老後の年金制度への信頼が落ちている現在、「生涯働く」ことが注目されています。しかし、働き続けるために最も大事な「健康」については、誰しもが漠然とした不安を持っているのではないでしょうか?
「避けられるはずの身体の病気」「対応できたはずの心の病気」について、医学的根拠、エピソードも交えて紹介し、それぞれの解決策を解説する『一生健康に働くための心とカラダの守り方』(吉田英司/かんき出版)。この記事では本書から一部を抜粋して紹介します。今回のテーマは「もし週末に仕事をするのであれば土曜日ではなく日曜日がお勧め」。
もし週末に仕事をするのであれば土曜日ではなく日曜日がお勧め
産業医として面談をしていると、残業時間が長い人の中には「週末にも仕事をしている」という人がいます。
週末のほうがまとまった時間が取れる、金曜日に指示を受けて月曜日に提出しないといけない、などの事情があるのでしょう(※休日に仕事をする時は、残業代申請など法律に則った働き方をしましょう)。
そういう人にはある特徴があります。
それは、「土曜日(のできれば15時くらいまで)に仕事を終わらせて、日曜日はゆっくりしよう、と考えたものの、結局土曜日に仕事はあまり進まず、日曜日もずっと仕事をしてしまう」ことです。
そして、「なんとか仕事は終わったものの、週末に何もできなかった……」と、せっかくの週末の過ごし方に後悔を感じてしまいます。
人間は、「締切」という意識を完全に意識から外すことはできません。
週末に仕事をする場合は、締切は日曜日の夜です。
深層心理ではそこにターゲットがあるので、例えば週末に資料を作成しようと考えていた場合、以下のような流れが生じます。
家族と一緒に住んでいるのか、一人暮らしなのかによって時間の使い方は異なりますが、おおむね次のような形でしよう。
土曜日は朝早く起きなければ……と思いつつ、平日の疲れが溜まっていると感じているので、起きるのが9~10時くらいになる。
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軽く朝ご飯を食べて、テレビやスマホを見て、そろそろ仕事を始めようと思うが、なんとなくスマホを見てしまい、気づいたら11時くらいになっている。少し焦ってパソコンを開き、参考資料を眺めてどのような資料を作るか考えるが、具体的には決まらない。
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13時に近くなってきたので、とりあえず昼食をとることにする。
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参考資料と以前プレゼンに使用した資料を交互に眺めながら、やはリ時々パソコンではネットニュースを見たリ、友人からの連絡に返信したりする。気づくと16時くらいで、「これはさすがにまずい」と思い、ある程度の資料の方向性を決める。必要な項目が大まかにわかってくるが細部は決まっていない。簡単に入手できる情報を手に入れ、資料に組み込む。しかし、まだまだ実作業時間は短いので進捗は20~30%程度。
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18時を過ぎたので「土曜日にこれ以上仕事をすると休んだ感じがしない」と思い、夕食の準備をする。「今日1日何をやっていたんだ」と落ち込みの気分が出る。土曜日に仕事を終わらせることは諦めて、せめて今日の夜はゆっくリ過ごそうと決める。
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日曜日は8~9時に起きる。
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午前中に仕事を終わらせて、日曜日の午後は週末らしい過ごし方をするためだ。 昨日よりは明らかに集中力は高い、締切は今日の夜なのだから当然だ。 細部以外の大まかな資料の流れは8~9割は決定し、作成作業に入る。しかし細部はまだ検討するところがあリ、資料の完成度としては70%程度。
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12時になリ昼食をとる。心の中では、午後に趣味のフットサルに行くことは難しそうだと感じている。
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外出は諦めたため、時間の余裕ができたように感じるのと、午前に集中して仕事をしたので、すぐには集中力が上がらない。14時に仕事を再開し、16時にはおおむね完成の目処がつく。あとは細かいところを修正し数字を入れる程度になる。日曜日の午後くらいはゆっくリする時間を作ろうと、いったんここで作業を中断し、買い物に行く。
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夕食後から寝るまでの間に、30分から1時間かけて資料の最終確認。「結局週末はほとんど家で仕事していたんじゃないか」と後悔を感じながらお風呂に入り寝る。
いかがでしょうか。
あなたも思い当たるところはないでしょうか。
これは、「人間は締切の時間を意識してそこから逆算する」という心理から逃れられないことを表したストーリーで、私にも経験があります。
「土曜日に仕事を終わらせるぞ」と思っていても、深層心理では「まだ日曜日の時間がある」と感じているために、こういったことが起こります。
この事象を避けるためには2つの対策があります。
一つ目の対策は、土曜日に思いっきり遊んで、仕事をする日は日曜日、とあらかじめ決めることです。
おおむねどんな仕事でも、本気でやればどれくらい時間がかかって、完成度はこれくらいでいい、というのは直感ではわかっています。
本当に2日間が必要な仕事であれば、土曜日から本気で仕事をせざるを得ないですので頑張るはずです。
そうでない場合は、土曜日から仕事を始めてもダラダラ過ごすだけですので、土曜日は思いっきり遊んで、締切のある日曜日に集中して仕事をすることがお勧めです。
2つ目の対策も一つ目と似ていますが、日曜日に絶対に外せない、そして最中には仕事ができない用事を入れることです。
例えば友人と約束をして朝から登山に行き、帰宅するのは夜遅くなることが確実な予定などです。
これであれば実質的に土曜日の夜が締切になりますが、どうしても外せない用事はなかなか見つかりません。
日曜日の用事をキャンセルできる、早めに切り上げてタ方から仕事ができる、と思ってしまうと土曜日の仕事の集中力が落ちてしまいます。
ですので、できれば一つ目の対策で、土曜日はリフレッシュの時間に充てることを強くお勧めします。
『一生健康に働くための心とカラダの守り方』(吉田英司/かんき出版)
15年で、ビジネスパーソン1万人の健康相談にのってきた、元戦略コンサルタントの医師がおくる一生健康に働くための「心とカラダの守り方」!老後の年金制度への信頼が落ちている現在、「生涯働く」ことが注目されています。働き続けることで、収入を得て、人とコミュニケーションする機会も得られます。そのため、年齢を重ねても働くことができれば、充実した人生を送ることができると考えられています。もちろんその通りです。しかし、働き続けるために最も大事な「健康」については、誰しもが漠然とした不安を持っているのではないでしょうか。あなたの周囲にも、身体や心の病気で思うように働けていない人がいるはずです。それでは、どうすれば大きく体調を崩さずに働くことができるのでしょうか。あなたは、自信を持って答えられますか? この本では、「避けられるはずの身体の病気」「対応できたはずの心の病気」について、医学的根拠、エピソードも交えて紹介し、それぞれの解決策をお伝えします。