2019年に空前のサウナブームが起こり、2021年には「ととのう」が流行語に。国内のサウナ人口は約1,700万人といわれ、もはやブームを超えて日常化しつつある。
そんな中、日常的にプライベート空間で自分をリセットできる「自宅サウナ」を設置する人も増えているという。自宅サウナに必要なスペースや費用から、後悔しないためのポイントまで、国内外のサウナ約1,000商品を取り扱い、年間100台以上を取引する「サウナの専門商社」を運営する株式会社サイリージャパン 代表取締役 杉山匡志氏に聞いた。
1平方メートルあれば設置できるサウナも
――自宅にサウナを設置する際、最初に考えるべきポイントを教えてください。
一番肝心なのは設置場所です。一般的な住宅は、浴室や洗面所にサウナを設置するようなスペースはありません。自宅の新築時にサウナの設置を検討される方が多いのですが、屋内にサウナを設置する場合、サウナの後すぐ水風呂に入れるよう、浴室または洗面所を広く取ってその中にサウナを設置するケースが多いです。
あるいは、庭やルーフバルコニーに設置する方も少なくありません。屋外設置の場合、サウナのある庭から直接お風呂に行けるような通路を設けたり、庭に水風呂を設置したりすることもあります。外気浴にこだわる方は、屋内と屋外の両方にサウナを設置するケースもありますね。
――サウナを設置するために必要な最低限のスペースはどれくらいですか?
1人用なら、1平方メートルのスペースがあれば設置可能です。ただ、新築時にサウナを設置する場合は、2~3人向けに1.6平方メートル前後のスペースを取るケースが多いですね。もちろん、2平方メートル以上、3平方メートル以上のサウナを設置する方もいらっしゃいます。
――屋内と屋外、それぞれの設置場所のメリット・デメリットを教えてください。
屋外設置は、サウナ後に開放的な屋外で心地よい風を感じたり、景色を見たりできるのがメリットです。「ととのいチェア」も屋外のほうが設置しやすいですね。デメリットは、雨や風の影響を受けるので、サウナ内が汚れやすいことです。
反対に屋内設置は、雨や風がないのでサウナ内が汚れにくいというメリットがあります。浴室内や洗面所内にサウナを設置すれば、サウナ後すぐに水風呂に入れるのもメリットですね。
自宅用箱型サウナの相場は150~300万円
――サウナの設置にかかる費用はどのくらいですか? 初期費用だけでなく、維持費もかかるのでしょうか?
初期費用はピンキリですが、一番安いテント型のエントリーモデルなら30万円程度でしょうか。一般的な箱型なら150~300万円程度が相場ですね。維持費は基本的に電気代のみで、1時間で100円ほどです。
――サウナの種類の選び方は?
基本的にはその方の好み次第ですが、スチームサウナやミストサウナは浴室の中で完結するので、スペースがなくても設置が可能です。ミストサウナは浴室暖房乾燥機の機能として付いているケースもあり、その場合は本体価格約30万円+工事費とかかる費用も手頃です。
ただ、実際には9割の方がいま最も主流のフィンランド式を選ばれます。熱々にすることも、低温でじっくり入ることもでき、ロウリュによって湿度が高められるのが人気の理由です。
スペースと電源があれば1日で設置完了
――自宅にサウナを設置するために必要な設備はありますか?
サウナが置けるスペースと、エアコンなどに使われる200Vの電源があれば設置できます。家庭用サウナの場合、法律上、排水設備はなくても構いません。ただ、床に空間があるサウナの場合、掃除がしやすいように排水設備を設ける方もいらっしゃいますね。
――サウナを設置する際はどのくらいの日数がかかるのでしょうか?
基本的には1日です。事前に工場で組み立ててから設置を行うので、よほど大きなものや凝ったものでない限り、設置作業は当日中に終わります。
――自宅にサウナを設置した場合、日常的なメンテナンスは必要ですか?
定期的に、水で濡らしてきつく絞った雑巾で汗を拭くことをおすすめしています。特に床は汗やほこりが溜まりやすいです。また、サウナストーンは1年に1~2回、洗って天日干しして、ひび割れを起こしたものは交換するようにしていただきたいです。サウナストーンがサウナ内で破裂するとストーブが壊れてしまう可能性があるので、点検の意味合いもあります。
自宅サウナでよくある後悔とは?
――自宅サウナにまつわるトラブルや課題にはどのようなものがありますか?
費用の関係でグレードを落としたものの「もっといい木材にすればよかった」「もう少し広くすればよかった」と後悔される方が少なくありません。また、電力消費が大きいため、サウナを設置したことでブレーカーが落ちやすくなります。賃貸住宅や一般的な戸建て住宅では電力契約の上限が決まっているので「サウナを使うときはエアコンが使えない」といった問題が出てくることがあるのです。事前にわかっていれば電力契約を切り替える、許容アンペア数を上げる、サウナ室を狭くして熱が循環しやすいようにするといった対策が立てられます。
――設置後に後悔しないためのチェックポイントを教えてください。
値段重視で品質を落とすこともあるかもしれませんが、業者選びや商品選びは慎重に行っていただきたいです。メーカーの数が増えた結果、品質もまちまちですし、中には納品されないといった詐欺まがいの業者もあります。
見積もりを取った際に、広告に掲載されていた金額よりも極端に高い業者や、激しい追い込みをかけてくる業者には注意したほうがいいかもしれません。値段だけで選ばないこと、業者とのやり取りの中で少しでも違和感を覚えたら他をあたることが大切です。
まずは選択肢を「知る」ことが大切
――理想の自宅サウナを作るためには、どのようなことを意識すればいいのでしょうか?
「こんなサウナにしたい」というだいたいのイメージはあっても、自分が求めるものを100%把握できている方は多くありません。
テレビの設置や水風呂の冷却など、サウナにはさまざまなプラスアルファの機能が付けられます。ところが、こうした選択肢をご存じない方も少なくありません。そのような選択肢があると知らなければ、自分が本当に求めているものにたどり着けない可能性もあります。そこで大事になってくるのが、色んな人に相談したり、積極的に情報収集をしたりして、自分が求めるものを明確にすることです。
弊社は商社として国内外の100社以上のサウナメーカーの商品を取り扱っているので、情報量も豊富です。ぜひ気軽にご相談いただければと思います。