ダイハツ工業の2025年3月期決算は40億円の最終赤字と判明しました。2023年12月に発覚した認証不正問題の爪痕が残る決算となっています。その中で同社は、認証不正問題後初となる新型車「ムーヴ」を2025年6月に発表しました。滑り出しの受注は好調な主力車「ムーヴ」が、ダイハツ復活の起爆剤となるかが注目されます。
ダイハツの2025年3月期決算を読む
2023年12月に認証試験の不正問題が発覚したダイハツ。同社はトヨタ自動車の100%子会社であり、決算短信などの開示は行われていませんが、官報に決算公告が掲載されています。以下は2025年3月期(2024年度)の業績を示した決算公告の数字です。これまでの決算との比較のため、2023年3月期から3期分の決算状況も合わせて見てみましょう。
2023年3月期:売上高1兆4,930億円、営業利益380億円、経常利益700億円、税引前当期純利益890億円、当期純利益770億円
2024年3月期:売上高1兆1,815億円、営業利益▲54億円、経常利益580億円、税引前当期純利益▲120億円、当期純利益157億円
2025年3月期:売上高1兆2,720億円、営業利益250億円、経常利益640億円、税引前当期純利益▲300億円、当期純利益▲40億円
ダイハツは認証不正問題の発覚後、一時は国内全工場の生産と出荷を停止しました。その結果、2024年3月期は営業利益が赤字に転落。法人税等の戻しがあり、最終利益(当期純利益)は黒字を維持したものの、税引前当期利益は▲120億円の赤字となりました。
2025年3月期は、認証不正問題発覚から1年経過後の決算となります。国内工場の生産と出荷は再開されましたが、売上高は1.2兆円台に留まり、認証不正発覚前の約1.5兆円には及びません。
また、営業利益は250億円に回復したものの、1,110億円の特別損失を計上した結果、税前利益(▲300億円)および当期純利益(▲40億円)ともに赤字です。
2024年3月期の最終利益は黒字でしたが、2025年3月期は最終利益も赤字です。ダイハツにとって認証不正問題は、2025年3月期も売上高の減少と最終利益の赤字として爪痕を残しています。
ライバルのスズキは増収増益の堅調な決算に
国内軽自動車でダイハツのライバルとなるスズキの2025年3月期決算も見てみましょう。
- 2025年3月期:売上収益5兆8,251億円(前期比8.7%増)、営業利益6,428億円(同30.2%増)、税引前利益7,302億円(同23.4%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益4,160億円(同31.2%増)
スズキは国際会計基準(IFRS)ベースの決算であり、国内基準のダイハツと直接の比較は難しいですが、前期比で増収増益の決算であり、業績は堅調に推移しています。またスズキは、国内よりインドなど海外での売上が中心であり(海外の売上比率約70%)、国内では軽自動車のイメージがあるものの、一般的なイメージとはすでに異なる事業構造となっています。
国内ではライバルと言われるダイハツとスズキの2025年3月期決算を比較すると、ダイハツが認証不正問題の影響に苦しむ一方で、スズキは堅調な業績を維持しています。
新型ムーヴがダイハツの救世主に?
認証不正問題から脱していない2025年3月期のダイハツの決算ですが、同社は2023年12月の認証不正発覚後、つい最近まで新車を発売していませんでした。減収は新車の発売がなされていないことも大きな原因です。
その中で同社は、6月5日に認証不正発覚後としては初となる新型車「ムーヴ」を発売しました。同社の主力車種のひとつであるムーヴの売れ行きは、同社の業績に大きく影響します。フルモデルチェンジとなったムーヴは先行予約で目標の2倍以上の受注を集めたとされており、同社の復活に向けて出だしは好調です。
ダイハツは新型ムーヴの月間販売目標台数を6,000台としています。滑り出し好調の主力車種ムーヴがダイハツ復活を牽引するのか、「ムーヴ」の販売動向そして2026年3月期のダイハツの業績が注目されます。