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「独身で戸建て」が増加、“手ごろで便利なマンション”は、なぜ通用しなくなってきたのか

AUG. 12, 2025 12:00
Text : 山口 靖博
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現在、独身世帯の戸建購入が増加しています。未婚化・晩婚化が進む日本社会で「独身でマンション」は珍しくなくなりました。が、「独身で戸建」は馴染みが薄いかもしれません。

なぜ増えているのか、住宅市場の新たな動向を探ってみましょう。株式会社オープンハウス営業推進部次長の山口靖博氏が解説します。

独身世帯の持ち家率と戸建購入の傾向

総務省の調査によると、首都圏の独身世帯の持ち家率は2割近くあります。つまり、独身でも家を持つこと自体は決して珍しいことではありません。

興味深いのは、戸建購入者の統計データが指し示す以下の事実です。戸建て購入者のうち、独身世帯の割合が以前と比較して増加傾向にあります。この変化は、新たなトレンドを示唆しているといえるでしょう。

「独身でマンション」の要因と変化

そもそも「独身世帯が購入するならマンション」という考えが一般的だったのは、なぜでしょうか? 価値観やライフスタイルは千差万別ですが、主だった要因は、以下の3点があげられます。

  • 価格の手頃感:マンションは比較的小規模な物件が多く、独身世帯にとって手が届きやすい価格帯
  • 利便性:マンションは都心部・駅近でアクセスが便利なため、独身世帯の生活スタイルに合う
  • 資産性:マンションは売却がしやすく、将来のライフプランの変化にも対応しやすい

以上の要因は、かつてはマンション特有の特徴でした。しかし近年、マンションと戸建の供給の傾向が変化し、独身世帯の住まい選びが変わり始めてきたと考えられます。以下、具体的に確認していきましょう。

マンションと戸建の価格変化

まず、価格面での変化です。現在、マンション価格の高騰は顕著になっています。首都圏では中古マンションの平均価格が2016年に中古戸建を、そして2022年に新築戸建を追い抜きました。

マンションの場合、ワンルームタイプや郊外を選択することで、平均価格を下回る比較的安価な物件を見つけることは可能です。ですが、ある程度の広さや立地を希望する独身世帯にとっては、価格を比較して相対的に「戸建の方が割安だ」と考える方も増えていることが推測できます。

利便性が高い立地での戸建の増加

また、戸建の特徴も変化しています。以前の戸建は郊外に建てられることが多く、「広々とした家だが、生活は不便」と独身世帯に合いづらいものでした。

しかし、近年は戸建住宅の立地や企画が大きく変わってきています。その特徴には、以下の2点があげられます。

  • 立地:都心への通勤が便利な市区・沿線。駅までも徒歩圏。
  • 企画:敷地は40~80平方メートル程度とコンパクト。3階建にすることで、延床面積を確保。

このように、立地の利便性を重視したコンパクト戸建の供給が増加。便利な場所に住みたい共働きファミリーからの支持が高まってきました。この都市部の戸建が、独身世帯にとっても魅力的な選択肢となっているのです。

戸建の資産性が上昇

さらに、戸建の資産性についても変化が見られます。

かつては「郊外の庭付き新築一戸建てが住まいのゴール」「戸建には一生住む」とされていた時代もありました。ところが現在は、中古戸建の売却成約において築10年以内の物件が25%を占めており、実はマンションよりも多い割合を記録しています。

すなわち、価格と利便性の変化により、現在の戸建は資産性が高く「売却しやすい不動産」として認識されるようになっているのです。

独身のうちに住宅を購入する人の多くは、ライフスタイルが変化した場合に売却する可能性を見据えています。「売却しやすい」という安心感が、独身世帯の戸建購入を促進しているのでしょう。

「独身で戸建」の実例と展望

ここで、実際に戸建を購入した独身世帯の事例を紹介しましょう。

2024年に購入した山田さん(仮名・29歳)は、勤続3年目の会社員です。東京都内で1Kのマンションに住んでいましたが、月々の家賃が勿体ないと考え、住宅購入を検討するようになりました。

「ネットでマンション情報を見て、東京圏は高いなと思い、戸建も検討しました。縁があってオープンハウスの店舗でローンの組み方などの話を聞き、実際に物件を幾つか見学し、今の戸建の購入を決めました」

購入した物件は、川崎市にあるJR南武線沿線の駅から徒歩11分、約3千万円台後半の新築住宅です。地元の信用金庫で住宅ローンを40年で借入しました。

現在の生活や将来について、山田さんは

「部屋が増えて快適になり、広いキッチンで自炊を楽しんだり、友人を呼びやすくもなりました。ライフスタイルが変化した際には、売却を考えています。川崎市エリアは人気があるので、売却する時も値崩れしにくいのでは、と予想しています」

「家は生活において必ず必要なもの。結婚して子供ができてからという昔の常識にとらわれず、独身のうちから戸建を購入するのも良いのではないかと思います」

と語ります。

このように現在、独身世帯の戸建購入が増えてきています。価格面、利便性、そして資産性など様々な要因が重なり、住まいの選択肢として戸建の魅力が高まってきました。この現象は、現代の社会変化と新たな住宅市場動向を象徴する注目すべき傾向だと言えるでしょう。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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