失敗できるフィールドがないと、いつかシュリンクする

――確かに、マーケットインも、ワンチームであることも、すべて「利他」に集約されますね。多様性の社会で、メユミさんはアイスタイル以外にもいろいろな企業の役員もされていますが、これは全うしようと意識されていらっしゃる部分などはありますか?

そんなに偉そうなことは言えませんが(笑)、インターネットの黎明期からたくさんの失敗をしながら、生活者が求めている未来を探しに、事業をゼロイチで作り上げられるよう試行錯誤してきた思考の癖から、何か発言できるものがあるのではと考えています。

また、小学生の子どもが2人いるので、その若い世代とリアルに接することができているため、その世代とのギャップをどう埋めていけるか。子どもたちの日々のライフスタイルを見ていると、明らかに世代間ギャップが広がっていると実感します。消費行動、価値選択、推し活もそう。YouTuberの方など、大人の私たちがまだキャッチアップできていないスーパースターがたくさんいます。

そうやって、自分たちと相容れない価値観の若年世代とリアルに接していると、毎日が驚きや違和感の連続で(笑)。けれど、まもなく子どもたち世代が主たる生活者になるから、きちんと直視していかないといけない。まだ企業の経営陣に、この世代とのリアルな体感値をお持ちの方は少ないと感じるので、そのとき、今の大人世代との壮絶な差を、私たちはどうビジネスに繋げていけるのか、考えますね。

――メユミさんにひとつご相談したくて。大企業さんのお手伝いをさせていただくとき、いちばん求められているだろうけど、なかなか伝わらず苦労しているのが「失敗への寛容度を上げること」で。お酒の席で一緒に食事をしながら「ぜひやりましょう!」という話になっても、いざ会議や稟議で正式に通すとなると、なかなか難しい。どうしたらいいですか?

……ありますよね(笑)。でも、やっぱりどうにかしてシステムを作るしかないと思います。自分たちの主たる信頼の上に成立してきた本業のビジネスを息長く続けるためには、ステークホルダーの信頼を裏切れない。そうなると、本業とはまた少し違う場所に、ラボか、新規事業部か、社内ベンチャーか、子会社か、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)か…そういったところで、思い切って見えない未来に向かって失敗できるフィールドを意識的に作らないと、いつかものすごくシュリンクしていってしまうとは感じます。どうしても本業は、最大公約数の失敗しにくいところに落ち着くことが多いですからね。私たちも苦しみながらやっているので、まだまだ解はありません。

50歳、おじさん世代。初めての美容、おすすめは?

――少し話が変わるんですが、僕も50歳になりまして。「エグゼクティブなんだから、二郎ちゃんもそろそろ見た目に気をつけなさい」と言われまして、今週眉サロンに行くんです(笑)。周囲もだいたい50歳になると、突然化粧水を使い始めたり、みんな何かしら気を使いだすお年頃で(笑)。まずここから手をつけたらいいんじゃないかという、おじさん世代の初心者向け美容アドバイスなどがあればいただきたく…。

そうなると、やっぱり保湿とUVケアですね。夏でもエアコンで乾燥するんですよ。男性の方だと『物理的にごしごしと摩擦が強すぎるくらいの強さで洗顔して、化粧水だけをバシャバシャ!』という話は聞くんですが、まず摩擦はできるだけ控えめに優しく洗ってください。そして化粧水だけだと蒸発して乾燥してしまうので、その上にクリームや乳液など油分でフタをする。もしくは『オールインワン』というすばらしいアイテムがあるので、それがおすすめです。

――オールインワン…とは何ですか?

ひとつで化粧水、乳液、美容液、クリーム、ものによっては日焼け止め効果まであるアイテムです。朝に使う際は日焼け止め効果が入っているものだとひとつで済むのでラクですが、朝晩で同じオールインワンを塗っていればOKにしたいのであれば、日焼け止め効果はナシのものを選び、家を出るとき確実に目に入る玄関に、ポンプタイプの日焼け止めジェルを置いて、雑でもいいので塗るのがおすすめです。オールインワンも日焼け止めも、顔だけでなくぜひ首まで塗ってください。首は一番年齢が出ます。高いものでなくても、ドラッグストアで買えるベーシックなもので大丈夫ですよ。

――参考になります、ぜひトライさせていただきます!

髪もツヤがなくパサパサしていると老けて見えてしまうので、お風呂の後、髪が濡れているうちにつけるアウトバストリートメントが手軽でおすすめ。スタイリング剤も、ツヤが出るものを選んでください。あと、エグゼクティブは手のケアですね。手も年齢が出やすい部分で、やっぱりプレゼンやお名刺交換のシーンで、意外と目に入るものです。ハンドクリームを使ってもいいですし、お顔に使ったオールインワンの余ったものを塗るだけでも十分です。毎日の積み重ねで、5年後10年後、全然変わります。

――ただ、膨大な数の商品があるので、どうやって選ぶと良いですか?

