「ポケモンカード」と「ハッピーセット」のコラボで注目を集める「トレーディングカード」(トレカ)の世界。ここまで「トレカ」が過熱しているそもそもの理由とは? この業界に詳しい株式会社lunaless代表取締役/CEOの菊地正樹さんに聞きました。

「ポケカ以前」のトレカの世界は?

「トレーディングカード」と言えば、若い層から大人までが夢中になってゲームを楽しむもの。大きな大会があって、マジック(マジック:ザ・ギャザリングというトレカのゲーム)には「Black Lotus」なんて100万円を超える高いカードがあるんだよね。知ってる人は知ってるようなコンテンツでした。

ある時を境に、その常識は一気に覆ることとなります。

さて、時代は少し遡り2015年頃。今では誰しもが耳にするレベルの“ポケモンカードゲーム”(ポケカ)は、トレーディングカード市場において主役とは言えない立ち位置でありました。

当時のトレカ店で主力だったのは「遊戯王」「デュエル・マスターズ」「ヴァイスシュヴァルツ」「マジック:ザ・ギャザリング」(MTG)といったタイトルであり、ポケモンカードは一部のファン層に支えられるに留まっていました。店舗によっては取り扱いすらほとんどないケースも珍しくなかったのです。

  • 「マジック:ザ・ギャザリング」のカード

    私は20年来のマジックプレイヤーでもあります。イベントで「意思の力」のFoil版を素引きしたときは手の震えが止まらず、すぐに隠したなぁと覚えています。2016年頃で12万円台のカードが現行のパックから出てくるのは超レアケースでした

ポケカ高騰に二重の要因

転機となったのは2016年頃。競技としてのポケカのプレイ人気が自然発生的に高まり、徐々に大会シーンやユーザーコミュニティが活性化していきました。その勢いは2020年頃までに拡大し、多くのトレカ店で再び取り扱われるようになります。

さらに大きな変化をもたらしたのが新型コロナ禍でした。外出や対面プレイが制限される中で、メルカリなどのフリマアプリやオンライン取り引きを通じて、「遊ぶため」ではなく「収集・投資の対象」としてカードを探す人が急増しました。

そもそもトレーディングカードは、プレイされる機会の多いカードが高くなるなど価格に変動性がある商品です。ここにコロナ禍ならではの「遊び」を求めた人たちは多かったのではないでしょうか。

巣ごもり需要が追い風となり、過去弾のカードや希少品の人気に火がつきました。プレイができない環境下で、投機的な側面が強く市場を押し上げたと言えます。

トレカの価値が高まるとともに、PSA鑑定(カード状態を数値化する国際基準のグレーディングサービス)が国内でも注目を集め始めました。従来は主にMTGの一部(いわゆるパワー9と言われるものです)やベースボールカードで活用されていた仕組みでしたが、ポケモンカードの鑑定依頼が急増。これに伴い、鑑定済カードを扱うビジネススキームも新たに誕生しました。結果として「ポケカは店舗でもECでも入手困難」という状況が定着していきます。

  • ポケモンカードのイーブイ

    著者の大好きなイーブイ。PSA鑑定品になって目にする未来があるとは思いもしませんでした

市場拡大の波は小売業界を直撃しました。2022年、コロナ禍が収束に向かうとともに、それまで投機目的で集められていたカードが一斉に市場に流通。出店ラッシュが加速し、全国のトレカ専門店はわずか1年間で1,900店舗から2,200店舗へと急増しました。池袋、秋葉原、大須、日本橋、天神、札幌といった大都市圏だけでなく、地方都市にも店舗展開が広がったことは注目に値します。

このあたりから相場が劇的に上がり、上記エリアのお店などでは、先ほど記載した12万円のカードは「価格的にはちょっと高いか普通くらいだよね?」みたいな感じになっていたように記憶しています。買取価格100万円以上もザラにあったなぁ。

かつて“脇役”だったポケモンカードは、いまや国内外で圧倒的な市場価値を持つコンテンツへと進化しました。その背景には、プレイ人口の回復と、コロナ禍を契機とする投機・収集需要の融合という二重の要因が存在しています。

2015年からのムーブメントを”第三次トレカブーム”なんて自分ではずっと言っていますが、次回はその第三次トレカブームで起きた相場変動をもう少し深掘りして振り返ってみようと思います。