親から実家を相続した際、多くの人が直面するのが「相続税が発生したが、納税できる現預金が足りない」という問題です。

特に、相続財産の大半が不動産で占められ、現預金が少ない家庭では、納税資金の確保が喫緊の課題となります。こうしたケースは決して珍しくありません。

今回は、実家を相続したが納税資金が不足している場合の対処法について、法的・実務的な視点から解説します。

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相続税は現金一括納付が原則

相続税は、原則として相続開始から10ヶ月以内に、金銭一括納付する必要があります(相続税法第33条)。これを怠ると、延滞税や加算税が発生し、後の負担がさらに重くなります。

納税資金が足りない場合、以下のような選択肢が考えられます。

解決策(1):延納制度の活用(分割払い)

納税者が金銭で一括納付することが困難な場合、税務署の承認を得て、年賦(分割)で最長20年まで納付を猶予してもらえる「延納制度」があります(相続税法第36条)。

主な要件

  • 金銭で納付することが困難である正当な理由があること
  • 担保の提供(相応の不動産等)が可能であること
  • 延納税額・期間・利子税を含めた計画に問題がないこと

実家などの不動産に対して抵当権を設定し、延納の担保とする方法が一般的です。なお、利子税(年0.2%~0.6%程度)が課されますが、一括納付のプレッシャーからは解放されます。

解決策(2):物納制度の活用(不動産で納付)

延納でも難しい場合、相続税の納付を「不動産そのもので行う」制度が物納制度です(相続税法第41条)。 ただし、現在は非常に厳格な審査と手続きが求められ、現実的には「最後の手段」とされています。

主な要件

  • 金銭納付も延納も困難であること
  • 物納財産が適格(原則として市場価値のある土地・建物等)であること
  • 法定期限内に申請し、認可を受けること

なお、不動産の評価と市場性、権利関係の明確さなどが重視されます。借地や古い建物などは不適格とされる可能性があります。

解決策(3):実家の一部売却・一部賃貸による資金確保

実家を全て売却せずに、一部だけを売却したり、部分的に賃貸に出すことで納税資金を調達する方法もあります。例えば、建物を区分登記して一部を賃貸にしたり、敷地の一部を分筆して売却したり、相続後に駐車場や賃貸住宅として運用したりといったことが可能です。

このように、不動産を有効活用し収益化を図ることで、資産を残しつつも納税資金を捻出することが可能です。ただし、用途地域・法規制・建築条件などを踏まえたプランニングが必要です。

また、納付期限が迫ると、早期に現金化するために安値で売却せざるを得なくなるので、注意してください。

解決策(4):不動産担保ローンの活用

納税のために金融機関から不動産担保ローンを借り受けることも現実的な選択肢です。実家を担保に金融機関から納税資金を借入し、相続税を一括納付。その後、ローンを分割返済します。

こちらは解決策の(1)で提示した延納に比較すると、担保要件や審査期間は短い傾向にありますが、金利は高くなる場合があります。担保評価額や返済能力が審査対象となるため、専門家にシミュレーションを依頼するのが望ましいでしょう。

  • 実家を相続したのに、相続税が多額で支払いきれません。せっかく受け継いだ実家は手放さなければいけないのでしょうか......?

専門家のアドバイス

1.申告期限10ヶ月を意識すること

延納・物納の申請期限もこの期限に含まれます。後回しにすると手遅れになります。事前準備・対策が肝要です。

2.早めに資産評価と納税シミュレーションを行うこと

不動産評価や財産目録の作成は、税理士・不動産鑑定士・司法書士・不動産業者等との連携が重要です。事前に相続税額を算出してもらい、納税資金が確保できるのか、あるいは現金化するために不動産を売却しなければならないのであればその相場を確認しておくと安心です。

3.家族間の連携・同意形成を意識すること

実家に住み続けたい相続人がいる場合でも、他の兄弟との公平性や資金面の合意を丁寧に行う必要があります。

早期の資金計画が実家と家族を守る第一歩

実家を相続しても、納税資金が足りなければ「不動産を手放さざるを得ないのでは」と悩む方も少なくありません。しかし、延納・物納・担保ローン・部分活用など、現実的な選択肢は複数あります。

大切なのは、「感情」や「思い出」に流されるだけでなく、法的・税務的な現実を見据えて対策を立てることです。そして、そのためには早期に信頼できる専門家に相談し、資金計画を組み立てることが、家と家族を守る第一歩となります。