老後の年金制度への信頼が落ちている現在、「生涯働く」ことが注目されています。しかし、働き続けるために最も大事な「健康」については、誰しもが漠然とした不安を持っているのではないでしょうか?
「避けられるはずの身体の病気」「対応できたはずの心の病気」について、医学的根拠、エピソードも交えて紹介し、それぞれの解決策を解説する『一生健康に働くための心とカラダの守り方』(吉田英司/かんき出版)。この記事では本書から一部を抜粋して紹介します。今回のテーマは「『がん』の発生にも糖尿病などが原因の炎症が影響している」。
「がん」の発生にも糖尿病などが原因の炎症が影響している
「病気で働けなくなるかもしれない」と考えた時、多くの人が真っ先に思い浮かべる病気の一つが「がん」でしょう。
皆さんの身の回りにも、がんに機患した人がいる状況が当たり前になっているのではないでしようか。
今や、がんは珍しい病気ではなく、多くの人が経験する可能性のある疾思になりつつあります。
がんにもさまざまな種類があります。
大腸がん、乳がん、肺がん、胃がん、前立腺がん、肝臓がん、子宮がん、膵臓がんなど多くの種類のがんが存在します。
「がん」が遺云子の病気であることは、私が医学生の頃(1990年代)から学んできたことですし、メディアでも何万回と取り上げられているため、多くの人が知っているでしょう。
具体的には、細胞の中にある遺伝子に起こる異常(突然変異)が「がん」の原因になります。
「遺伝子の異常」と聞くと遺伝的(親から伝わる)なものを想像しがちですが、実際にはそれだけではありません。
喫煙、紫外線、化学物質(タバコに含まれるニトロソアミンや、工場などで使用されるクロム化合物など)、感染症(例:ヒトパピローマウイルス)など、外部環境要因によって遺伝子が損傷を受けることが、がんのきっかけとなることも多いです。
そして「がん」と炎症の関係は非常に深く、多くの研究によって「慢性的な炎症」がDNAの損傷や免疫系の抑制を引き起こし、「がん」の発生や進行に重要な役割を果たすことが明らかになっています。
また数十万年前の人類は「がん」に罹患することは少なかったと考えられています。
その理由は、「がん」は遺伝子が外部環境や慢性炎症などにより変異することで発症しますが、もともとの寿命が短く「がん」が発生する前に亡くなることが多かったと考えられているためです。
「がん」もまた、寿命が長くなった現代だからこそ、対応しないといけない病気です。
がんを引き起こす、慢性的な炎症となる疾患には以下のようなものが挙げられます。
- 感染症による炎症:ヘリコバクター・ビロリ(胃炎や胃漬瘍などの原因)、肝炎ウイルス(HBV、HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV。子宮頸がんなどの原因)など
- 自己免疫疾患:炎症性腸疾患(漬瘍性大腸炎、クローン病)など
- 生活習慣、外部要因:喫煙や大気汚染、糖尿病、肥満など
このうち糖尿病が「がん」のリスクと関係していることは、意外に思う人も多いかもしれません。
糖尿病では、高血糖による酸化ストレスの増加や糖化最終生成物(AGEs)の蓄積が原因となり、慢性炎症が全身に広がります。
糖尿病は健康診断の項目にも含まれており、異常を指摘されている人も少なくありません。
健康に働き続けるために「がん」を予防するには、糖尿病の予防も効果的な対策となるのです。
『一生健康に働くための心とカラダの守り方』(吉田英司/かんき出版)
15年で、ビジネスパーソン1万人の健康相談にのってきた、元戦略コンサルタントの医師がおくる一生健康に働くための「心とカラダの守り方」!老後の年金制度への信頼が落ちている現在、「生涯働く」ことが注目されています。働き続けることで、収入を得て、人とコミュニケーションする機会も得られます。そのため、年齢を重ねても働くことができれば、充実した人生を送ることができると考えられています。もちろんその通りです。しかし、働き続けるために最も大事な「健康」については、誰しもが漠然とした不安を持っているのではないでしょうか。あなたの周囲にも、身体や心の病気で思うように働けていない人がいるはずです。それでは、どうすれば大きく体調を崩さずに働くことができるのでしょうか。あなたは、自信を持って答えられますか? この本では、「避けられるはずの身体の病気」「対応できたはずの心の病気」について、医学的根拠、エピソードも交えて紹介し、それぞれの解決策をお伝えします。