ディーゼルエンジンのクルマには独特な魅力があるわけだが、クルマの電動化が進んでいけば、そのうち乗れなくなってしまうかもしれない。マツダが研究している「次世代バイオディーゼル燃料」の実用化には、1人のクルマファンとして期待してしまう。

ただ、バイオディーゼルで走るマツダのクルマから、はたしてマツダ車らしさを感じられるのかという点については未知数な部分もある。今回は「CX-80」で実際に体験してきた。

  • マツダ「CX-80」

    マツダ「CX-80」を次世代バイオディーゼル燃料で走らせてみた(本稿の写真は撮影:原アキラ)

どんな燃料?

次世代バイオディーゼル燃料を使用した脱炭素社会の実現を目指すマツダは8月22日、燃料の開発・供給事業者らともに企業や官公庁向けにその取り組みを説明し、自社製品を使用した体験会を開催した。

マツダでCN(カーボンニュートラル)推進統括を担当する小島岳二専務によると、自動車の脱炭素に関するマルチパスウェイとしては「CN水素×FCV」「CN電力×BEV」「CN燃料×PHEV」「CN燃料×HEV」という4つの組み合わせがあるという。マツダが取り組んでいるのは「CN燃料×HEV」だ。燃料としては最新の次世代バイオディーゼル燃料であるHVOを使用。体験会で走らせたクルマは、3.3Lハイブリッドディーゼルエンジンを搭載する「CX-80」と「CX-60」だ。

  • マツダの次世代バイオディーゼル燃料体験会

    マツダのCN(カーボンニュートラル)推進統括担当・小島岳二専務

  • マツダの次世代バイオディーゼル燃料体験会

    「CX-80」「CX-60」が搭載する排気量3.3Lの直列6気筒ハイブリッドディーゼルエンジン「e-スカイアクティブD 3.3」

次世代バイオ燃料の「HVO」(ハイドロトリーテッド・ベジタブル・オイル)は、植物油や廃食用油などの原料を水素で化学処理して生成する。従来のバイオ燃料である「FAME」(メタノールと化学反応させる)に比べて燃焼効率が高く、酸化や劣化が進みにくいうえ、ライフサイクルでのCO2削減効率が高いなど有利な点も多く、現行のディーゼルエンジンにそのまま使用できる。つまり、従来の軽油に取って代わることができる持続可能な次世代エネルギーというわけだ。

  • マツダの次世代バイオディーゼル燃料体験会

    HVO51%、軽油49%を混合したユーグレナの次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」(中央)

体験会で使ったラージ商品群のSUV「CX-80」と「CX-60」について説明したのは、マツダ パワートレイン開発部の志茂大輔・主席エンジニアだ。

  • マツダの次世代バイオディーゼル燃料体験会

    マツダ パワートレイン開発部の志茂大輔・主席エンジニア

両モデルが搭載する「e-スカイアクティブD 3.3」は排気量3.3Lの直列6気筒ディーゼルエンジンと48Vマイルドハイブリッドシステムの組み合わせで、低速から高速までクリーンな燃焼が可能で優れた燃費を実現する「2段エッグ燃焼室」の採用による「燃焼理想化の追求」と、大排気量による550Nmの高トルクを利用した「走る歓びの向上」が両立できているとした。HVOと組み合わせれば、CO2を今すぐに有効に削減できるパワーユニットであるという。CO2削減のポテンシャルは、現状の電源構成で走るBEVを凌ぐそうだ。

  • マツダの次世代バイオディーゼル燃料体験会

    e-スカイアクティブD 3.3が採用した2段エッグ燃焼室(右)の展示

  • マツダの次世代バイオディーゼル燃料体験会

    2段エッグ燃焼室の解説画面

  • マツダの次世代バイオディーゼル燃料体験会

    e-スカイアクティブD 3.3とHVOの組み合わせに、現状の電源構成で走るBEVを凌ぐCO2削減ポテンシャルがあることを示したデータ

バイオ燃料でも普通に走る?

筆者が体験会で乗ったのは、次世代バイオ燃料を入れたCX-80だ。バイオ燃料でもクルマの持ち味を発揮できるのか。そこに注目しつつ運転してみた。

  • マツダ「CX-80」

    「CX-80」が搭載する排気量3.3Lの直6ハイブリッドディーゼルエンジン「e-スカイアクティブD 3.3」

  • 次世代バイオ燃料の簡易型給油タンク

    平野石油が開発した次世代バイオ燃料の簡易型給油タンク(190Lモデル)

  • マツダ「CX-80」

    次世代バイオディーゼル燃料を給油する「CX-80」

空いた都内の広い坂道でスポーツモードに入れて、わずかの時間ながら床までアクセルを踏んでみると、直6エンジンは快音を発しながら豪快に加速していく。254PS/550Nmのエンジンと16.3PS/153Nmのモーターを組み合わせたパワー感は、このクルマのデビュー時に徳島~神戸間で行われた試乗会で体験した(当然、軽油を使用)ものと、全く変わらないことがわかった。

  • マツダの次世代バイオディーゼル燃料体験会
  • マツダ「CX-80」

    次世代バイオ燃料を入れて走行する「CX-80」

  • マツダ「CX-80」

    次世代バイオ燃料を入れて走行する「CX-60」

  • マツダ「CX-80」「CX-60」

    一般道の走行に向かう「CX-80」と「CX-60」

課題となるのはコスト面で、現状、HVO51%:軽油49%の割合で混合した「サステオ」という商品は、価格が通常の軽油の3倍だ。HVO単体だと5倍の価格になってしまうという。

このためマツダでは、いすゞ自動車、平野石油、ユーグレナと共にHVOの開発を進めるとともに、官公庁や企業のクルマ、あるいはバス、トラックなどの商用車向けの需要を拡大するサプライチェーンを作ることでコストを下げ、その後、一般ユーザーの使用量を拡大させていくことを目指している。

  • マツダの次世代バイオディーゼル燃料体験会

    いすゞが工場の通勤バスとして運行中の次世代バイオ燃料を使用したバス

  • マツダの次世代バイオディーゼル燃料体験会

    平野石油が工事現場など現場の機材にバイオ燃料を配達・給油するために製作した中型タンクローリー

また政策面での後押しも必要で、体験会の当日は経済産業省資源エネルギー庁の担当者も登壇し、現状を分析していた。

  • マツダの次世代バイオディーゼル燃料体験会

    (右から)マツダの小島岳二CSO、ユーグレナの新田直上級執行役員、経済産業省・資源エネルギー庁の東哲也課長、平野石油の平野賢一郎代表取締役、いすゞの吉川和成執行役員

今後の展開に注目が集まったイベントらしく、この日の参加者は法人企業37社78名、官公庁では6行政・自治体12名の合計90名に達していた。

  • マツダの次世代バイオディーゼル燃料体験会

    欧州では100%HVOが給油できるスタンドが増加中。価格も軽油とそれほど変わらないという