財務省は5月に、新たな「変動利付国債」を発行すると発表しました。発行時期は2027年1月以降を予定しています。変動利付国債とはどのような商品で、メリット・デメリットは何があるのでしょうか? 今回は変動利付国債で利益を得る仕組みや注意点、利用に向いている人を解説します。
変動利付国債で利益を得る仕組み
変動利付国債とは、国債の種類の1つです。
国にお金を貸して利息を得る
国債とは、国が資金調達のために発行する債券です。機関投資家や個人は国債を購入することで国にお金を貸すことになり、定期的に利息収入を得られます。
世界のさまざまな国が国債を発行していますが、日本が発行する国債は比較的安全性が高く、安定性を重視する投資家に好まれています。
国債のうち、変動金利が付くものが変動利付国債です。変動金利は定期的に利率が見直され、利率が上がることもあれば下がることもあります。
国債は個人向けと機関投資家向けがある
国債は個人投資家が購入できるものと、機関投資家が購入できるものに分かれています。機関投資家向けの国債は、主に銀行や生命保険会社など、法人が購入するものです。
財務省が今回新たに発行すると発表したのは、現時点では機関投資家向けとなる予定です。償還時期は2年または5年のタイプで、どちらになるのか、それとも別の期間になるのかは今後決定されます。
個人向け国債の種類
個人向け国債は現在、以下の3種類があります。
- 変動10年
- 固定5年
- 固定3年
変動タイプは半年ごとに適用利率が変動するもので、上がることもあれば下がることもあります。ただし、最低金利保証の0.05%があるため、これより下がることはありません。直近の5月の募集における適用利率は0.84%(税引前)でした。
固定タイプは期間中の利率が固定される仕組みです。直近の5月の募集における適用利率(税引前)は、5年タイプが0.83%、3年タイプは0.66%でした。
変動利付国債のメリット・デメリット
変動利付国債のメリット・デメリットをまとめます。
メリット
- 市場金利が上がると変動利付国債の金利も上がる
- 定期預金より高い利息を受け取れる
- インフレによる資産価値の下落をある程度食い止められる
- 手数料がかからない
金利が上昇すると得られる利益が大きくなるのがメリットです。日本でもインフレが進んでいますが、資産価値の下落を一定程度抑える効果も期待できます。
個人向け国債の金利は定期預金より高いため、多くの利息を得たい方にもおすすめです。株式や投資信託などリスクがやや大きい金融商品に抵抗がある方にも向いています。
また、個人向け国債は購入時の手数料が発生しないのもメリット。支払い時の手数料を取られることもありません。
デメリット
- 市場金利が下がると変更利付国債の金利も下がる
- 中途換金をすると元本割れを起こす可能性がある
- NISAやiDeCoでは利用できない
- 自動的な購入はできない
金利が下落すると、変動タイプの国債の金利も下がるため、場合によっては収益が減少します。また、中途換金をすると「中途換金調整額」が差し引かれるため、元本割れを起こす可能性がある点にも注意が必要です。
非課税金融制度のNISAやiDeCoが人気を集めていますが、個人向け国債は対象外です。このため、得られた利息にはすべて課税されます。
また、個人向け国債は毎月の募集で応募をして購入することになるため、自動的に毎月購入することが不可能です。よって、積立投資のように毎月少額ずつ投資をしたい場合、毎回応募しなくてはならないため手間がかかります。
変動利付国債の利用が向いているのはこんな人!
- 預金より高い利息を求める人
- 金利上昇を期待する人
- リスク分散をしたい人
- 多くの資金で一括投資ができる人
国債は変動でも固定でも、現在は預金より高い利回りを得られます。変動タイプを選ぶとよいのは、今後も金利が上昇すると考える人です。
変動利付国債は株式や投資信託とは仕組みが異なり、リスクも比較的低いため、リスク分散のために利用するのも1つの手です。投資資金の一定の割合を変動利付国債に振り分けることで、株式などの価格が下がってもダメージを軽くできます。
個人向け国債は毎月自動的に購入できない一方、購入上限がないのも特徴です。多くの資金で一括投資をしたい方が利用するのもよいでしょう。