北米大陸を市販車によってどれだけ速く横断できるかを競う、実在した非公認レースをモチーフにしたカーアクションコメディ映画『キャノンボール』シリーズ。1981年から1989年にかけて合計3作が製作されたなかで、なぜか日本人役で出演した香港出身の大スター、ジャッキー・チェンが乗ったクルマといえば、『キャノンボール2』に登場した三菱自動車工業「スタリオン」が、おそらくはもっとも有名だろう。
だが、1981年公開の記念すべき第1作『キャノンボール』で、ジャッキーがスバル「1600スウィングバック4WD」、日本名でいうところの2代目「レオーネ スイングバック」で爆走していたことは、もしかしたらあまり知られていないのかもしれない。
ランボやフェラーリと戦ったスバル車
映画『キャノンボール』のあらすじは、非公認レース「キャノンボール」に出場するさまざまな登場人物が、さまざまなタイプのスーパーカーに乗り、官憲による追跡や検挙を逃れるためにさまざまな手段(変装や秘密兵器の使用など)を駆使しながらゴールを目指す――というもの。
そんななかで、マイケル・ホイとともに「日本人コンビ」を演じたジャッキー・チェンが乗っていたのが、日本でいうところの2代目レオーネ スイングバックだった。
1979年に発売された2代目レオーネ スイングバックは、「4ドアセダン」「2ドアハードトップ」「エステートバン」とともにラインナップされた3ドアハッチバック。国内仕様のパワーユニットは1.3Lと1.5L、1.8Lという3タイプの水平対向4気筒OHVで、1.6L版と1.8L版にパートタイム式4WDが設定されていた。
劇中車はおそらく北米仕様の1.8L 4WDで、劇中のレースに出場したランボルギーニ「カウンタックLP400S」やフェラーリ「308GTS」、アストンマーティン「DB5」、ロールスロイス「シルバーシャドウ」などのハイパワー車と比べれば、動力性能の面で劣ることは明らかだった。しかし当時はまだ希少だった「乗用4WD車である」という点によって、レオーネは大抜擢された。直線が続く舗装路では、レオーネはカウンタックなどのスーパーカーには太刀打ちできない。だが4WDならではの走破性によって、ある局面ではスーパーカーをも超えるスーパーな走りが期待できたのが、当時のレオーネというクルマだったのだ。
スバルの4WDは当時から有名だった?
映画内でジャッキー・チェン&マイケル・ホイのチームが乗車したレオーネ スイングバックは「ロケットエンジン」も搭載するフィクション仕様だったわけだが、それでも、今に続く「スバルといえば4WDが凄い」というイメージは、キャノンボール第1作が公開された1981年の頃からすでに北米で定着していた――ということを肌感覚で理解できるのは、この映画を自動車愛好家が鑑賞する場合のポイントのひとつとなるだろう。
同時にこの作品では「日本=ハイテクの国」としても想定されており、当時はまだ一般的ではなかったカーナビゲーションシステムを劇中のレオーネが装備している点についても、「さすがは日本のクルマだ!」的な描かれ方をしている。
昨今のニッポンが「ハイテクの国」たりえているかどうかは、若干微妙なところかもしれない。だが「そういえば1980年代前半ぐらいって、そんな状況だったかも!」と確実に思い出せるのも、この映画を改めて鑑賞してみることの価値であるといえるだろう。


