「ジビエ」と聞くと"臭いが強く食べにくい"、「日本ワイン」は"甘ったるい""品質が低い"――まだまだそんなイメージを持っている人が多いのではないだろうか。しかし、国産ジビエも日本ワインもこの10年で、"テロワール"を感じられる上質な味わいへと進化を遂げている。
9月17日には日本ジビエ振興協会とワイン大手のメルシャンが、共にその魅力を伝えようと、協働プロモーションを発表。贅沢なペアリング体験についてもレポートしたい。
発表会では、長野県茅野市でジビエ料理店「オーベルジュ・エスポワール」を経営する日本ジビエ振興協会の藤木徳彦代表が登壇。国産ジビエについて、「どこで、誰が捕獲し、どんな餌を食べていたのか。オスなのかメスなのか、年齢は――これらの違いで肉質も調理方法も異なる」と解説。
メルシャン エグゼクティブ・ワインメーカーの安蔵光弘氏も、日本ワインについて「ブドウを栽培する土壌や標高、その年の気候、作り手によって味わいが異なる」とし、"テロワールがある"という共通点を語った。
会場では、3つのペアリングを体験させていただいたが、実際に味わってみると両者の言わんとすることがよくわかる。
例えば1皿目、「猪と信州リンゴの煮込み」には、長野県・高山村にて、元自衛隊員が一発でしとめたという、イノシシのバラ肉を使用。高山村で栽培が盛んなりんごや長芋を食べて育ったイノシシだからこそ、リンゴの煮込みと添えてある長芋のソテーとの組み合わせが絶妙だ。
28度で溶けてしまうというイノシシの脂は甘く優しい。私もジビエには"臭くて食べにくそう"という印象を持っていたが、そのイメージを大きく覆された。
そして、甘くとろけるイノシシの脂をその酸味で中和してくれるのが、ペアリングとして合わせた「シャトー・メルシャン 北信右岸シャルドネ リヴァリス 2021」。千曲川右岸の砂礫質の土壌で栽培されたブドウで作られ、芳醇で複雑なアロマやミネラル感、しっかりとした骨格が感じられるワインだ。同じ高山村のブドウが使用されており、料理に自然と寄りそう。
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「鹿ポワレ」に「シャトー・メルシャン 塩尻メルロー 2019」をペアリング。八ヶ岳の山麓エリアで育った鹿肉を使用。このエリアではエサが多い夏の時期に捕獲されたシカ肉がおいしいのだとか。鉄分を感じる肉質に、シシトウやハーブのような香りが印象的なメルローがぴったり。
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「月の輪熊と干し柿のパテ・アンクル―ト」に「シャトー・メルシャン 椀子メルロー 2019」をペアリング。"柿をたくさん食べた年の熊はおいしい"のだとか。熊の好物・柿と合わせて。タンニンの強いメルローと一緒に、赤身の肉のおいしさが堪能できる一皿。
「日本の風土から生まれたブドウでできた日本ワインは、日本の風土から生まれた食材と相性が良い」と安蔵氏。それぞれの育った地域や風土に思いをはせながら、その背景にあるストーリーを楽しめるのも、国産ジビエ×日本ワインの魅力と言えるだろう。
シャトー・メルシャンオンラインでは、日本ワインと国産ジビエの魅力を発信する特設ページを開設。今後は、「オーベルジュ・エスポワール」でのメーカーズランチを予定しているほか、11月2・3日にシャトー・メルシャン勝沼ワイナリーで開催される「シャトーメルシャン・勝沼マルシェ」にも、「オーベルジュ・エスポワール」が出店。日本の新酒とジビエ料理が気軽に楽しめる。
機会を見つけて、ぜひテロワールを感じるペアリングを楽しんでみてはいかがだろうか。



