『千と千尋の神隠し』の湯屋『油屋』のモデルといわれている四万温泉の温泉旅館「積善館」。実は宿泊予約サイト「Relux」にて「2024年上半期 夕食が美味しい旅館ランキング」にランクインするなど、料理もかなりクオリティが高いことをご存じだろうか。
この旅館にプライベートで何度も宿泊している筆者が、旅ライターと一宿泊者としての目線から、その魅力について語ってみたい。
創業300年以上、『千と千尋の神隠し』のモデルといわれている四万温泉「積善館」
「四万の病に効く」と言われたことからその名がつけられた、群馬県の四万温泉。この地で300年以上前から湯治宿として人々に愛されきたのが、『千と千尋の神隠し』の湯屋「油屋」のモデルといわれている「積善館」だ。
朱色の橋の向こうに堂々たる風格で構える湯屋が印象的で、夏は山の緑に囲まれ、冬は舞い散る雪と湯けむりに包まれ、幻想的な風景が広がる。
「積善館」は3つの建物から構成されている。現存する日本最古の木造湯宿建築・重要文化財に指定されている湯治棟の「本館」、旅館棟で国の登録文化財などに指定されている「山荘」、露天風呂付きの客室も擁する「佳松亭」だ。
館内には国の重要文化財にも指定された昭和5年建立の「元禄の湯」をはじめ、自然林に囲まれた「杜の湯(内風呂・露天風呂)」、無料と有料の貸切風呂が点在。
特に「元禄の湯」は、独特のタイル張りの床に石造りの浴槽が5つ配置され、壁際にアーチ型の小さな蒸し湯の小部屋が並ぶ構造が唯一無二だ。四万温泉は「飲めば胃腸によく、入浴すれば肌によい」とも言われており、浸かるだけでなく飲泉所で飲むこともできる
2021年末にオープンした佳松亭・山荘宿泊者が利用できる「山荘ラウンジ 井筒」もいい。薬膳茶や紅茶、コーヒー、ジュース、アイスなどがあり、湯上がりに心ほぐれる時間を提供してくれる。
また、増改築が繰り返された「積善館」は迷路のような構造で、本館と山荘をつなぐ「浪漫のトンネル」など、江戸時代や明治、大正、昭和と各時代の建築美を楽しめるのも魅力の一つ。館内にはこのほか足湯や湯車、マッサージルームやお土産処、昼食処「積善や」や歴史資料館などがあり見どころ満載だ。
上州牛など旬の地産食材を使った会席料理に、温泉水を使ったお粥が美味しい朝食
温泉に注目されがちな四万温泉の「積善館」だが、料理のクオリティもかなり高いと思っている。個人的には、「ラウンジ 猩々(しょうじょう)」で季節の会席料理がいただける、佳松亭・山荘の宿泊を推奨したい。
夕食コースでは、鮮魚や上州牛など旬の地産食材を使用。素材の味わいを引き立たせる丁寧で繊細な料理は、少量多種で食べ疲れしない美味しさが嬉しい。
朝食も野菜たっぷりで、体に染み渡る優しい和食膳。特に温泉水を使ったお粥が滋味あふれる味わいで素晴らしい。体の外と中から温泉でデトックスされる、そんなステイがここでなら叶う。
四万温泉は、東京駅から直通バスで片道約4時間。ほかの首都圏近郊の温泉地に比べるとアクセスしやすいとは言えないかもしれないが、その分人里離れ、静謐で神秘的な雰囲気に満ちている。歴史と文化が香る「積善館」で、心身を癒やしてみてほしい。









