老後の年金制度への信頼が落ちている現在、「生涯働く」ことが注目されています。しかし、働き続けるために最も大事な「健康」については、誰しもが漠然とした不安を持っているのではないでしょうか?
「避けられるはずの身体の病気」「対応できたはずの心の病気」について、医学的根拠、エピソードも交えて紹介し、それぞれの解決策を解説する『一生健康に働くための心とカラダの守り方』(吉田英司/かんき出版)。この記事では本書から一部を抜粋して紹介します。今回のテーマは「キャリアの中で体調不良が起きやすい4つの転機」
キャリアの中で体調不良が起きやすい4つの転機
働いていると、体調を崩しやすい時期がいくつかあります。
これらは誰にでも訪れる可能性がある「転機」であり、事前に理解して備えておくことで、深刻な不調を防ぐことができます。
以下の4つが、特に注意すべきタイミングです。
(1)働き始めて3~4年目まで
社会人になって間もない頃は、仕事そのものにまだ慣れておらず、自分の予想や処理能力を超える状況が続きます。その結果、プレッシャーやストレスを強く感じやすくなります。
また、次のような心理から、周囲へ相談するタイミングを逃してしまいます。
「どのような仕事の状況や体調になれば相談すればいいかわからない」 「思い描いていた『仕事のできる自分』とかけ離れているのを認めたくないし、他人にも知られたくない」
さらに、リモートワークの影響で、上司や先輩の働き方を間近で学ぶ機会が少なくなっており、仕事に対する現実的なイメージを持てずに悩む人が増えています。
その結果、「職場が自分に合わせてくれるはず」と受け身になってしまったり、全く反対に「どこまで頑張ればいいかわからない」と無理をしすぎてしまう、といった極端な対応になりやすく、体調を崩すリスクが高まります。
(2)働き盛りの時期(社会人10~20年目)
仕事に慣れ、経験も豊富になってくると、より難しい仕事や多くの業務を任されるようになります。この時期は職場での期待も大きく、責任の重さも増していきます。さらに、家庭では育児や家事などの負担が重なり、自分のための時間やリフレッシュの機会がほとんどなくなることも珍しくありません。
キャパシティオーバーになり体調を崩しても、「休んだらチームに迷惑がかかる」「住宅ローンや子どもの教育費がある」というプレッシャーから、無理を続けてしまいがちです。その結果、症状が深刻化してしまうケースもあります。
(3)管理職になる時期
管理職になると、自分の業務だけではなく、部下の仕事まで面倒を見なければいけません。「人付き合いが苦手」「他人に主張できない」人が体調不良になりがちです。
自分が部下だった頃は処理能力が高く評価も高かったですが、上司になるとチームの管理ができません。部下に指示もできず、なまじ処理能力が高いために自分が引き取ってしまいますが、いつかキャパシティオーバーになります。
(4)無理が効かなくなった時期
長年仕事を続けてきた人にも、「今までのようには頑張れない」と感じる時期が訪れます。
この時期には、「役職定年や現場からの退任などで、これまでの役割から外れる」「それによる喪失感や無力感が強くなる」といった変化があります。新しいポジションもそれなりに業務量があり、モチベーションが低いのに頑張らなければいけない、という二律背反な状態に陥ります。
ものすごく体調が悪くなるわけではありませんが、すっきりとした時間が過ごせず、慢性的にだるく頭が働かない状態が続きます。
この年代では介護の問題が同時に発生する人も多く、親の弱った姿を見たり、介護の負担が増えたりしてさらに元気をなくす人もいます。
これら4つの時期は、誰にでも訪れうる「体調不良の転機」です。どの時期にどんな変化が起こるのかを知っておくことで、心と身体の状態に早く気づき、極端な体調不良を回避できます。
『一生健康に働くための心とカラダの守り方』(吉田英司/かんき出版)
15年で、ビジネスパーソン1万人の健康相談にのってきた、元戦略コンサルタントの医師がおくる一生健康に働くための「心とカラダの守り方」! 老後の年金制度への信頼が落ちている現在、「生涯働く」ことが注目されています。働き続けることで、収入を得て、人とコミュニケーションする機会も得られます。そのため、年齢を重ねても働くことができれば、充実した人生を送ることができると考えられています。もちろんその通りです。しかし、働き続けるために最も大事な「健康」については、誰しもが漠然とした不安を持っているのではないでしょうか。あなたの周囲にも、身体や心の病気で思うように働けていない人がいるはずです。それでは、どうすれば大きく体調を崩さずに働くことができるのでしょうか。あなたは、自信を持って答えられますか? この本では、「避けられるはずの身体の病気」「対応できたはずの心の病気」について、医学的根拠、エピソードも交えて紹介し、それぞれの解決策をお伝えします。