2023年に光岡自動車(富山県富山市)の創業55周年を記念して誕生した「ミツオカM55」(エムダブルファイブ)。昭和~平成の「レトロ」が大流行の今、このクルマに乗れば気分が“アガる”ことは間違いない。実物にじっくり乗ってきたので、レポートしていこう。
1970年代のGTカーをイメージ
光岡の頭文字である「M」と「55」周年の数字を掛け合わせたシンプルな車名を持つM55。初年度限定モデルの「M55 ゼロエディション」はデビュー時に大きな話題となったのだが、筆者はなかなか実車にお目にかかることができなかった。2025年5月からデリバリーが開始されたのを機会に今回、やっと試乗が叶ったのだ。
光岡の広報さんによると、M55は「1970年代のGTカー」をイメージしたクルマであるとのこと。55年前の創業当時、光岡自動車は事業発展の礎を築くべく、夢や希望に満ちたエネルギーにあふれ、その先にある明るい未来を追い求めていた。M55を制作することで、当時のエネルギーを今の時代に感じてもらいたい、という願いを込めたのだという。
メインターゲットは同社と同じ55年の人生を歩んだ「同世代の方々」とする。感性豊かな少年少女時代に体験したさまざまな出来事や、1970年代の時代感覚をベースに、当時を駆け抜けた明るい時代のマインドを具現化したのがM55だ。分断や差別、将来の不安などに満ちあふれている現代に現れたその姿は、少しだけ世代が上の筆者にもしっかりと刺さり、気分は間違いなく“アガる”のである。
M55のエクステリアを見てまず頭に思い浮かぶのが、アメリカンマッスルカーのダッジ「チャレンジャー」(1970年~)だろう。筆者は最初「チャージャー」かなー、と思っていたのだが、よく考えてみるとチャージャーは映画『ブリット』(Bullitt)でスティーブ・マックィーンが駆る「マスタングGT390」とサンフランシスコの急坂で派手なカーチェイスを繰り広げる格納式ヘッドライトを持つ黒ボディのクルマで、丸目4灯の顔を持つのは同じデザイナーの手によるチャレンジャーの方だった。
チャレンジャーは丸目4灯のヘッドライトだけでなく、バンパーが前方に出っ張ってボディラインに埋め込まれたように滑らかにつながる「インテグレーテッド・バンパー」を採用していたので、余計に似たイメージなのだ。また、一方のマックィーンのマスタングは、滑らかなルーフラインを持つファストバックモデルだったので、M55のリアの形状はそのイメージも引きずっている。
こうしたカッコいいアメリカンモデルの影響をもろに受けていたのが、当時の日本のスポーツモデルたちだった。インテグレーテッドバンパーを採用して丸目4灯だった「ケンメリ・スカイライン」(C110型、日産自動車)は、ヘッドライトの間に2分割グリルを採用していたので、本当によく似ている。また「セリカLB」(A20型、トヨタ自動車)の影もちらつくし、インテグレーテッドバンパーのファストバックスタイルといえば、筆者の最初の愛車だった「ランサー・セレステ」(三菱自動車工業、こちらは丸目2灯だったが……)もそうだ。
ちなみに、リアライトを丸目4灯としなかったのは、さすがにモチーフを特定されるのを避けためだと同社広報さんは断言。また、リアガラスに装着したギザギザのウインドールーバー(当時、大流行だった)とダックテールのスポイラーは、ギャランGTO(三菱自動車、マスタングのファストバックがモチーフと言われている)を彷彿させる。
まあ、こうした話がどんどんと出てくるのがM55誕生の狙いのひとつ(半分くらいあるかも)であり、筆者もその“ワナ”に引っかかってしまった1人なのである。
ベースモデルのどこを変えた?
今回乗った「M55 ゼロエディション」のベースとなったのが、ホンダ「シビック」のマイチェン前モデルである6速MTの「LX」であることをご存知の方も多いと思う。2024年にホンダから新規登録済み車100台を購入し、フロントと左右のフェンダー、ボンネット、リア部分などを富山市内にある工場で付け替えたのだ。エクステリアとしては、いずれのパーツも金型を使用したスチールのプレス加工品なので、合わせ目のチリ部分に妙な隙間などはなく正確に接合されていて、お金がかかっているのがわかる。そのため、エクステリアからはシビックのイメージを上手に消し去っているのだ。
ボディは全長4,735mm、全幅1,805mm、全高1,415mm、ホイールベースは2,735mm。車両重量は1,360kgだ。前後ボディを延長したことで、シビックより285mmも長くなっているのがわかる。一方で車重が30kgしか重くなっていないのは、カラードボルトで取り付けられたTAN-EI-SYA(富山県射水市)製のM55専用軽量鍛造ホイール(MITSUOKAのロゴ入り)などを採用しているからだろう。
最高出力134kW(182PS)/6,000rpm、最大トルク240Nm/1,700~4,500rpmを発生するホンダのL15C型1.5L水冷直列4気筒DOHCターボエンジンや6速MTトランスミッションなどのパワートレインは変更なし。ゼロエディションのボディカラーは写真のレジェンダリーグレーメタリックのみで、価格は808万5,000円だ。新車とはいえ中古新規登録車扱いとなるため、納車後の初回車検は2年となる。次はインテリアを見てみよう。































