東日本不動産流通機構によると、2025年1月の首都圏(一都三県)中古マンション平均成約坪単価がバブルピーク時の1990年11月の水準を上回ったとの事で、急激な高騰が見られました。今回は、より細分化して調査しその実態を明らかにしました。
右肩上がりで推移しているのは"東京"のみ
『首都圏の平均成約坪単価』というマクロな視点で見ると、いずれのエリアも均等に価格が高騰しているように見えますが、明らかに右肩上がりで推移しているのは、東京都のみ。東京都を除く3県はほぼ横ばいで推移しているのが実際です。
東京都の中でも2024年(対2023年比)で大きく価格の高騰が見られたのが、図1の赤枠で囲まれた、赤系色の強い都心5区(特に都心3区)。マンション取引量も多いこれらのエリアが価格高騰に寄与していることがわかります。
- 都心5区:千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区
- 都心3区:千代田区・中央区・港区
都心・築浅の富裕層向けマンションが価格を押し上げている
そして、都心5区の中でも特に価格高騰に強く寄与しているのが、富裕層向け中古マンション(※ここでは9000万円以上の中古マンションと定義)と言えるでしょう。
このエリアの一般向け中古マンション(※ここでは9000万円未満の中古マンションと定義)と富裕層向け中古マンションの平均成約坪単価の推移を比較してみるとその差は歴然です。
一般向け中古マンションの価格推移が横ばいである一方、富裕層向け中古マンションでの価格推移は右肩上がりで、特に2025年1月においては、非常に大きく高騰しています。9000万円以上の物件を購入できる、いわゆる富裕層は、住宅ローン金利上昇の影響を考えても、まだまだ購入に対する余力があるように思えます。
さらに、富裕層向け中古マンションにおける築年帯別の成約件数の割合は、約70%が2001年以降築、約15%が1983年~2000年築、約15%が1982年以前築となっています。
したがって本エリアでは、富裕層向け中古マンションの中でも比較的築年が浅い中古マンションに取引が集中しているようです。
新築の代替として勢いを増す、築浅・再販中古マンション
この現象の背景には、都心5区の新築マンション分譲棟数の減少があります。都心においては新築マンション需要が非常に高いにもかかわらず、2013年以降、新築分譲棟数は減少傾向にあり、購入の権利を得るための抽選倍率が跳ね上がる事態も頻繁に見受けられます。
新築マンション需要を代替するものとして、比較的築年の浅い富裕層向け中古マンション需要が高まっていると言えるでしょう。
これまで再販マンション市場では、「築古マンション」をリノベーションすることで、販売競争力をつけるというのが一般的でした。
しかし最近では、「築浅マンション」をリノベーションすることで、さらに高い付加価値をつけるというビジネス構造に変化してきています。
築浅の「湾岸エリアのタワーマンション」や「都心のブランドマンション」がリノベーションされ、新築価格よりも高額で取引される、という今まで見られなかった現象も起きているのです。
都心エリアでは、富裕層向け中古マンションが、新築マンションの代替として富裕層マネーの受け口になっているため、中古マンション相場が高騰しやすい構造となっています。