トヨタ自動車は先日発表した新型「RAV4」で「ソフトウェアづくりプラットフォーム」の「アリーン」(Arene)を初採用した。クルマにプラットフォームは付き物だが、ソフトウェアづくりの、ということになるとあまり聞きなじみがない。アリーンとはいったい何なのか。
そもそもアリーンとは?
そもそも「アリーン」という言葉はどんな意味を持つのか。開発者の名前? はたまた機能の頭文字? 流行りのAIに聞いてみると、「Areneはベンゼン環のこと」であるとの回答だ。炭素6個が正六角形の環状に結ばれ、各炭素には水素原子が結合している、という説明だったのだが、謎は深まるばかりである。
そこで、新型RAV4発表会の会場にて、開発を担当したトヨタグループ内の開発子会社「ウーブン・バイ・トヨタ」の担当者さんに確認してみると、「名前にはそれほど意味はなく、なんとなく語呂の良さから、社内でアンケートを取って決めました」とのことだった。
アリーンを使うとどうなる?
新型RAV4の発表会に登壇したトヨタ取締役・執行役員のサイモン・ハンフリーズ氏によると、自動車業界では現在、「SDV」(Software-Defind Vehicle)の開発競争が激しさを増しているらしい。「自動車業界の次のパラダイムシフトはデジタルで起こっています。その目的は何かという問いに対してアキオさん(豊田章男会長)は、明確に『悲しい交通事故をゼロにすることだ』と答えたのです」とハンフリーズ氏は話す。
ウーブン・バイ・トヨタのミッションは「モビリティのための全く新しいソフトウェアプラットフォームを構築すること」とハンフリーズ氏。その結果として生まれたのがアリーンだ。「新型RAV4はアリーン実現の第一歩であり、クルマがお客様と一緒に成長していく、その道を切り開いていきます」という。
さらに、「次世代のToyota Safty Sense(トヨタセーフティセンス)は、ビッグデータも活用し、より一層安全なドライブをサポートします。そして、安全性が高まるからこそ、エンタメ領域でも新たな体験の可能性が生まれるのです。直感的なAI音声エージェントを備えた新マルチメディアシステムは、これからのデジタルカスタマイズのキャンバスになっていきます。安全とエンタメは両輪の関係なのです」と続けた。
アリーンの主な構成要素は「アリーンSDK」「アリーンTools」「アリーンData」の3つだ。
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「アリーンTools」はソフトウェアを検証するツール。実車による検証を減らし、ソフトウェアの開発プロセスを見える化し、検証・評価・管理を仮想環境で実施することで、従来よりも早い段階での機能の作り込みが可能となり、開発スピードを上げられるという
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「アリーンData」はソフトウェアをカイゼンし続けるためのデータを収集する基盤で、同意を得たユーザーの走行データを安全に収集・分析し、今後の自動運転や先進運転支援システムなどの機能向上や車内アプリケーションのカスタマイズに活用するほか、OTAによる車両のソフトウェアアップデートをサポートするものだ
新型RAV4が搭載する機能は?
アリーンを初採用したRAV4は、最新型のトヨタセーフティセンスと新世代マルチメディアシステムを搭載するという。発表会で展示された新型の車内には、高精細のグラフィックを表示する大型のセンターディプレイが設置されていて、ホーム画面は各ユーザーが好みに合わせてカスタマイズできるようになっていた。音声認識の応答速度、理解精度が向上しており、快適な対話が可能になっているという。
新型「RAV4」の新世代マルチメディアシステムを動画で確認
最新型のトヨタセーフティセンスでは、急病などで運転継続が困難になったドライバーを検知して、自動的に車両を減速・停車させるだけでなく、センサー情報によって路肩に退避スペースが確認できた場合には、減速後に路肩に寄せて停車できるように機能が向上しているという。また、障害物の有無に関わらず、アクセルの踏みすぎ・踏み間違いを検知するとクルマの加速を抑制する「急加速抑制」機能も追加されている。 新型の車両自体は、既存のトヨタ各モデル(プリウスやクラウンなど)の構成要素を散りばめたようなオーソドックスなSUVに見えるかもしれないが、中身はトヨタ初のアリーンを搭載する最新の仕上がりとなっているのだ。