マンションリサーチは6月6日、「日経平均の乱高下がマンション市場に与える影響」について発表した。同社のデータ事業開発室 不動産データ分析責任者の福嶋真司氏が分析・解説している。
同社によると、近年、東京都23区内の中古マンション市場は、継続的な価格上昇傾向を示しているという。特に、千代田区・中央区・港区のいわゆる「都心3区」においては、その伸びが一段と顕著になっている。
都心3区とそれ以外の区部の成約坪単価推移を見ると、都心3区を除いたその他の区部では、おおむね堅調な上昇を続けているのに対し、都心3区においては価格が加速度的に増えている。2025年5月末の時点では過去最高水準に達した。
この価格上昇の背景には、さまざまな要因が複合的に作用していると考えられるという。たとえば、都心部への人口集中の継続や、海外投資家からの需要の高まりなどが挙げられる。
2億円以上のマンション成約数を見ると、都心3区・それ以外の区部においても、近年2億円を超えるような高価格帯マンションの成約件数が大きく増加している。この事は資本力を持つ国内外の富裕層を中心とした需要が強くなっていることを示している。不動産市場における「富の集中」が進んでいる状況とも言えるという。
上昇しているマンション価格だが、一時的な停滞の兆しが見られた時期がある。2025年4月では、2億円以上の高価格帯マンションの成約件数が急減した様子が観測できた。その背景には金融市場の動向が密接に関わっている可能性があるとのこと。
2025年3月下旬から5月にかけての日経平均株価は、激しい乱高下を伴いながら推移しており、投資家心理に不安を与える局面が続いていた。この不安定な状況が一段落し、株価が通常水準に戻る時期と、2億円超の成約件数が復調する時期が重なっている。2024年8月の日経平均株価急落時にも同様の現象が起きている。
こうした経緯を見ると、超高価格帯の不動産を購入する層、すなわち資産運用や投資活動に敏感な富裕層が、市場の一時的な不透明さを警戒し、購入を見送った、あるいは様子見に転じた可能性が高いと考えられる。一時的な成約件数の減少はあったが、東京都23区における中古マンションの価格は、依然として上昇トレンドの中にあり、大きく崩れる兆しは見受けられないという。
2億円以上の物件の動向は、不動産市場全体の「先行指標」としての役割を果たしているともいい、高価格帯の物件は、一般の市場参加者よりも先に市場の空気やマクロ経済の動きを察知し、動く傾向があるとのこと。これらの動向を注視することで、今後の市場全体の方向性をある程度予測することも可能になる。
東京都23区、特に都心3区における中古マンション市場は、引き続き高水準の価格帯で推移しており、高価格帯の成約動向にも一定の堅調さが見られる。同社では、金融市場の動向によって一時的な変動があるとしても、中長期的には都市の魅力や資産としての不動産価値に支えられた強い需要が存在していると考えているという。