富裕層をターゲットに、邦銀も資産運用を中心とした富裕層ビジネスを再び強化してきています。しかしバブル期以降、何度も今回と同じような試みが繰り返されており、効果が出ているとはいえない状況。一方で海外のプライベートバンクなどの富裕層向けビジネスは多くの富裕層を惹きつけています。今回は日本の金融機関のサービスが富裕層に刺さらない理由を解説します。
そもそも富裕層向けサービスとは?
金融機関が提供する富裕層向けサービスで、代表的なのはまず資産管理・運用です。要望をヒアリングしたうえでポートフォリオを提案し、さまざまな金融商品を組み合わせて資産運用を行います。
事業継承や相続などの助言も行っており、銀行員のみでなく税金や法律に通じたスペシャリストがチームで対応します。
非金融領域のサービスもあり、会員制ゴルフ場や高級バーなどへの招待、海外留学など教育サービス、高度医療サービスの紹介などです。
日本の富裕層向けサービスが成功しない理由
日本の銀行も、富裕層サービスをバブル時代から何回も繰り返していますが、いまだに定着していません。その理由を解説します。
あれこれ尋ねてしまう
日本の銀行員は、顧客の情報をできる限り入手するよう上から指示されます。趣味や家族・親族の構成から始まり、金融資産の全体像まで把握しようとします。
しかし、富裕層のほとんどは、自分の情報を開示することに積極的ではありません。金融資産やプライベートのことをあれこれ他人に話しても、トラブルになる可能性が高いと知っているからで、金融機関の担当者に対してもその態度は同様です。
営業担当者は本来、金融市場の話題などで顧客と関係を築き、情報を少しずつ入手しながら金融商品の提案へと進まなくてはなりません。しかし、最初から根掘り葉掘り尋ねてしまうため、富裕層から敬遠されるのです。
担当者がコロコロ変わる
日本の大手金融機関では、担当者や組織が頻繁に変更されることも、富裕層が敬遠する理由の1つです。富裕層は長期間にわたって安定した取引・やり取りをすることを希望する方が多く、コロコロ変わるのはよしとしません。
また担当者や組織が何回も変わると、富裕層は自分の情報がしっかり管理されているのか、引継ぎがきちんと行われているかも心配になります。
コストが高い
日本の金融機関は全国に支店やATMを構えているため、運営コストが高い傾向です。このコストは顧客が支払う手数料に反映されるため、海外のプライベートバンクより割高になることも。
近年は日本でもネット銀行やネット証券が普及し、手数料も下がっています。しかし、それらの金融機関は人数も限られており、富裕層の個別対応までは手が回りません。
海外のプライベートバンクの強み
日本の銀行が苦戦する一方、スイスなど海外のプライベートバンクは、富裕層から根強い支持を受けています。その理由は以下のとおりです。
担当者の異動がかなり少ない
海外のプライベートバンクでは、担当者は「プライベートバンカー」と呼ばれ、顧客と長期的な信頼関係を築くことがもっとも重要視されています。
顧客は「支店」ではなく「担当者」に紐づく仕組みとなっています。プライベートバンカーは、1人の顧客に対して、人生のあらゆる局面で相談に乗る「資産の主治医」のような存在です。
顧客は、担当者の専門性や人柄を信頼して口座開設や取引をすることが多いです。担当者が退職して別の金融機関に移籍する場合、顧客も一緒に移ることも珍しくないほど、強固な関係性を構築します。
包括的なサービス提供
プライベートバンクは、富裕層の生活全般に関わるコンシェルジュサービスのような一面も。美術品の保管、旅行の手配など、非金融の領域でもサービス対応するケースがあります。
金融領域でも、財産の承継、法律や不動産、税務のアドバイスなど多方面で富裕層の資産形成をサポート。社内の部署をまたいでサービス提供することもあり、なかなか日本の金融機関では実現するのがむずかしいでしょう。
取り扱う金融商品の多様さ
海外のプライベートバンクは、多様な国・地域の金融商品を取り扱います。この点でも、主に国内の商材を扱う日本の金融機関より優れている傾向です。
また、プライベートバンクの特徴は、顧客1人1人に対する徹底的な個別対応ですが、その領域は金融商品にも及びます。顧客の希望に合った、その人だけの金融商品を組成することも可能です。


