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相続手続きの負担を軽減、近年市役所に増える「おくやみ窓口」とは?

Updated JUN. 30, 2025 14:39
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こんにちは。行政書士の木村早苗です。5月に家族が亡くなり、私も相続手続をしなければならない時がきてしまいました。

「お葬式が終わってもいろいろ手続きが大変」とはよく聞く言葉ですが、本当なのですね。私のような一般的な家庭でもそうですから、お店や会社の経営をされている方のご家庭だとさらに大変ではないでしょうか。でも、家族がどんな状況であっても、死後の手続はしに行かなくてはなりません。

死後手続の一歩目で出会った便利すぎるサービス

そんな時に出会ったのが、市役所の「おくやみ窓口」(自治体で名前は異なるようです)でした。その便利さに感動したので、今回はこのサービスについて紹介したいと思います。

「おくやみ窓口」とは? どうやって利用する?

この存在を知ったのは、病院から自宅への搬送を依頼した葬祭業者から死亡診断書が戻ってきた時です。

「おくやみ窓口のご案内」というチラシと「おくやみハンドブック」というパンフレットが封筒に入っていました。この窓口を利用すれば、亡くなった人と家族に必要な手続が短時間でできるとのこと。

お葬式の翌日、さっそく市役所のホームページから予約を入れました。1日2枠のためか意外に埋まっていたため、予定より早い日を選択。ハンドブックを手に家族(後期高齢者)に関わる項目を選びました。ネット予約の場合、基本的な項目以外は関係する項目を自分で選ぶ仕様が一般的のようです。

筆者は特に困りませんでしたが、亡くなった方に必要な手続がわからない方は電話で相談しながら予約する方が安心かもしれません。

その場ですべてサーブされる「おくやみ窓口」、コース料理のごとし

予約当日は母と私で向かいました。総合受付で予約の旨を伝えると、市民課の職員さんが来て個室に案内してくれました。

挨拶と簡単な説明を受け、さっそく手続きへ。各課の職員さんがリレー方式でどんどん来てくれるので、持参した書類を提出したり、書類に記入したりするだけです。説明もわかりやすく簡潔でしたので、安心してお任せすることができました。あまりにスムーズなためか、中盤頃に何課で何の手続きをしているかわからなくなりそうに……。メモしていたのでよかったですが、この時に利用するべきチェックリストを終わった後で「ハンドブック」に見つける残念さ。

筆者の家族は手続の中でも比較的シンプルな方だったと思いますが、終わると2時間以上が経っていました。窓口を使わなかったとしたら、何課でどんな手続が必要か確認し、書類をまとめ、場所や内容から効率を考えつつ複数の課を回らなければなりません。順番待ちの時間も含めると、半日かけても終わっていなかっただろうと思います。

職員さんがテキパキと作業をしながらもおくやみの言葉をかけて下さったり、今まで使ってきた父の証明書や写真(の返却しなくてよい部分)を「お持ち帰りになられますか」と聞いてくださったりというちょっとした気遣いも、この時にはとてもありがたく感じました。

そんなこんなで手続の第一歩は終了。あまりの便利さに感動し、このサービスを導入しようと提案された職員さんには、ぜひボーナスをたくさんあげてほしいと強く思いました。

「おくやみ窓口」を自治体に広めたデジタルの力

そういえば、説明の時に「令和6年の夏に始まったばかりなので」とアンケートを頼まれました。私の住む市でも導入されたばかりという事実に驚いたので、このサービスがいつ、どこで、何をきっかけに広まりつつあるのかも調べてみました。

令和2年5月15日、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室から発行された「おくやみコーナー設置 ガイドライン 第1版」によると、このサービスは、平成28年度の大分県別府市役所、平成29年の三重県松阪市役所を皮切りに、30年度には6自治体、令和元年度には16自治体へと増加している、との記載があります。

説明からすると「おくやみ窓口」自体の始まりは、高齢化をはじめとする社会問題への対応や死後手続の煩雑さを軽減してほしいという市民の要望などからだったものの、その後で全国の自治体へ導入を促したのは、前述のガイドラインを発行したデジタル庁の前身のようでした。

このガイドラインでは、おくやみ窓口を「市町村が、死亡手続を行うための専用の窓口を設け、亡くなった方や遺族の状況に応じて必要な手続を抽出し、申請書作成の補助、受付、関係する課への案内等を行う、ワンストップサービスを提供する場」と位置づけています。

窓口の予約は3日後からしかできないのですが、この3日間こそが庁内での準備期間になります。職員さんが共有データから予約した家族と亡くなった人の情報を拾い出し、各課で書類を揃えていきます。例えば、市民課は世帯主の変更、保険年金課は年金支払額や差分計算、後期高齢者医療資格の喪失準備と(75歳以下の扶養者がいれば)国民健康保険証の再発行、税務課は納税状況の確認や切り替え書類の準備、障害福祉課では障害者手帳の有無確認、上下水道課では利用者確認と切り替え準備、といった感じでしょうか。

今は職員さんが対応してくださっていますが、いつかは市役所の個室が自宅のモニタ前になり、リアルタイムで説明を受けながら(あるいは受ける必要もないほどに最適化された)フォームに入力するだけで手続が済む時代が来るのかもしれません。行政がデジタルを活用して提供するワンストップサービスの第一歩だと考えると、デジタル化の便利さが一気に身近に感じられてきませんか。ただし、県内でも「おくやみ窓口」があるのは13市のうちまだ7市。みんなで便利さを享受できるのは、もう少し先になりそうです。

せっかくなので、近畿2府4県の状況も調べてみました。令和4年度にデジタル庁が行ったアンケートでは、導入済は111自治体(市のみ)のうち48自治体(約34%)だったのが、令和7年6月現在では59自治体(約44%)に増加。わずか2年で11の自治体に導入されていますし、独自の方式を取っている自治体を含めると数はさらに増えます。一方、導入していない自治体でも市役所のホームページで必要な手続を絞るナビツールや手続き内容と必要書類を記載した「おくやみパンフレット」を提供している所が多く、中でも「おくやみパンフレット」は提供していない方が少ないくらいに定着しているようです。

「おくやみ窓口」は、暮らしのややこしい手続がデジタルによって簡単になる、と初めて納得させてもらえたサービスでした。家族が亡くなる機会はあまりありません(ないほうがいい)ので、ご存じない方もまだ多いでしょう。普及率としてはまだまだですが、導入されているのであれば使わない手はありません。ぜひお住まいの自治体でも確認してみてください。窓口がなくても「おくやみパンフレット」は作成されている場合が多いです。手続の効率がかなり変わるので、必要な方は自治体のホームページからダウンロードすることをオススメします。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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