そんなときこそ、ぜひアットコスメストアへ(笑)。たくさんテスターがあるので、お好みの香りや使用感のものを選べますよ。男性のお客さんもたくさんいらっしゃるので、男性がいてもなんの違和感もありませんのでご安心ください。平日の日中は比較的空いていることが多いので、外出の合間などにぜひ!

――今、おっしゃっていただくまでは「おじさんが来たよ」と思われてないか勇気が必要だったので、心強いです!

それでもお店に行くのは勇気が要るなというときは、オンラインのカウンセリングもご用意しているので、そちらで聞いていただくのもいいかもしれません。

――さすが、ユーザーのニーズを掴んでいらっしゃる…。最後に、これから、メユミさんが実現していきたいことを教えてください。

社会そのものが変化する中で、自分が『こういう世界があるべきで、取り組めること』と感じたら『気づいた責任として、やる責任がある』と思っています。2020年、新型コロナウイルス禍真っ只中に、化粧品業界の有志の方々に呼びかけて、一般社団法人バンクフォースマイルズを立ち上げ『コスメバンク』プロジェクトを立ち上げました。

――それはどのようなプロジェクトなのでしょうか?

化粧品業界は、トレンド性も季節性も高く、次々新しい商品が出ます。もちろんそれ自体は楽しいことですが、一方で棚から引き上げられたリニューアル前の旧商品は、廃棄になってしまう。リサイクルできるファッション業界に比べると、化学合成品であり、容器も含めて商品である性質があり、化粧品はリサイクルがかなり難しい。使用には問題ないのに、売り先が決まらない商品が、たくさんあります。

一方で、コロナ禍で女性の非正規雇用の方の経済的困窮度が残念ながら上がってしまい、苦しい状況がメディアでも取り上げられるほどになった。そのとき、知人を通じて、シングルマザーのお母さんが、お子さんの卒業式や入学式など晴れの舞台に行くとき、お手元にお化粧品ひとつなく、悲しい気持ちになりながらマスクでお顔を隠して参加した話をたまたま聞きました。化粧品は、人を元気に幸せにできるものだという気持ちで、長年仕事に取り組んできました。けれど、化粧品がないことで、悲しい思いをされたり、社会に出る妨げになる方がいると気付かされて…そこに目が行っていなかった自分に、恥ずかしい気持ちになりました。

化粧品の余剰と女性の経済的困窮をマッチングしない理由はないと、ご縁ある企業さんにお声がけしたら、ぜひ参加したいとお声をいただき、立ち上げて5年になりました。毎年母の日とクリスマスの年2回、スキンケアからメイクアップまで、10種類くらいの化粧品を入れたコフレを、1回につき約3万世帯にお届けしています。お母さん方から、元気が出たと嬉しいおたよりをたくさんいただいて、業界にいる私たちも、化粧品が贅沢品ではなく、社会と接していく中で必要不可欠なものだと認識できて、双方にとって笑顔や幸せが生まれるものだと感じています。

いわゆる資本主義のビジネスとはまた違う軸ですが、とても必要なこと。それに、ブランドにとっても、化粧品によって自信を持って社会に出たお母さんや、このプロジェクトを見ていたお子さんが将来の顧客になるかもしれない。そこまで考えて循環をつなげていきたい…そう思っています。

――先ほどおっしゃっていた「気づいた責任」、すごくいい言葉ですよね。気づきに向き合うアントレプレナーシップ…それをCxOの皆さんが持つと、最初の話に戻りますが、臨機応変に目標に向かって進んでいけるワンチームになっていけるのかなと思いました。本日はありがとうございました。


素晴らしいアイデアは誰もが思いつく可能性があります。しかし、そのアイデアに本気で向き合い、最後まで”やり遂げる力”こそが、CxOに求められる本質だと思います。 対談を通して見えてきたのは、CxOの本質的な価値は「気づいた責任を、実行する責任」にあるということ。そして、これこそが会社を大きく成長させる原動力なのだと確信しました。

■今回お話をうかがったのは…

アイスタイル 取締役 共同創業者 山田メユミ氏
1995年東京理科大学卒。2018年東大EMP修了。化粧品メーカー在職中に趣味で始めたメルマガへの反響をもとに、コスメ情報サイト『@cosme』を企画立案し、1999年にアイスタイルを共同創業。 現在も取締役を務めるほか、SOMPOホールディングス、セブン&アイ・ホールディングスの社外取締役、社会福祉法人評議員等を兼任。 2021年、業界有志とともに一般社団法人バンク・フォー・スマイルズを立ち上げ、困難を抱える女性世帯に化粧品業界にある行き先のないコスメをお届けするコスメバンクプロジェクトを始動。