インフレ、人手不足、外国人投資家の参入……。さまざまな要因で、現在、不動産価格は高騰しており、もはや東京のマンションは庶民の手に届かないぜいたく品になってしまいました。そんな「不動産・格差時代」において重要なのは「不動産の教養」。これがあるかないかで、格差が決まるのが、令和の新常識なのです。
そこでこの記事では、大手ディベロッパー×メガバンク×J-REIT元代表というキャリアがあり「不動産×金融」のすべてを知り尽くす牧野知弘氏の新刊『不動産の教室 富裕層の視点が身につく25問』の中から一部を抜粋してご紹介します。
今回のテーマは『「持ち家か賃貸か」議論が不要に』
「持ち家か賃貸か」議論が不要に
持ち家が得か、賃貸が有利か。
この永遠に続く議論に、私は全く興味がありません。
どちらがよいかは自分で決める問題であって、人から指図されるものではないからです。 経済的にみてどちらがよいか、といった議論が行われがちですが、議論の中身たるや、現状のマーケットや世の中の状況を前提として、この先20年、30年の話に引き伸ばして言っているにすぎません。
買った住居が未来永劫、劣化もせずに持ちこたえる。自身の給与を含めて、現状の経済情勢がこの後も、ほぼ同じ状況で変わらない。予測を行ううえで、あまりに多くの変数を固定化して議論しているにすぎないのです。
そしてこの議論の前提として、もっとも「いいかげん」な理屈が、居住用資産の需給バランスです。
これからの人口減少や高齢化の先に待つ大量相続発生という確実な事実から目をそらし、「不動産価格と住居に対する需給バランスは関係ない」とする専門家までいることに驚きを禁じえません。
東京や大阪といった大都市には常に大量の人が集まるという前提もすでに崩れ始めています。
東京都の人口は2023年に7万人増加し、コロナ禍を経て、再び都心に人口回帰が始まったと報道されました。こうしたファクトを見ると、多くの人が「地方から再び東京に若い人が大量にやってくる、東京はすごい」という感想を持ちます。しかし、増えた7万人の内訳をみれば、増加した7万人のうちの6万人以上は外国人です。
見誤ってはならないのが、不動産マーケットが今後も急速に二極化していくという点です。都心部の金融商品化した不動産、あるいはアート価格といった値付けが行われる不動産を除いて、住宅価格は今後かなりリーズナブルなものになります。
金融商品は投資家がいる限りにおいてマーケットが形成されていきますので、人口問題や大量相続問題はあまり関係がありません。
いっぽうで居住用の住宅が欲しい多くの人にとって、これからの社会は、自らの給与のほとんどを住宅ローン返済につぎ込むような時代ではなくなります。
そして肝心なのは不動産の多くが汎用品となることです。
全員が不動産に投資して勝てるほど投資マーケットは甘くありません。最も不幸なのがこうした流れに乗って無理をして、資産価値を形成しないと思われる立地、仕様のマンションにお金を投じてしまうことです。
あくまでも自分が住んで居心地のよい住宅、街、エリア、を身の丈にあった価格で買う時代はもうすぐそこに来ているのです。
『不動産の教室 富裕層の視点が身につく25問』(牧野知弘/大和書房)
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