共働き世帯の増加を背景に、ペアローンや連帯債務を利用する人が増え、35年超の長期ローンの利用も広がっています。こうした動きは購入可能額を押し上げ、不動産価格の上昇にも影響しているといいます。
都市部を中心に今後も価格が上がる可能性がある中、住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFS取締役CMO・塩澤崇氏に、最新の住宅ローン事情とインフレ時代に後悔しないための備え方を伺いました。
ペアローン・超長期ローン拡大で不動産価格はさらに上昇?
――最近の住宅ローンの傾向を教えてください。
いま明らかに増えているのがペアローンです。ご夫婦が連帯債務で借り入れるケースが増え、さらに35年以上の超長期ローンを選ぶ人の割合も右肩上がりになっています。
つまり、二馬力で借り、より長期のローンを組むことで、購入可能額を広げる動きが強まっているのです。50年ローンについては賛否ありますが、今後5年以内に一般的になる可能性は十分あると考えています。
――それによって不動産価格にはどんな影響があるのでしょうか?
一時的な調整はあっても、不動産価格がさらに上がる可能性があります。
ローン期間が長くなれば、その分、月々の返済を抑えながら高額物件を購入できるようになります。35年から50年といった超長期ローンを組む人が増えれば、住宅購入時の予算が拡大し、それが不動産価格の上昇につながります。結果として50年ローンを選ぶ人がさらに増え、不動産価格は押し上げられていく。こうした上昇スパイラルが起きる可能性があると言えるでしょう。
都市部では10年で1.5倍になる可能性も?
――不動産価格は二極化しているとも言われますね。
確かに二極化の傾向はありますが、価格上昇の要因は明確です。インフレ以外では、次の3つの要因が不動産価格を押し上げています。
(1)二馬力で借りる人が増えている
(2)超長期ローンの利用が広がっている
(3)住宅購入層の年収が上がっている
そもそも地方の人口減少エリアでは需要がないため、価格上昇のシナリオを描くのは難しいでしょう。一方、共働き世帯が集まる都市部では価格上昇が続く可能性が高いです。
ここ4~5年はペアローンの増加が価格上昇を支えてきましたが、最近は超長期ローンと年収上昇も加わり、さらなる押し上げ要因となっています。
――全国平均で見ると年収は緩やかに上昇傾向ではあるものの、大きく上がっていない印象です。
住宅購入層は年収アップの恩恵を受けている可能性が高いです。モゲチェックの登録ユーザーの平均年収は年々増加し、現在は700万円を超えており、3年後には800万円に届く可能性もあります。
年収600万円の場合、借入目安はその7倍で4,200万円ですが、年収800万円なら5,600万円と、1.2~1.3倍に伸びます。さらにペアローンを組めば1.5~2.0倍の借り入れも可能です。こうした背景を踏まえると、今後10年で不動産価格が1.5倍になっても不思議ではありません。
インフレ下でも後悔しない住宅購入。早めの行動と金利対策がカギ
――結局、住宅購入希望者はどう動けばいいのでしょうか?
「買いたいと思うなら早めに動いた方がいい」と一貫してお伝えしています。不動産価格の上昇に後追いする形で、最近は家賃上昇も顕著です。このまま賃貸住宅に住み続けると家賃支出が増える可能性があります。しかも賃貸は掛け捨てのコストです。インフレ時代は早めの行動が吉だと思います。
――金利上昇も気になるところです。
高額物件を購入すると、少しの金利上昇でも返済額が大きく変わります。短期間で急上昇する可能性は低いと思われますが、今後金利は緩やかに上がっていくでしょう。ですので、金利上昇対策も今から考えておく必要があります。
モゲチェックのユーザーにヒアリングをしたところ、金利上昇対策は「節約」と「運用」の2つに分かれていました。
節約派は冷房温度を0.5度上げたり、使っていないサブスクを解約したり。運用派は副業で得た収入を投資に回す人がいて、中には「住宅ローンを借りている銀行の株を購入する」というユニークな例もありました。
今後のインフレを踏まえると、節約一本では不十分です。細かな節約を頑張るよりも、運用によってインフレの恩恵を受けたほうが、トータルでのメリットが大きいでしょう。
――最後に、住宅購入を検討している方にメッセージをお願いします。
SNSで散見される、億単位の高額なタワマンの購入を煽る投稿に食傷気味の方もいるのではないでしょうか。住宅購入は、生活に直結する選択です。通勤やお子さんの学校・習い事など生活全体に関わるので、資産性だけではなく「自分にフィットする住まい」を意識して選ぶことが大事だと思います。他人に流されない"軸"を持ちたいものですね。

