鎌倉新書が運営する相続情報サイト「いい相続」は、「第3回 相続手続きに関する実態調査(2025年)」の調査結果を6月5日に発表した。調査は2025年3月27日〜4月22日の期間、「いい相続」経由で専門家(行政書士または税理士)との無料面談を行った、または「相続費用見積ガイド」経由で専門家に相続手続きを依頼した281名を対象に行われた。
はじめに、相続財産の総額に関する質問では、「1,000万円未満」が最多で44.8%を占めた。次いで「1,000万円以上〜2,000万円未満」が13.5%、「5,000万円〜1億円未満」が12.8%、「2,000万円以上〜3,000万円未満」が10.7%と続いた。
前回調査で5位だった「5,000万円〜1億円未満」は、今回は3位へと順位を上げており、高額な財産の相続件数がやや増加傾向にあることがうかがえる。また、相続人の居住地が一都三県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の場合も、「1,000万円未満」が32.1%で最多だったが、2位には「5,000万円〜1億円未満」が18.9%でランクイン。以下、「1,000万円以上〜2,000万円未満」が15.1%、「3,000万円以上〜4,000万円未満」が12.3%と続いた。
一都三県においても、前回4位だった「5,000万円〜1億円未満」が今回2位に浮上しており、全国と比較しても相対的に高額な相続財産の割合が多い傾向が見て取れる。
相続財産の種類に関する質問では、「土地・建物」が最多で89.0%、次いで「現金・預貯金」が65.8%、「生命保険」が23.8%と、いずれも一定の割合を占めた。これらは昨年と同じ順位・同程度の割合であり、代表的な相続財産といえる。
また、一都三県と全国の相続財産の内容を比較すると、全体的な順位に変化はないものの、「有価証券」および「生命保険」については、両者の間に顕著な割合の差が見られた。この結果から、一都三県では資産管理に対する意識が、全国と比べて相対的に高い傾向がうかがえる。
相続人の続柄についての質問では、「子」が最も多く82.6%、次いで「配偶者」34.9%、「兄弟・姉妹」9.6%、「姪・甥」と「父・母」がいずれも5.3%だった。
また、相続人が「姪・甥」「兄弟・姉妹」と回答した人に対し、「被相続人は配偶者・子どもがいない“おひとり様”だったか」を尋ねたところ、「はい」と回答した人は66.7%だった。
この結果から、兄弟姉妹やおじ・おばからの相続においては、被相続人が生涯未婚、子どもがいない、または配偶者に先立たれたなど、単身世帯であったケースが多いことが推察される。
2024年4月1日に施行された「相続登記の義務化」に関する認知と行動についての調査では、「義務化を知ったから登記を行った(または現在手続き中)」と回答した人が46.6%だった。これは、制度の施行が登記手続きを後押ししたとみられる層と考えられる。
一方で、「義務化は知っていたが、特に意識せず必要だから登記を行った」と回答した人は23.1%、「聞いたことがある程度だったが登記を行った」が8.2%と、制度を認知していても、それが登記の主な動機にはなっていないケースも見受けられた。さらに、「まったく知らずに登記を行った」人も7.5%存在しており、制度の認知とは関係なく登記を行ったケースも一定数見られた。
また、登記の有無を問わず、「義務化をまったく知らなかった」とする回答は13.5%にのぼり、制度そのものの認知が十分に浸透していない実態も明らかに。
相続手続きを専門家に依頼した際の費用は、平均で約41.7万円という結果だった。費用帯別に見ると、「20万円~30万円未満」が最も多く27.6%、次いで「10万円~20万円未満」が25.2%だった。30万円未満で手続きが済んだ人は全体の58.9%にのぼり、過半数が比較的低額で依頼していることがわかった。
一方、「100万円以上かかった」と回答した人も6.5%存在しており、少数ながら高額なケースが平均費用を引き上げていると考えられる。実際、「100万円以上かかった」と回答した人のうち、約4割が「1億円以上の相続財産を引き継いだ」としており、財産規模が費用に影響を及ぼしていることが読み取れる。
その他、「相続手続きで大変だったことは何か」という質問に対して、最も多かった回答は「何をどう進めるべきかを理解するための情報収集」で56.6%を占めた。次いで、「必要な書類が多かったこと」が54.1%、「手続きのために時間が取られたこと」が34.5%となっている。
昨年の調査と比較しても、大変だと感じたことの上位項目や順位に大きな変化は見られず、多くの方が情報の不足や手続きの煩雑さに課題を感じている状況は変わっていないことがわかる。
また、「自身の体験を踏まえて、今後相続手続きを行う方に向けたアドバイスをお願いします」という設問に対しては、「専門家への相談・依頼のすすめ」(41.7%)が最多に。次いで、「家族・親族との話し合い」(14.4%)、「生前準備・終活が重要」(13.9%)が続いた。