としてマキノピクニックランド沿いに整備されたメタセコイアの並木道だ。2km以上にわたってまっすぐ続く並木道を通過中にフロントガラスから見える景色は、まるでヨーロッパのカントリーロードのよう。映画『ドライブ・マイカー』のロケ地にも選ばれている。
一方で、周囲には黄金色に実った田んぼが広がっていて、日本らしい景色が広がる。軽四トラックやコンバインが通る農道の道幅は狭いけれど、ここはクロストレックのコンパクトさをいかして容易に乗り入れることができ、雄大な景色をバックに撮影ができた。
ここに来る途中には奥琵琶湖パークウェイをはじめ、名もなきワインディングが数多くあった。そこでは燃費を気にせず「Sモード」に入れて、大排気量エンジンらしいパワフルな走りを堪能したのはいうまでもない。
最後は、筆者の子供がまだ小さかったころ、キャンプをしによく訪れていたマキノサニービーチの高木浜に向かってみた。久しぶりに行ってみると、水辺の松林にクルマで乗り入れることができるキャンプサイトは30年前とほとんど変わっていなかった。当時のクルマはフォルクスワーゲン「ゴルフVR-6」だったけれど、クロストレックはXモード付きのハイトのあるシンメトリカルAWDなので、ギリギリ砂浜まで降りてもスタックする心配が全くない。30分ほどの撮影許可をいただいた事務所の皆さん、ありがとうございました。
大阪市内までは585kmを走って平均燃費は15.8km/Lと表示されていた。ハイスピードの高速走行&Sモードでのワイディング走行をミックスした割にはなかなかの燃費。それまでのスバル車には望めなかった数字であるともいえる。
それにしても、この日の大阪は暑かった。ホテルの目の前にある淀川沿いの遊歩道を夜歩いてみたのだが、涼しさは全く感じられず汗ダラダラだった。
翌日は大阪~東京一気乗り!
翌日は、近畿地区の新たなスバル販売拠点となる「大阪スバル城東店」をスタート。万博や阪神タイガース優勝で盛り上がる熱い大阪らしく、店舗内には関連するおやつがふんだんに用意されていた。
帰路は大阪環状~京滋道路~名神~新名神~新東名~東名~首都高というルートを、今度もほぼ全線を半自動運転状態で走破。80~100km/hという通常の高速区間では19.5km/L前後、120km/h区間では18.0km/L前後というのが平均燃費としてメーター表示されていた。482kmを走った恵比寿到着時点でのアベレージは18.1km/Lだった。
ACCを使用中に追い越しをする際は、一旦車速が落ちてから一気に加速するので、その時にはエンジンが高回転まで回るラバーバンドフィールが少し気になり、ガソリンも多く消費しているような気がした。ACCの加速レベルをコンフォートやエコにしてやればもう少し好転するだろうし、車速を燃費重視の80km/hあたりまで落としてやれば、他社さんのように20km/Lオーバーという数字が出せたかもしれない。
行きも帰りも、降車時に全く疲れを感じさせなかったのはクルマの出来が良い(特にシート)ことの証明であり、読者の皆様には、ストロングハイブリッドのクロストレックを普通に使えば燃費はこんなところ、という感じが伝わったのではと自負できる楽しいロングドライブだった。































