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( Watch ) グランドセイコーの魅力

グランドセイコーの哲学と言葉は腕時計作りでどう表現されているか?

Updated JUN. 06, 2025 16:13
Text : 青木淳一
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グランドセイコーが提唱する哲学「THE NATURE OF TIME」――。それは、腕時計作りの核心を形作り、自然の変化や季節感を表現したデザイン、正確な時の刻みを追求する技術に反映されている。例えば、ダイヤルは日本の風景や自然の繊細な美しさを表現し、「時間」という概念を単なる数値としてではなく、より豊かな感覚としてとらえることを目指している。そんな「グランドセイコーのもの作り」について、開発に携わる方々にお話を伺った。

「白樺ダイヤル」誕生のきっかけ

並みいる高級時計ブランドの中でも、個性と存在感が際立つグランドセイコー。多くの製品が魅力を放つ中、日本の自然と時間の調和をダイヤルで表現した「エボリューション9 コレクション」が絶大な人気を集めている。その着想やダイヤルデザインの視点はどこにあったのだろうか。

  • エボリューション9 コレクションにおける代表的なモデルとなった「SLGH005」(127万6,000円)

「自然の美しさをテーマにした時計デザインは以前から考えていて、自然の風景には普段からアンテナを張っていました」と、同シリーズを担当したデザイナー氏は語る。

「ヒントは常日頃から探しています。旅行に行くときはもちろん、映画や本からも知識を深めています。また、グランドセイコーの製造地が長野県塩尻市と岩手県雫石町にあって、その周辺の自然の豊かさに触れる機会も多く、ここで得た知見を落とし込むこともあります。

エボリューション9 コレクションの代表的なモデル『SLGH005』、いわゆる『白樺』がそうでした。発売自体は2021年3月でしたが、前年(2020年)のグランドセイコー60周年に投入された新しいケースとムーブメントを使うことになり、ダイヤルデザインのアイディアを探していたのです」(グランドセイコー担当デザイナー)

  • グランドセイコー60周年をきっかけに登場。新設計のケースを採用

  • ムーブメントも新設計。最大80時間のパワーリザーブを持つ自動巻き「キャリバー9SA5」を搭載する

「以前出張で訪れた岩手県で、白樺が群生する様を目にし、非常に印象に残っていました。工房で型打ちダイヤルの技術試作を見たときに、その白樺林の印象が蘇ってきて、新しいダイヤル開発に結び付きました」(グランドセイコー担当デザイナー)

現在も人気の高い白樺のダイヤルは、こうして生まれた。

実際の白樺を写実的に表現するのではなく、石や木々を山や川に見立てる枯山水のように、白樺や白樺林のイメージを腕時計のダイヤルとして相応しいパターンに落とし込む、いわゆる「見立て」のデザインは、グランドセイコーの哲学とも合致していた。

  • 青空の下の白樺にも、冬景色の白樺林にも見立てることができる。着ける人の自由な発想で楽しめるデザインだ

形としては抽象化した風景のイメージを大切にする一方、色は写実的なニュアンスも大切にしているという。

「グランドセイコー『ヘリテージコレクション』の『SBGH347』、通称『氷瀑』というモデルでは、グランドセイコースタジオ 雫石からのぞむ岩手山の厳冬期に凍る滝を表現しました。試作の調整段階でこの滝の色を実際に確認しに行ったのですが、雪山に加え、これがガイドさんと一緒でなければ登れないような場所で、かなり大変でした。でも、おかげで実際の氷瀑の色が、持って行った色見本にかなり近いことが確認できたので、やはり行った甲斐があったなぁと(笑)」(グランドセイコー担当デザイナー)

  • ヘリテージコレクション「SBGH347」(94万6,000円)

  • 岩手県八幡平市にある落差30メートルの滝「七滝」がモチーフ。厳冬期に凍結した状態を表現している

  • 風景に見立てたダイヤルはほかのモデルでも。例えば、エボリューション9 コレクション TENTAGRAPH「SLGC001」(198万円)は、岩手山の尾根の広がりをデザインした

グランドセイコーが選ぶ「言葉」

「デザイン文法」「真髄」「光と陰が織りなす微妙な移ろい」「狭間に息づく美しさ」「日本の美意識を融合させたデザイン」「時代的な制約からの解放」「傑出」「デザインコードとして抽出」「審美性」――。すべて、グランドセイコーの思想や製品の特長を語るために使用されている表現だ。

辞書を必要とするような難しい言葉は使わず、しかし日常生活ではあまり口にすることがない独特の言い回し。一定の力を持つ言葉を選り抜き、バランスよく組み合わせてグランドセイコーの世界観を支えている。そう、先に触れてきた哲学とデザインに加え、大切に研ぎ澄まされた言葉の数々もまた、グランドセイコーの大きな要素のようだ。

「使用する言葉は、聞いたことがあって意味が分かりやすく(わからなくても連想でき)、印象に残る言葉を意識しています。また、グランドセイコーは1960年に誕生したブランドなので、その歴史の中で先人たちが使ってきた表現をできる限り盛り込むよう心がけています。

例えば『44GS 現代デザイン』では『燦然(さんぜん)と輝く』というフレーズを使っていますが、これはオリジナルの44GSで使われていた表現です。44GSは熟練した職人によって、歪みの少ない鏡面に仕上げられた平面を組み合わせたケースを特徴としています。多方向に光を反射するデザインにより、鋭い光を放ちます。これを『燦然と輝く』と表現しているのですね」(グランドセイコー商品企画担当)

  • 「燦然と輝く腕時計」「44GS現代デザイン」。写真はヘリテージコレクション「SBGW323」(77万円)

確かに「燦然と」は、現代ではあまり使われなくなった言葉かもしれない。が、それゆえ歴史を感じさせたり、単に腕時計が光を反射したりという意味だけに止まらず、その存在自体が輝かしい、グランドセイコーが自信を持って送り出す腕時計であるというニュアンスも同時に感じ取ることができないだろうか。

「言葉の持つ力で、製品のディテールやメッセージの伝わり方は大きく変わってきます。上手く当てはまるような表現を提示できると、お客さまに製品イメージが正しく伝わることが多いのです。それは漢字と仮名を持つ日本語の表現力と、美しく豊かな自然に育まれた日本的な感性と記憶に、グランドセイコーの哲学が寄り添っているからだと思います」(グランドセイコー商品企画担当)


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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