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がんの予防や老化防止にも、イヌイットが教えてくれた新常識「ケトン食」とは

SEP. 26, 2025 07:00
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6万人の生活習慣病を診察し、マインドフルネスの普及に人生を懸けた医師がたどりついた、人生を変える「新しい心の整え方」とは? この記事では、たった一口でストレスを手放す"最高の瞑想法"について解説した『食べる瞑想 幸せな毎日が続く「新しい心の整え方」』(山下明子/三笠書房)から一部を抜粋して紹介します。

今回のテーマは『イヌイットの食生活が教えてくれた新常識』。

イヌイットの食生活が教えてくれた新常識

「ケトン食」という言葉を聞いたことがありますか?

これは、糖に代わるもう一つのエネルギー源「ケトン体」を増やす食事法のことです。

これまでは「脳のエネルギーは糖質だけ」と考えられてきましたが、じつは近年、ケトン体も脳のエネルギーになることが明らかになってきました。

しかも、なんと糖質の19倍も長持ちすることがわかっています。

例えば、朝食をパンとバナナといった糖質中心のメニューにすると、血糖値は急に上がって、およそ2時間後に元のレベルに戻ります。

そのため2~3時間後には、もうお腹がすき始めてしまいます。

一方、ケトン体を増やすメニューであれば、血糖値が急に上がることもなく、安定してエネルギーを作り続けられるので、すぐに空腹を感じたり、疲れたりすることがないのです。

さらに、糖質は食べすぎると中性脂肪に変換されて体に蓄えられ、肥満の原因になりますが、ケトン体はすぐにエネルギーとして使われるため、体内で脂肪として蓄えられにくいのも特徴です。

それだけではありません。

ケトン体は細胞の老化を防いでくれるので、肌のツヤがよくなったり、内臓の病気になりにくくなったりする効果も期待できます。

また、がんの予防や進行を抑える働きがあることもわかっています。

アメリカではもう100年以上も前から、ケトン体を使った食事療法がてんかんの治療に用いられてきました。

近年では、パーキンソン病や認知症にケトン体を使った治療が効果的だという報告も数多く出ています。

このようにケトン食には、多くのメリットがあるのです。

覆りつつある「油悪者説」

では、具体的にどんな食事をすれば、ケトン体は増えるのでしょうか。

簡潔に言うと、炭水化物(糖質)を少なくし、脂質を多く摂取することです。

これを講演会などでお伝えすると、毎回のように「脂質を多くとるって、大丈夫ですか!?」と驚かれます。たしかに、脂質を摂取すれば、それが脂肪になるというイメージを持っている方も多いでしょう。病院での指導でも「油っこい食事は控えましょう」と言われますよね。特に、バターやラードなどの動物性脂肪(飽和脂肪酸)は、避けるべきものとして扱われてきました。

「総摂取カロリーの中の、脂質の割合を大きくする」という考え方はこれまでの常識とは真逆なので、そう簡単には受け入れられない気持ちもわかります。

しかし、この「油悪者説」は大きく変わりつつあります。

中性脂肪を増やす原因は糖質であり、油ではないことが、科学的に証明されてきているのです。

その証拠に、昔のイヌイットの食生活を見てみましょう。

彼らはかつて、動物性脂肪が豊富なアザラシをよく食べており、野菜やパンなどはほとんど食べていませんでした。しかし、彼らの血液検査は正常で、中性脂肪やコレステロールの値の上昇も見られず、動脈硬化による病気で亡くなる人もほとんどいませんでした。 ところが、20世紀になってイヌイットの食生活が欧米化し、パンやパスタなどの小麦製品を食べるようになったところ、血液中の脂肪が増え、生活習慣病になるイヌイットが明らかに増えたのです。

つまり、小麦製品に含まれる炭水化物(糖質)こそが生活習慣病を引き起こす大きな要因であり、従来の「高脂質で低炭水化物(低糖質)」という典型的な「ケトン食」によって、イヌイットは健康な体を維持できていたことになります。

ぜひ、糖質を控えめにし、脂質をしっかり摂取する「ケトン食」を意識していただき、日々の食材選びや献立作成に役立ててみてください。

ケトン体を増やす食事の具体例
- アボカド、卵、青魚、ナッツ類を積極的に摂取する
- 料理に使う油を、サラダ油からココナッツオイルやバターに変える
- コーヒーにココナッツオイルを加えてみる
- サラダにMCTオイルをかけてみる
- パン、麺類、ご飯の量は控えめにする

世界保健機関が警鐘を鳴らす「油」

ただ、油は悪くないとは言っても、もちろん避けるべき油もあります。

それは酸化した油です。

よくスーパーなどで見かける黄色っぽいサラダ油の多くは、不飽和脂肪酸でできています。サラダ油は熱や光に弱いため、繰り返し使うとかなり酸化してしまいます。

油は酸化すると「ヒドロキシノネナール」という物質を生み出しますが、これが脳や肝臓、膵臓の細胞死を引き起こすのです。その結果、2型糖尿病や脂肪肝、アルツハイマー病などのリスクが上がってしまいます。

また、トランス脂肪酸も避けたほうがいい油です。

これは、コーヒーフレッシュやマーガリン、ショートニングなどに含まれています。市販の菓子類には、このショートニングが多く含まれるので注意しましょう。

トランス脂肪酸は心臓疾患のリスクを高め、肥満やアレルギー性疾患にも関与しているとされています。実際、世界保健機関(WHO)はトランス脂肪酸を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるよう推奨しています。

ちなみに、ケトン体はこれまで、糖尿病の合併症である「糖尿病性ケトアシドーシス」という病態と結びつけられ、医療の世界では長らく〝悪者〟とみなされてきました。「糖尿病性ケトアシドーシス」とは、高血糖の糖尿病患者がケトン体を過剰にため込み、意識障害を起こす状態です。

しかし、これは糖尿病でない人には関係なく、糖尿病の人でも高血糖にならなければ起こらないので、ほとんどの方は心配しなくて大丈夫です。

むしろ近年、ケトン体は「体の味方」として注目されています。

ケトン体を直接摂取できるサプリメントも、最近では登場しています。

『食べる瞑想 幸せな毎日が続く「新しい心の整え方」』(山下明子/三笠書房)

「6万人の診察経験から導いた『最高の瞑想法』」「たったの一口で、心がスーッと緩んでいく」――忙しいあなたでも、大丈夫。「義務化する食事」を見直す勇気と幸せな毎日が続く「最後の答え」を授けます。人生が好転する「チョコレート瞑想」/料理をするときの「五感フル活用法」/瞑想の目的は「集中」ではない/食前に「空腹スケール」をチェックする/やけ食いを阻止する「心のブレーキ」――「乾いた心」は、食卓で癒やせるのです。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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