ホンダが軽乗用車の電気自動車(軽EV)「N-ONE e:」を発表した。発売は2025年秋の予定だ。軽EVといえば2022年5月に発売となった日産自動車「サクラ」(と三菱自動車工業「eKクロスEV」)の独壇場だったが、N-ONE e:はサクラと何が違うのか。サクラに乗っているモータージャーナリストの御堀直嗣さんにN-ONE e:を取材してもらった。以下、御堀さんのレポートだ。

  • ホンダ「N-ONE e:」

    ホンダ「N-ONE e:」(左)と日産「サクラ」

親しみやすい外観がEV普及のきっかけに?

N-ONE e:を一目見た印象としては、とても親しみがあり、自分の1台にしてもいいと思える魅力を備えていた。ベースとなっているのは、ガソリンエンジンの軽乗用車「N-ONE」である。

  • ホンダ「N-ONE e:」

    ホンダの「N-ONE e:」。ボディカラーは「チアフルグリーン」

N-ONEは1960年代に爆発的人気を呼んだホンダ「N360」の特徴を受け継ぐ外観が印象的な軽自動車。EVとなったN-ONE e:も、そうした要素を受け継いでいる。ただし、エンジン車とは明らかに違うEVならではの存在感ある外観に仕立てられているので、そのことがEVを選ぶ人の心を満たしてくれるだろう。

  • ホンダ「N-ONE e:」

    「N-ONE e:」のベースとなったガソリンエンジンの軽自動車「N-ONE」(RSグレード)

  • ホンダ「N-ONE e:」

    1960年代に爆発的人気を呼んだ「N360」

N-ONE e:の外観について細かく解説すると、前後のドアや屋根などはガソリンエンジン車のN-ONEと共通で、ボンネットフードやフロントグリル、リアハッチゲートなどはEV専用の造形なのだが、これらの違いにより、まるでEV専用車として作り込まれたかのようなデザインに仕上がっている。全体的には優しい雰囲気で、環境性能を視覚的かつ雰囲気的にも伝える質のよさがある。

  • ホンダ「N-ONE e:」

    「N-ONE e:」の外観はEV専用車として作り込まれたかのような仕上がりだ

N-ONEで特徴的な丸目のヘッドライトをいかしながら、N-ONE e:では充電口のあるグリルの形状が異なり、また、ボンネットフード先端がエンジン車に比べ高い位置になったことで、別の顔つきに見える。EVらしさを強調した顔つきだ。

  • ホンダ「N-ONE e:」
  • ホンダ「N-ONE e:」
  • ホンダ「N-ONE e:」
  • ホンダ「N-ONE e:」

    リアハッチゲートは丸みを帯びていて、空力的にもよさそうにみえる(ただし、空力効果については確認するのを忘れていた……)

いずれにしても、全体的に丸みがあって親しみやすい外観が、EVへの興味をより高めるきっかけになるのではないかと思った。

視界良好! 運転しやすい内装

内装も、環境と共生する優しい時代のクルマという印象をもたらす。淡い色使いの座席と室内は、移動時間を快く感じさせる安らぎをもたらすだろう。

  • ホンダ「N-ONE e:」
  • ホンダ「N-ONE e:」
  • ホンダ「N-ONE e:」

    内装色は「グレー」のみ。優しい印象の車内だ

目の前のダッシュボードは、小型車「フィット」以来、ホンダがこだわる平らな上面形状で、これが見通しのよさはもちろん、車幅を実感させやすくもする。軽自動車であるから、もともと取り回しのしやすい車体寸法であるとはいえ、手の内にあるという感触には、見晴らしや車両感覚の手応えが大切だ。

ダッシュボード中央のカーナビゲーション画面は、有る無しの選択肢がある。頻繁に遠出をしない消費者は無しの仕様で、必要に応じてスマートフォンの案内を活用すれば済むだろう。画面がない仕様を選べば、より伸びやかな見晴らしのよさを実感できるはずだ。

  • ホンダ「N-ONE e:」

    「N-ONE e:」は「e:G」と「e:L」の2グレード展開。「e:G」は画面なしの「オーディオレス」仕様だ

ガソリンエンジン車のN-ONEよりも高さのあるボンネットフードは、運転席から見て、ダッシュボードの延長のように先まで見通すことができて、クルマの先端を確認しやすくしている。想像以上に、クルマの前にゆとりがあることを体験できるはずだ。これなら、狭い場所での停車や曲がり角でも、接触の心配をせずに操作することができるだろう。

N-ONE e:ならではの特徴とは?

機能面でもうひとつ大切な点は、ハンドルの位置が運転者よりに近づけられたことだ。

  • ホンダ「N-ONE e:」

    「N-ONE e:」は「N-ONE」に比べハンドルの位置が運転者に近い

登録車(軽自動車ではないクルマ)では、ハンドルの位置調整に上下のチルト機構と前後移動のテレスコピック機能の両方が備わり、運転者の体格に合わせて運転姿勢を正すことができる。しかし、ほとんどの軽自動車は、前後移動のテレスコピックを備えず、ハンドルが遠くなりがちだ。唯一、ホンダの「N-WGN」はテレスコピックを装備するが、同じホンダ車でも、それ以外の軽はテレスコピックが付いていない。

N-ONE e:はテレスコピック機能こそ装備していないものの、ハンドル位置がやや手前に移動したことで、運転姿勢が大きく改善されることになった。

運転の安心や快適さはEVの大きな特徴のひとつであり、アクセルペダルのわずかな調節で速度を加減できることにより、例えば都市高速道路などの合流でも自然に流れに乗れる安心をもたらす。

あるいは、アクセルペダルをわずかに戻すだけで回生により減速できるので、慌ててブレーキに踏み替えることも減るだろう。ブレーキを使って減速する際も、慌てず、的確にペダル操作ができるよう、気持ちにゆとりを持つことができる。

さらにN-ONE e:には、アクセルペダルだけで加減速から停止まですることができる「シングルペダルコントロール」という機能が付いている。まだ試乗はしていないが、ホンダの説明によれば、最も運転の上手なテストドライバーが停止までの減速制御を作り込んだとのことだ。誰もが一人前のEV使いになれる仕立てだという。

  • ホンダ「N-ONE e:」

    シフトセレクターの隣にある靴とペダルが描かれたボタンを押すと「シングルペダルコントロール」機能が起動する

クルマの外観や内装の造形、あるいは色遣いなどは、それぞれに個人的な好みもあるはずだ。そのなかで、日産サクラに3年乗り、1万5,000km以上を走行した私にとって、N-ONE e:にあってサクラにはない魅力として挙げられるのは、「正しい運転姿勢を取れるハンドルの位置」と「停止までアクセルペダルだけでできる機能」の2点だ。

ハンドル位置については、サクラが発売された当初から日産に改善要望を行ってきた。また、アクセルペダルだけで停止までできないことも、せっかくEVに乗りながら不便に思ってきたサクラの課題である。

軽自動車全般の問題点(ハンドルの遠さ)の改善とEVらしさの追求(ワンペダル操作)という点で、ホンダのN-ONE e:は、現役軽EVユーザーの気持ちをも大きく動かす魅力を備えている。